魔術(紋章魔術)
●浄化
紋章のベースは流れる水を示す縦三本同じ長さの平行線。
範囲を指定する円と組み合わせて使う。
左手お守りも、描画して発動させる紋章も、「線を切る」ことができないので、円にジグザグを組み合わせた形になる。
テグルオー《効果のイメージ》で定義される範囲で汚れと認識されるものを排除する。
付着した人体に害がある細菌・ウイルス・毒物も排除するが、これは魔法陣魔法の段階で神様がつけてくれたおまけ。
剣と杖の神の世界で一番使われている魔術であるため、数の恩恵で発動コストは段違いに低い。
子供の頃から何度も浄化魔術をかけられるため、「浄化魔術を使ったらこうなる、こう感じる」というイメージもつかみやすい。
このため、最初に教えられる魔術は浄化と決まっている。
ちなみに、浄化魔術で消えた物質は分解され、危険度に応じて深度を分けて結構な広範囲の地中に分散、ナイナイされる。
魔術と言っても、神様の奇跡を簡略化した手順で使っているにすぎないので、そのあたりのエネルギー収支は人知を超えている。
ンコなどの有用な元素分子は周辺の土壌の浅めのところに分散されるので、人が多く住む周辺や、人が長く住んでいる周辺は土が肥えやすい。(水はけ良すぎると流れてしまうけれど)
人体における影響範囲は、「外気と接している部分」なので、開けた口の中、鼻腔内、肺の中、までは浄化される。
ただ、消化管の中までは無理だし、血中も無理なので、食中毒や毒物摂取ですでに症状が出ている場合、浄化によって毒素を排除することはできない。
●治癒
紋章のベースは、完全を示す円。
範囲指定の円と合わせて使う。
治癒に関しては、自分に使う場合も範囲指定必須。範囲指定の円+治癒魔術の小さな円、で治癒の紋章と認識されているため。
指や杖で紋章を描くときには続けて大小の円を描く。
対象者の持つ治癒能力を高めて治癒する。
傷口が綺麗に治るのは可能性の範囲内なのであり得るが、人間、どうやったって欠損した腕は生えないので欠損を復元することはできない。折れた歯も戻らない。
骨がズレた骨折や腱の断裂は、整復や腱を繋ぐ手術が必要になる。
病気は、免疫力を高めて治癒するようなものは治るが、ガンなどは治らない。アレルギーもダメ。
傷の大きさ深さによって、魔術的力の必要量は変化する。
術者の魔術的な力と術の対象者の魔術的な力を合わせて治癒力を高めるので、他人に聖霊気をがっつり注いでかけてもらう方が効果が高い。
・解毒
浄化魔術と治癒魔術の紋章をぴたりと組み合わせて描き、解毒の呪文を唱えることで可能。
ただし、解毒自体の数の恩恵がないため、魔術の四要素の要求水準が高いうえに|テグルオー《効果のイメージ》を思い描きにくいので、難易度最高。
●結界
紋章のベースは、空間を区切ることを示す四角形。
範囲を指定する円と組み合わせて使う。
〇物理侵入遮断(物理防御結界)
〇音波遮断(音の結界)
〇音波臭気遮断(気配遮断の結界・厠の結界)
〇光遮断(闇の結界)
〇生物侵入遮断(虫除けの結界・侵入感知結界)
よく使われるのはこんなところ。
神罰の結界は物理防御結界の応用。
生物侵入遮断は、「一定以下のサイズの生物」の侵入を禁止する|テグルオー《効果のイメージ》で発動すると虫除けの結界に、逆に、「一定以上のサイズの生物」の侵入を禁止するテグルオーで発動すると夜中に襲ってくる盗賊対策の侵入感知結界になる。
実は、テグルオーによる応用範囲が広い。
科学知識と勇者の桁違いの聖霊気を組み合わせると、断熱圧縮による超高熱発生とか攻撃魔法的に使える可能性があって、それに気づいている姫巫女もいたけれど、あえて勇者には教えていない。
●防御
紋章は盾を示す逆三角形。
範囲(大きさ)を指定する円を組み合わせて使う。
