中島敦の短編に沙悟浄というものがある。浪人時代に塾から寮への帰り道で読んだ記憶をこれからも忘れるこはないだろう。
こと西遊記では孫悟空の大活躍に焦点が当たっている。だが、この沙悟浄という小説では、孫悟空とともに三蔵法師に仕える沙悟浄が思慮に耽る。我々はこの沙悟浄と思考を共にするのだ。
沙悟浄はこの小説を通し、尊敬について、学びについてを間接的にだが我々に教えてくれる。
彼は共に行動する三者のことを自分に無いものを持っている者とし、深く尊敬しているのだ。
転じて、果たして我々は身の回りの人のことを尊敬できているだろうか。
私は帰り道の電車の中、沙悟浄にならねばと切に感じた。