タイトル通り
8/30 17:32 追記
ご確認ください。
以下、変更前の原稿。
「まずは……ハグからすればいいのか?」
ハグ。愛歌の体を抱きしめる。
考えただけで緊張するが、それを悟られるわけにはいかない。
「そ、そうね」
「じゃあ、やるぞ」
「ま、待って!」
愛歌から待ったが入った。
今更、怖気づいたのか?
残念に思う一方で、俺は少しだけホッとする。
「い、いきなりはおかしいでしょ! まずは手を繋いでから!」
確かにそれもそうだと思い、俺は愛歌に手のひらを向けた。
すると愛歌も白い手を伸ばす。
指先と指先が触れ合う。
互いに向かい合わせて、手と手を握り合う。
久しぶりに握った愛歌の手は記憶よりも柔らかく、温かった。
「……手を握るなんて、久しぶりだな」
「そうね。小学二年生くらいの時だったかしら? ……奏汰君が恥ずかしがったのよね」
「最初に嫌がったのはそっちだろ。……恋人みたいに思われたくないって」
あの時は子供心に傷ついたのを覚えている。
もっとも、「奏汰と愛歌は付き合ってる!」と同級生から囃し立てられるのが恥ずかしいという気持ちは俺も一緒だったし、分からなくもないけど。
「そ、そうだったかしら?」
「そうだよ。……それで次はどうすればいい?」
「少しは自分で考えてよ」
「教えてくれるんじゃなかったのか?」
「うぐっ……」
俺の指摘に愛歌は恥ずかしそうに目を伏せた。
僅かばかり視線を泳がせてから、俺を見上げた。
「肩、抱いて」
「……こうか?」
「んっ……」
俺は愛歌の手のひらから手を離し、彼女の二の腕を触れながら、少しずつ手を上げていく。
そして最後に華奢な彼女の肩に手を置いた。
「ま、まあ……悪くはないわね」
愛歌は身動ぎしながら答えた。
それからモゾモゾと脚を動かし、距離を詰めて来た。
俺も同様に足を動かし、距離を詰める。
「……ジっとして」
「愛歌?」
愛歌は倒れ込むようにして、自分の頭を俺の胸板に当てた。
そして俺の服を両手で掴む。
「頭、撫でて」
「こうか?」
「……うん」
言われるままに俺は愛歌の頭に手を置き、彼女の髪を撫でた。
金色の髪は絹糸のように滑らかで、手で梳くたびにほんのりと甘い香りがした。
いつまでも撫でていたくなるような感触だ。
「ふふっ……」
突然、愛歌が小さく笑った。
視線を下に向けると、愛歌は俺の胸板に耳を当てながらニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「奏汰君、ドキドキしてる」
「……っく」
「あ、またドキっとした。緊張してるんだぁ」
俺は否定の言葉を口にしようとしたが、しかし胸に耳を当てられている以上、嘘であることはすぐに分かってしまう。
悔しく思いながらも、俺は頷いた。
「こういうのは初めてだからな。多少は緊張する」
「ふーん、そう。素直に認めるんだ」
「そういう愛歌だって、緊張してるだろう?」
「別に? 私はしてないけど」
「嘘つくなよ」
「嘘じゃないよ。……確かめてみる?」
愛歌はそう言うと僅かに上体を起こしてから、自分の胸を指さした。
白い下着がチラりと覗いている、柔らかい膨らみ。
俺は咄嗟に目を逸らした。
「確かめなくていいの?」
愛歌はニヤニヤと余裕の笑みを浮かべながらそう言った。
確かめるためには、愛歌の胸を触らなければならない。
そんなこと、できるわけがない。
「……ハグの方が、先だろう」
俺はそう言うと片手を彼女の頭に、もう片方の手を肩に置くと、力を強めた。
愛歌は抵抗せず、自然と引き寄せられていく。
愛歌は顔を上げると、俺の肩に自分の顎を乗せた。
愛歌の柔らかい胸先が、俺の胸板に触れる。
少しだけ躊躇する。
「奏汰君……」
愛歌の囁くような声が俺の耳を擽った。
本能のまま俺は愛歌を力強く抱き寄せた。
「んんっ!」
愛歌が声を上げた。
しかし抵抗する様子は見せない。
俺はそんな彼女を両手で強く抱きしめた。
すると愛歌も俺の体を抱きしめ返してくる。
「愛歌……」
愛歌の体は柔らかく、温かく、そしていい匂いがした。
抱き合っているだけなのに、幸せな気持ちになれた。
このまま一つになれたら、どれだけ心地よいだろうか……。
理性が少しずつ蕩けていき、情欲が胸の内から湧き上がってくる。
「か、奏汰君!」
「愛歌!!」
互いの名前を呼び合う。
それが呼び水となり、俺は愛歌をベッドに押し倒した。
俺の目の前には無防備な姿をした、幼馴染(初恋の人)がいた。
彼女は仄かに頬を赤らめながら、蕩けた目で俺を見上げた。
そしてふっくらとした唇を動かす。
「……いいよ」
その言葉に誘われるように俺は手を伸ばし……。
慌ててブレーキを踏んだ。
「……愛歌」
「なに?」
「ゴム、持ってるか?」
もちろん、俺は持っていない。そんなことをする予定はなかったからだ。
しかし誘って来たのは愛歌だし、彼女は用意しているはず。
念のための確認だった。
「……」
愛歌はしばらくの逡巡の後……。
「……持ってない」
小さく呟くように言った。
そして気まずそうに目を逸らした。
こ、こいつ……自分から誘って来たくせに。
一番、大変な思いをするのは自分自身のはずなのに……。
少しだけ冷静になった俺は上体を起こした。
「今日はここまでにしようか」
「そ、そうね」
当然だが、避妊具なしに続きはできない。
愛歌もちゃんと自覚しているようで、起き上がると、抜け出すように俺から距離を取った。
そして居心地の悪そうに顔を背けながら……。
「ま、まあ、二十点と言ったところかしら……?」
「いいよって、言ったのにか?」
「え、エッチしていいって意味じゃないもん」
「じゃあ、どういう意味だよ」
あれはそういう流れだっただろ。
俺が睨むと、愛歌はやれやれと肩を竦める。
「他にもしなきゃいけないスキンシップがあるでしょ」
「例えば?」
「それは……キス、とか?」
「き、キスか……」
確かにエッチするのにキスをしないのはおかしいか。
でも、キスはレベルが高いというか……。
いや、エッチの方がもっと難易度は高いけど。
「ま、まあ、まだまだ、練習が必要ね。……今日はここまでということで」
「……今日は? 明日もやるのか?」
「それは……分からないけど。これから機会があるたびに、するから。そのつもりでいて」
これからも、続けるのか……。
当然、続けているうちに、最終的にそういうことに至るだろう。
そうじゃなくても、今日はまるで恋人のようなスキンシップをしてしまった。
お互い、恋人でも何でもないのに。
ただの幼馴染、友達同士のはずなのに。
こんなこと、していいのか?
今更、不安になってくる。
「何か、不都合でもある?」
「……いいや、まさか。いいよ、やってやる」
流されるままに俺は頷いてしまった。
欲望には勝てなかった。
何より、「二十点」のまま引き下がれなかった。
「じゃ、じゃあ……俺は今日は帰るから」
「ま、待って!」
愛歌に服の袖を引っ張られた。
薄暗い暗闇の中、愛歌は恥ずかしそうに俺を見上げた。
「最後に抱きしめて」