紋章を描いたもの、あるいは空間に物理攻撃を受け止める光の円盤を展開する。
・物理防御結界魔術と防御魔術の違い
結界は、発動時に注ぎ込んだ魔術的力の量によって強度が決まる。
結界の内側や外側に新しい結界を張ることはできるけれど、それぞれ別の結界であり、最初に張った結界自体を強化することはできない。
防御魔術は、発動後に魔術的力を注ぎ込むことで強化が可能。
ただし、強化が間に合わないと破壊される。
魔術の立ち上がりは防御魔法の方が早いし、要求する魔術的力の量も少ない。
●強化
紋章は剣を表す十字。
他者に付与するときは、範囲を指定する円と組み合わせて使う。
人体の筋力や、攻撃に対する耐久力、持久力を上げる。
筋力強化をすれば重いものも持てる、耐久力強化をすれば同じ衝撃を受けても怪我をしにくくなる(切りつけられても皮膚が切れにくい、打撃を受けても打撲になりにくい、脳を揺らされても脳震盪を起こしにくい)、持久力強化をすれば疲れにくい。
強化の対象を限定するほうが効果は増す。身体強化なら総合的に少しずつ強化されるが、筋力強化なら筋力が重点的に強化される。
●加速
紋章は進行を意味する左向きのV字。
他者に付与するときは、範囲を指定する円と組み合わせて使う。
加速と呼ぶけれど、実は神経の反応速度を上げる系。
なので、射た矢や投げた槍を、手を放してから加速させることはできない。
・強化魔術と加速魔術の組み合わせ
身体強化と加速を組み合わせることで、高速戦闘が可能になる。
身体強化を合わせないと、「加速のおかげで攻撃は見えているのに瞬発力が足りなくて避けられない」になってしまう。
また、例えば槍を投げるとして、投擲前に身体強化と加速を人間にかけておけば、いつもよりも速い動きで力強く投擲できるので、槍の速度威力をアップさせることができる。
重ね掛けで無理をすると全身筋肉痛になったりする。治癒で治るけど。
●発火
紋章は炎を示す正三角形。
点に効果が表れるので、範囲指定は不要だしできない。
描き始めの起点に火を点ける。
紋章を描いて使う場合、起点と終点をきちんと一致させるのがコツ。
数の恩恵がそこそこあるので、難易度低目。
●発光
紋章は光を示す五茫星。
範囲を指定する円と組み合わせて使う。
光を通す非生体の中に光を宿す。
大理石、ガラス、貴石・半貴石、汲まれた少量の水や油、あたりが使える。
大量の水は、魔術的な力が散逸してしまう。流れる水はその上に付与した水が流れながら拡散してしまうので、光らせることができない。
数の恩恵がそこそこあるので、難易度低目。
●冷却
紋章は雪の結晶を示すアスタリスク型。
範囲を指定する円と組み合わせて使う。
範囲内の指定された物体、あるいは範囲内の空間の温度を下げる。
範囲を示す円と本体のアスタリスク型そのままの形は「同じ線を通らないルールの一筆書き」ができないので、人力描画の場合は外周の円は何度か重ね書きをする形で一筆で描く。
重ね書きのがズレて精度が低くなると発動しない。
難易度が高く使用者が少ない。
数の恩恵が使えないので、要求される紋章の精度も高い。
左手お守りでも精度が低いとアウト。そのくらいに難易度高い。
重ね掛け可だけど、重ねる分にも高い精度が要求されるので、さらに難易度アップ。
「指定範囲の分子の運動量を下げる魔法」なので「空気中に大きな氷の塊を出す」みたいなことは、氷の材料の大量の水が空気中にないのでできない。
汲んだ水なら冷やして氷に変えることは可能。重ね掛け必須だけど。
実は、生きている動物にかけて凍え死にさせることも論理的には可能。現在進行形で熱を生産している生き物の体温を下げようということなので、魔術の四要素の要求精度が高く、普通の人間には不可能なだけ。
とりあえずこんなところで。