• 異世界ファンタジー

次回新作のプロットが纏まってきたので少しだけ書いてみた

~蝶は鏡中を舞う(仮)~
鏡中の私が夢なのか
鏡に写る私が夢なのか
それは胡蝶の夢

この世界に朝が訪れる日はくるのだろうか
不夜城の歌舞伎町でも明けぬ夜はない
だが私が今いる世界に夜明けは訪れることはない永遠の闇が支配する

歩む通りは左右に多くの飲食店が並び賑やかだ
現世と違うのは行き交う人々の様相だけ
多くの見慣れた姿の人々に少数だが半獣人、背に羽の生えた人、妖精のような小人・・・その姿はファンタジー世界の様々な住人が入り混じってる
異形の様相を誰も気にする者はいない
この世界では普通の事だから

ふと夜の蝶達向けのドレスが飾られるショーウインドウに写る姿が目に入る
背中半ばまでのストレート黒髪、タイトな黒タンクトップに包まれる豊かなバスト、カモフラ迷彩柄のショートパンツからスラリと伸びる生脚、右の太腿には物騒なレッグホルダーにオートハンドガンが差さっている
モデル体型で背は平均より高めで少し目にかかる前髪と色白の顔はすれ違う多くの人が振り向く美貌
だがここで美貌は何の価値も無い姿は心を写すだけの鏡だから

この角を右に・・・違った左だ
二つの世界を行き来すると方向感覚が混乱するのは何時もの事だが慣れない
角を曲がった建物の影で中学生くらいの影が薄い少女に何かを手渡そうとしてる二十代前半の金短髪でいかにもハングレな感じの男
気が付かれる前にレッグフォルスターから愛銃シグザウエルP226E2を抜く
パーン
放たれた9mmパラベラム弾は男の額に命中するが
カーン
と甲高い音がして銃弾が跳ね返えされた

男は突然の銃撃に驚き手の小袋を落とすが平然と立っている
銃を片手にする私を見付け睨む目が人の物でなく昆虫の複眼に変化してる
”くっ昆虫型か!”
思わず呟きながら男に向かい駆け出す
昆虫型となれば堅い殻に守られ銃は駄目だ接近戦しかない
男は少女を私に向け跳ね飛ばし通りの奥へ逃げる
跳ね飛ばされた少女を受け止める
腕の中にいる突然の出来事で怯え涙を流す少女へ
”全て忘れ家に帰りなさい”
と優しく声を掛けると同時に額へ右手の平を当て「書き換えられる前の死」と「新宿での出来事を全て忘れる」暗示魔法を施す

暗示魔法の施しが終わると死の恐怖に慄いた表情になり私の腕の中から弾ける様に走り去る少女
男と少女の居た場所にはパケ袋(違法薬物が入った小袋)が落ちている
少女の名前は「内海広美」で男から買った足元にある違法薬物をオーバードーズして享年15歳になるはずだった
この世界の出来事は過去を書き換え少女は本来の世界で生きて母の元へ帰る
さて少女の過去は書き換えたので男の始末を完了すれば依頼は完了だ
慌てることなく男の逃げた方向に歩みを進める

通りを歩み気配を感じた脇道に入ると男が背を向け立っている
男は立ち塞がる女に邪魔をされ前に進めずにいた
女は私と双子の様相だが色白を通り越した透ける様な白い肌と白髪でイヌ獣耳風の髪型が加わっている
「昆虫型に銃を使うとか無駄弾だな鏡(きょう)」
”そんなの撃ってみなきゃわからないでしょ!”
「プンプンと昆虫臭がしてるけど」
鼻をクンクンする白髪女
”普通の人はわからないよ!”
「鏡が普通の人なのか?」

