なかなか進まない、次の章。
浮き沈みの激しい毎日で、やけにくたびれる。夏の暑さのせいなのか、はたまた別のことが原因なのか――
などと考えていると、子供たちが昼寝から目覚める時刻となった。私の部屋にあるソファーで仲良く寝ている、百叡(びゃくえい)と策羅(さくら)に光命(ひかりのみこと)が声をかけていると、
「倫ちゃん?」
孔明がやってきた。尋(じん、4歳)を両腕で抱っこして、彼の後ろに何かくっついてきた。のぞき込んでみると、空飛ぶ絨毯ならぬ、ベッドに子供がふたり。
浮くベッドなら、昔からあったから知っているが、ついてくるベッドは今初めて見た。
「これって、昨日買ったの?」
「そう。可愛いでしょ? こうやって、一緒に移動ができるの」
素晴らしい、発明品だ。
歩かない小さな子供は、基本ベッドで横になっている。
そこに、親が行くか、もしくはそばにベッドを置いておく。しかし、それでは結局そこから親は離れられないのである。
ということで、親についてくるベッドなのだ。廊下が広くないと使えない代物だが。(最大範囲は家の中だけ)
「母親の腕の中と同じ感触を味わえるらしいよ」
それは昔、子供が自ら感想を言っていた。ママに抱っこされているみたいで、気持ちがいいと。そこに、さらに、浮遊をプラスした画期的なベッド。発明した人は大きく躍進しただろう。
そうこうしているうちに、貴増参(たかふみ)がやってきた。珍しいなと思ったが、孔明に用があるらしく、何を話しているのかはわからなかった。しばらくして、ふたりで部屋を出て行った。もちろん、空飛ぶベッドも一緒である。
光命と子供ふたりで、おやつのアイスを食べていると、焉貴(これたか)がやって来た。
「孔明いる?」
「さっき、貴増参さんと出てったけど」
「そう」
「どうしたの?」
「あのベッド使ってみたかったんだよね」
そこで、違和感を持った。
「あれ? あのベッドいくつもあるんじゃないの?」
歩けない子供など、うちは20もいるのに、おかしいなぁ。
「試しで買ってきたから、2つしかないの」
「あぁ、そういうことか」
「俺、ちっちゃいの4人いるでしょ?」
「確かに、結婚する前は子供は3人だったのに、急に増えたよね?」
「そう。だから、使ってみたいんだよね」
焉貴はいつも、大人したいのだ。できるだけ、子供に縛られない生活を送りたいのだ。
「光、お前も一緒に行かない?」
「えぇ、構いませんよ」
ということで、百叡と策羅は光命に懐いているので、私の部屋からは誰もいなくなった。ちなみに、光命はちっちゃいのが15人である。
空飛ぶベッド、買い足してもよさそうだけどなぁ〜。