「パパ、寝る前にお話しして!」
わかった。
その代わり、良い子で寝るんだぞ?
「うん!」
そうだな……
昔々、あるところに
おじいさんとおばあさんがおりました。
「おじいちゃんが
ドロで造った船に乗せられて
沈んじゃうんだね!」
いや、それ、別の話だし。
しかも微妙に違うな。
と、とにかく先を話すよ?
「うん!」
おばあさんが川に洗濯に行くと
どんぶらこっこ、どんぶらこと
大きな桃が流れてきました。
「桃から触手が伸びてきて
おばあちゃんに寄生するんでしょ。
それで、おじいちゃんを食べて
村全体を乗っ取るんだね!
バッドエンドを
寝る前の子どもに話すのって
大人としてどうなの?」
なんかそっちの方が面白いかもだけど
とにかく、パパのお話と違うから 汗
先を続けて良いかな?
「うん。でもさ」
どうしたの?
「桃を半分に切ったのを船にして
そこに乗った三センチの人が
針を刀にして乗るなんて無理ゲーだよ!
しかも、それで鬼を退治するとか
無理が多すぎて、超萎える~」
えっ~と
ひょっとして、ワザと言ってる?
「え? ボクなんにも知らないよ」
確かに鬼が出てくる
微妙に似た話があるんだけど
パパの話は、ちょっと違うからね
「どんなの?」
桃を持って帰って食べたら
おじいさんとおばあさんが若返って
子どもを授かりました。
「あ! 子どもが可哀想な青鬼を退治して
お茶とお菓子とお宝をぶんどって
青鬼を奴隷にしてこき使うんでしょ!
なんか、ヤバいよね~ 奴隷とか
今どきの子どもにウケるわけないじゃん」
あのね……
あ~ 確かに
そんなシチュに微妙に似てる
別の話はあるんだけど。
パパ、お話しするの
もうやめて良いかな?
「え~ 楽しみにしてるのに!」
じゃ、じゃあ、続きね?
桃のおかげで生まれた子どもなので
赤ん坊は「桃太郎」と名付けられました。
あっと言う間にすくすくと育って
優しくて、強い男の子になりました。
「でもさ、ダンジョンはまだでしょ?
スキルが無くても通用するんだから
きっと、勇者の血統とかそう言う流れ?
お供は無口キャラとオッド・アイと獣人。
そんな話いくらでもあるから
聞いている方は、ガッカリだよ~」
バキッ!
「痛い! なんで叩くの、パパ!」
もう、寝なさい!