前後を塞がれた上に訳のわからない会話に挟まれ男のイライラも限界に近い
「お前らはなんなんだー!」
男が吠えるのと同時に服と皮膚が飛び散り体中より本来の姿が現れる
背丈は男の時と変わらないが姿は大きく変わる
全体が艶やを帯びた緑色になり地に立つ二本の脚は鎧のような殻に覆われ鎧を装着したようだ
二本の手は長い鎌状になり鋭く輝いている
背中には一対の細く長い羽が生え銃弾を弾いた頭は一回り小さくなり姿が現すカマキリの物になっている
居場所を求め新宿へ辿り着いた幼き無知な者達へ薬物を売り小銭を稼いでいた小物が心に写していた姿
随分と自己過大評価に思えるカマキリ姿だが本人は少女達を餌としか見てない捕食者の気分だったのだろうか

「邪魔する奴は死ね!」
カマキリの頭になってしまったせいか気に障る金属を擦る様な声でカマキリ男が叫ぶ
正面に対峙する白髪女を目掛けて鎌になった腕を振り上げ走る
白髪女はクラウチングスタートの体勢になると残像を残す速度で四足歩行体制のままカマキリ男の横を駆け抜け私に向かって来る
「うがあ!」
右足の膝から下が斬り飛ばされ地面に転がるカマキリ男
白髪女は私の横で立ち上がると口に咥えたカマキリ男の足を斬り割いたコンバットナイフを手に持ち替える
「後は任せたよ」
少し下げ目に履いたショートパンツ上の尾骶骨辺りから生えてる少し太目で白くモフモフした膝丈尻尾を振り振りしながら白髪女が私に呼びかける

傷口から青色の血をまき散らし唸り声を上げて地面を転がるカマキリ男
”青い血とか気持ち悪いな”
まあ昆虫の血は青いから言っても仕方ないけどね
跳躍をし仰向けでノタウチ回るカマキリ男の腹へ着地する
うん!腹はカマキリと同じで柔らかくてダメージが通るね
「うごっふ」
口から青い血を噴き出すけど表情の無いカマキリの頭では効いてるのかわかんないね
「ふざけるなあああ」
本当に金属を擦る様な耳障りな声だよ
突如カマキリ男の体が持ち上がり私を跳ね飛ばす
跳ね飛ばされた空中からカマキリ男を見ると背中にある羽の下から中脚が出て体を撥ね起こしたのか
カマキリは六脚だったね中脚を羽の下に隠していたとはね

跳ね飛ばされた状態から蜻蛉を切り体勢を整え白髪女の横に着地をする
「遊び過ぎだよ鏡」
”幼き子達を食い物にしてきた罰で少し痛めつけてから始末と思ったけど”
「ぐぬうわあああ」
唸り声を上げると斬り割かれた膝の断面から新たな足が生え再生するカマキリ男
”ありゃ予想外に面倒な奴”
「はい!そろそろ終わらせないと店に遅刻するよ」
白髪女が私にコンバットナイフを手渡す
「俺様に恐れ慄いて動けまい!」
節操無い状況に呆れてる私達へ何を勘違いしたかカマキリ男が鎌になった腕を振り回しながら近づいて来る

時間も無いし手短に済ますか
適当に振り回す鎌をくぐり抜けカマキリ男の腹にコンバットナイフを突き刺しナイフを触媒に火炎魔法を発動する
「グワアアアアア」
突如炎に包まれ狂気乱舞するカマキリ男の腹に刺さったナイフの柄先を蹴り飛ばす
既に体の内部から炎に焼き尽くされていた体は蹴り飛ばされ雑居ビルの壁に激突した衝撃で粉々に飛び散りる
飛び散る炎が消えると雑居ビルのコンクリート壁に刺さったコンバットナイフだけが残る
ナイフを抜き白髪女に手渡す
”アリスありがとう”
「刃に焼きが入って使い物にならなくなってるよぉ~」
火炎魔法の触媒にしちゃったから瞬間的でも数千度の高温になってしまったもんねゴメン
”次の休みに新しいの買いに行こう”
「約束だよ!絶対にだよ!デートだよ!」
”デートでなくてお散歩といいなさい!”

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