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河童のミイラ

三浦しをん先生の「あの家に暮らす四人の女」を読んで、ぼくも開かずの間ならぬ開かずの物置を開いてみた。

階段下に階段の幅と同じサイズに作られているので、物が入れにくい&出しにくいという我が家でも「誰やねんこれ作ったやつ」ベスト3に輝かないめんどくさい物置である。

なんせ奥行が階段の分あるもんだから奥にぶちこまれた物を取ろうとしたら全身潜り込まねばならんのでまじで物置としての機能性は💩である。
手前のものから順番に出したが「何故こんなものをご丁寧に箱に入れておくのか」のオンパレードであった。
未使用の殺虫剤もあった。害虫を殺す使命を果たすことなく、こんな物置などに押し込められてしまったかなしみがボロボロのパッケージから滲み出ていた。
おい、お前はまだ殺せるか、殺す前に死んでいないか、とぼくは声をかけた。当然のように返事はない。出したところでプシューである。

父はあれこれぶち込んでそのままにしている母にご立腹であったが、中にはどう考えても貴方が入れたでしょという物(ビニール紐や麻紐、灯油用ポンプ)も入っていたのでどっちもどっちだとぼくは思う。
とにかく父は母のせいにし、母は父のせいにするのがこの夫婦の成り立ちで絶妙なバランスをとっているかどうかは知らんがまぁそういう感じでこの家の毎日が回っている。

その回った結果がこれである。
お見せできないが15L指定ゴミ袋ひとつ、食品の空き瓶ひと袋、せとものひと袋、ガラス製品ひと袋。あと何故か未使用の蛍光灯が七本。
奥に謎のコンテナと謎のクソデカ鍋と謎の箱があったが奥へ潜りたくないので今日はこのくらいにしといてやる(捨て台詞)

手前が空いたので、そこへ掃除用具を片付けることに成功した。365日廊下の隅に掃除機が置きっぱなしなのがぼくはものすごく嫌だったのでご満悦である。
どうせ「すぐ使うから」という理由で出しっぱなしにされるとしても、まぁ今のところはご満悦である。

奥のコンテナと鍋と箱に河童のミイラが入っている可能性は捨てきれないので、そのうち、気が向いたらそのうち、思い出したらそのうち、引っ張り出してみるのも一興かもしれない。
それは河童でなくても人魚かもしれないし、どこをどうにかして我が家にたどり着いた何代目かのファラオの右腕かもしれない。
夢という種類ではないがなんとなく弾む。心が?脳がか?知らんけど。
コンテナにしろ鍋にしろ箱にしろ、開けるまで中身はわからない。シュレディンガーのミイラ、悪魔の証明ミイラ、音のない森で倒れたミイラである。

でも奥に潜り込むのは嫌なので誰か代わりに引っ張り出してくれないだろうか。

ちなみに妹が学生時代ハマっていたアジアンなお香も大量に出てきた。一度に燃やしたらトべるんちゃうかと思ったが鼻が曲がりそうなのでやめておく。

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