こんにちは、凛子です。
【 千年の竜血の契りを、あなたに捧げます 】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885012397お読みいただきありがとうございます。
平日中にあげたい、とお知らせしていた最新話ですが、
スケジュールが押してしまい週末にずれ込みそうです。
お詫びの代わりに、もうひとつ番外編をここに公開させてください^^
「熱砂の太陽」というお話で、
ほんのり繋がる時系列でいうと72話「オアシスに咲く夜の花」の〝直前〟になります。
URLはお話のあとに載せておきますので、併せてお楽しみ頂けると嬉しいです。
それでは以下からはじまります。どうぞ^^
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■番外編・熱砂の太陽■
砂漠を歩いていたジルヤンタータは、訝しげな眼差しをそのわきへと寄せた。その視線の先で、マムルークたちが喉を鳴らして笑っている。
「ありゃあ逆じゃねえのか」
「逆だな」
言い合っている男たちに、ジルヤンタータは首を傾げて尋ねた。
「何が逆なんです」
彼らの目線は遙か向こう、バスクス帝とオフデ侯爵、それにフェイリットが歩いている辺りを指している。マムルークたちの中に居て、シャルベーシャが鼻を鳴らして笑い声をとぎらせた。
「端から見たら面白え構図だなって話してた。娘っこが猛獣連れて歩いてるようなもんだぜ。なあ、バルバドル」
そう言って、シャルベーシャは口の端を引き上げる。バルバドル、と呼ばれた男は顔を半分包帯に巻かれて、片側の目だけをおどけるようにくるりと回した。
「ああ。あの皇帝、何を考えてる。さりげなさすぎて分からんかったぞ」
バルバドルが答えて、ジルヤンタータは尚更に目を鋭く細める。
「だから何なんですか。分かるようにいってくださらないと」
「仕方ねえな」
駱駝に膝をつかせて鞍を乗せながら、もう一人のマムルークがこちらを向いた。彼は確か、キバネとかいう男だ。タァインの襲撃を受けて、顔に怪我を負ったバルバドルとは対照的に、両足を脱臼したのだったか。軽くすんで普通に歩いているが、癖になったら危ないからまだ歩くなというシャルベーシャの命令を、頑として受け入れなかったという根の太い男だ。
「皇帝サンは今、どこを歩いてる?」
「どこってフェイリットのすぐ後ろを……? ああ」
言われて、ジルヤンタータははじめて気づく。
フェイリットに覆い被さるように、バスクス帝の影が彼女を包んでいた。砂漠の強すぎる熱射は、確かに慣れぬ彼女には辛いものだろう。随分平然として歩いていると思ったら、まさかそんなことが……。
「ありゃあ親切なのかねー」
「あの方がなさるとどうにも裏があるようにしか見えん。遊んでいるとか」
遊んでいる――それが一番しっくりとくる解釈だったが、ジルヤンタータは訝しげに眉根を寄せる。ではなぜ、親獅子が子を守るような……じっと観ているとまるで「愛しい」と言わんばかりの保護欲が垣間見えるのか。
確かに余りにもさり気ないその行動に、フェイリットが気づくことはないだろうと思えた。
「ご寵愛をいただいているとは考えないのですか」
「無えんじゃねえの?」
さして興味もなさげに、抜けた声でシャルベーシャが応える。
「ありゃ年上好みで有名だった。しかしあっちぃーな。ジルヤンタータ、そのでっかい体もうちょっと俺に寄せねえ?」
「私を日除けになさらないでください」
棘のある低い声で言ったあと、ジルヤンタータはフェイリットの下へと歩く。その可笑しくも無い冗談に笑い声をたてて面白がる彼らの声が、背中に届いて名を呼んだ。けれどそれには振り返らずに、ジルヤンタータは溜め息をつく。
視線を移したその先でフェイリットは一人、オフデ侯爵と話をしに離れたバスクス帝を見送って、夕焼けに染まりはじめた真っ赤な空を見上げていた。
-熱砂の太陽・終-
(こちらに続きます……)
72話「オアシスに咲く夜の花」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885012397/episodes/1177354054887604544よろしければどうぞ^^
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。