さくらです。
なろうでの活動のほうが長いのですが、ありま氷炎様の企画に参加し続けて10周年となりました。
記念にどんなお話にしようかなと悩み続けていたのですが、いろいろと考えて、この作品に仕上がりました。
私って、たぶんいろんな主人公を描いてる気がするんですけど(性同一性障害の男の子(MtFの高校生)、偉い人の隠し子、獣人化する子ども、アルビノの女の子、ジャンヌダルクとその親友が転生した2人の女子高校生、などなど)、「性」を扱った作品って、なかなか描きづらくて、書いてなかったんです。
(なろうにはノクターンノベルズっていう、R18用のプラットフォームがあるんですけど、カクヨムのルールが不明ですし)
今回、風俗で働く女の子を主人公にしたのは、偶然でした。
前から、男娼をしてる男の子を主人公にお話を書きたいな、と思っていたのですが、いつか書きたいっていうのは思っていました。
そこから、女性同士の風俗をテーマにして、そこで働く女の子と、その彼女を指名するお客さんとの恋愛を描くことになりました。
作品のあとがきに部分にも書きましたが、モチーフは映画「スウィート・ノベンバー」です。
ヒロインが末期がんで、毎月、契約のように恋人を変えている女性なのですが、そのラストシーンが忘れられずに、心に引っかかったままでした。そこを、作品にどうしても生かしたかった。それで、一気に話が頭の中に作られていきました。
悠里は、最終的には亡くなってしまうのですが、ユキとの最後の夜に、「綺麗なままの私を覚えていて」というセリフを言います。このセリフも、「スウィート・ノベンバー」のものです……たぶん。そうだったはず。抗がん剤治療を受け、やせ細り髪が抜けていく、痛みで苦しむ、そんな姿をユキにだけは見せたくない。ユキと会う時は、自分の「がん」なんてどこにもなくて、ただ一人の客として、ユキと夢の時間を過ごす。そんな風に思っていたはずなんです。
でも……ハッピーエンドにしてあげたかったなぁ……。
最後の勿忘草も、ちょっと前から気になっていたアイテムでした。
仕事柄、forget me notという表現を先に知っておりまして(花の種類としてというより、言語構造という意味で面白い名前なので)、それを今回の物語と合わせました。
ユキは、風俗という仕事をしている設定にしましたが、汚れてるとか、女性を貶めているとか、そんな風には読み手には思ってほしくありませんでした。
ユキには、自分を誇りに思っていてほしかった。
どうしても、同性愛をテーマにすることが多いので、幼少期の体験の描写は、決して明るい話にはなりにくいです。それは作者自身が体験していることでもありますから……。
まぁ私のことはさておき、とにかく、ユキにはそういう過去があっても、前を向いて生きている姿を描きたいと思っていました。
夢を見させてあげる、それを大切な価値観だと思っているユキ。
お金を払い、相手との時間を買う。その時間は、二人だけの時間。
きっと、これも愛のカタチだと思います。
悠里が最期までこだわったのも、私情を混ぜたくなかった、というのもあるんだと思います。
ユキとの時間は、純粋に、自分=悠里との時間を楽しむための時間であってほしい。
そんな願いだったんだろうなあ、と。
最期、別れるのは辛かっただろうなぁ。ユキも辛かったでしょうけど、きっと悠里には、「次の機会はない」っていうことが分かっていたはずなので……。
机の上に置かれた手紙の文字ですが、「字が乱れていた」という描写も、痛みに耐えかねて、苦しみながら、ユキへのメッセージを残した、そんな印象を持ってほしいと思いました。
ラストのユキは、悠里とのいろんな思い出を胸に、再び前を向いて歩き出すところでエンドにしています。
きっと、これからもユキは、悠里と過ごしたかった未来への想いも含めて、出会う人に夢の時間をあげつづけて、それを誇りとしていくんだろうな、と、そう思います。
月餅企画10周年に、私自身の気持ちをたくさん込めた作品を投稿できてよかったです。
あらためて、ありまさんにお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
これからもよろしくお願いします!