かくれんぼという遊びは存在していない。
そんな話を作品内で書いた。
本当になかったのだが、私が小説にしたものを、子供たちが読み、みんなでやることになった。
始まってすぐに、ふたり隠れに、私の部屋の近くに現れた。
ひとりは廊下の物置の中。
ひとりは洗面台のゴミ箱の中。
そうして、しばらくは鬼は来なかった。こっちには隠れていないだろうと、5歳児は思ったのだ。
しかし、いくら探しても見つからない。そうしてやがて気づいた。鬼の子供が部屋へやって来た。
「ママ? 隠れてるか探しにきた」
言ってはいけない。一生懸命隠れているのだから。一生懸命探しているのだから。
「そうなんだ」
子供なりに、クローゼットの中を見たり、袖机と壁のスペースをのぞいたりをしていたが、本棚と天井との間に隙間があることを見つけて、
「パパ、あそこ見たい」
そんな高いところは隠れていない。子供の鬼が行けないんだから、隠れる方も行けないのである。
まぁ、見ないと気が済まないのだろう。
光命(ひかりのみこと)が両手で持ち上げて、見たがもちろんいない。
「ん〜? じゃあ、あっちだったのかな?」
と言いながら、戻ろうと、廊下を歩き出した時、
「ふふっ」
物置に隠れていた子供が思わず笑った。
「あれ? やっぱりいるのかな?」
しかし、物置を通り過ぎて、洗面所のゴミ箱にやってきてしまい、
「あっ! 見つけた」
隠れていた子供もビックリで、
「どうして、僕が見つかっちゃったんだろう?」
だが、鬼の子供も驚きで、
「あれ? 声が違う」
探していた人と違う人を見つけてしまった。
「じゃあ、近くにいるのかな?」
そうしてようやく、物置に隠れていた兄弟も見つけて、3人で仲良く手をつないで、階段を降りていったのだった。
数日後、明智家はかくれんぼブームになってしまい、旦那たちも巻き込まれて隠れている。大人は探してはいけないそうだ。瞬間移動できるから。
明引呼(あきひこ)が、
「探すの遅(おせ)ぇんだよな」
とぼやいていた。
だからこそ、子供は面白いのだろう。
探し、探されている間は、遊びが続くのだから。