焉貴(これたか)が昨日、
「女の好きなプレゼントって何?」
と聞いてきて、
「奧さんにあげるの?」
「そう」
ということで、最初の奧さんにプレゼントをしたいらしかったんです。
ですが、聞かれても困るんです。
私は奧さんたちのほとんどに会ったこともなく、名前も知らないんです。
おかしな話ですが、これが現実です。
焉貴の最初の奧さんは知らないんです。
それでも、ピンときたので、
「ハーブティーがいいんじゃないかな? こうブレンドしてあるもので、色々な種類の詰め合わせ」
「そう」
「光さんだったら、いいお店知ってるんじゃないかな?」
光命(ひかりのみこと)は案の定知っており、ふたりで話していたので、そのままにしていたんです。
ですが、今日、焉貴を一度も見ていないことに、今気づいて、
「あれ? ハーブティーどうしたの?」
と聞けば、瞬間移動でやってくるんです。
「今日、買いに行ったよ」
「わざわざお店に行ったんだ」
「そう。夏休みで混んでてさ」
「そりゃ、そうでしょ。しかも首都なんだから」
だが、高校教師の焉貴を襲った事件はこれだけではありませんでした。
「生徒に会っちゃって」
「あぁ〜、女子高生行きそうだよね? ハーブティー屋さん」
「あいつら、よくしゃべるよね」
お店で、私服の女子高生に囲まれている焉貴。
「先生、誰かにプレゼント?」
「そう、うちのにね」
この先の生徒の質問がおかしかった。
「旦那さんに? 奧さんに?」
まぁ、そうなるわな。うちはバイセクシャルの複数婚だからね。
興味津々で話を振られた高校教師は、適当に返事を返した。先生は言いたくもないし、聞かれたくもないのである。
で、奧さんに渡した結果を聞きました。
「泣いて喜んでたよ」
焉貴と彼女の間に、どんな要件でプレゼントがあったのかは、ふたりの秘密かもしれない。
だけど、よかったと、光命とともに思うのでした。