さぁ、早速書いていこう。リハビリも含めていつもと違う感じで。
「…ふぁ?」
カエデが目を覚ます。しかし、いつものベッドでは無かった。いつもの部屋でもない。真っ白の壁。全体的に白が基調の部屋。白の棚、白のベッド、白の机、とにかく白。
「…ん?何かが…おかしい…?」
カエデの意識が戻りつつあり、周りを見渡してみればカエデが知るはずもない高度な機械文明が開花された物品だった。空中にあったのはカエデが図書館にある本で見たタブレット端末のようだったが、先が見えるくらいに薄く、しかし画面はしっかり見えるものだった。
「…失礼」
ドアが自動で開く。そのドアもカエデはドアノブがあるドアしか知らないため、自動で開くドアを知らない。
「…ん、目を覚ましたか」
「…あれ?」
そこに現れたのはコスモスだった。そのコスモスは奇妙な服を着ていた。コスモスの元であるフェネックのフレンズとしての服ではなく、どう見ても薄く、伸び縮みしやすそうな素材。レオが創作物で言っていた「宇宙服」とは違うものだが、なぜか一緒のようなものと感じられた。それに、なぜかコスモスのことを思い出せない。なぜか見たことがあるような姿をした存在、以前のフレンズの服を着た姿しか思い出せなかった。
「…まぁ戸惑うのも無理もないな。3日も寝てたんだからな」
「3日!?」
「あぁ、3日だ。お前は3日気絶していた」
なぜ3日も気絶していたのか、知るはずもなかった。昨日、ビャッコの隣で一緒に寝たはずだからだ。
「…おいおい、何も知らないのか」
「…はい」
「……仕方ない、起きれるか?」
「よっこいしょ…」
「問題ないな。ついてこい、団長に会いにいくぞ」
誘われるがままに、ついていく。ここがどこかもわからないのに。
…
コスモスについていく。そこはやはり奇妙な空間だった。全体が金属でできていて、窓もない。外も見れない世界に窮屈感を覚えた。
「ついたぞ。団長の前では、無礼がないようにな」
「…はい」
「団長、意識が戻ったので連れてきました。5体満足です」
「ん、いいよ。入って」
ドアが開くとそこには…
「おぉ、本当に無事みたいだ…」
中央の椅子にはコウリュウが、周りには四神がいた。コウリュウも、四神も、コスモスと色は違えども、同じような服のようなものを着ていた。
「…ふむ…改めてだな…はむっ、ようこそ、ベース34に」
「…コウリュウ、喋る時は食事をやめなさいよ」
「そ、それもそうだな…すまない。…ん、とだな…単刀直入に聞こう。君は…気絶する前のことは?」
気絶する前のことを思い出してみる。こんなところにはいなかった。ビャッコといつも通りの生活を送っていた。
「えっと…ビャッコと一緒に生活を…」
「私と一緒に生活!?」
「ど、どういうことじゃ…?」
「ふむ…そのビャッコとやらは、そこのパワードスーツを身につけたビャッコと同じビャッコか?」
パワードスーツ、初めて聞いたが、そこと着用している服以外は確かにあのビャッコだった。
「…ですね…」
「な…!?私は独り身だったぞ!?」
「それは我らもわかっておる…!何を言っているんじゃ…?」
「…汚染されているこの区域で普通の服では生活できないのに発見した時には普通の服を着ていたからな…謎は深まるばかりよの」
「…団長、すまないが、フォクサーの整備がある。俺はここでこの場を離れていいだろうか」
「あぁ、止めてしまって申し訳ない。行っていいぞ」
「失礼します」
カエデにとっては謎しかなかった。話の意味がわからない。それしか無かった。
「…決めた。ビャッコ、しばらく彼に付き添ってやってほしい。彼は純度が我々と同じくらい高い」
「…嘘でしょう…!?この純度は私たち神々しか持たないはず…!」
「あぁ。イレギュラーだ。だからこそ、丁重にもてなせ。それに、珍しいオスだ。すでに天才の素質を持っている可能性が高い」
「…なるほど、そういうことなら、任された!」
何を話してるのか、本当にわからない。でも、話していることを聞いて、わからないなりに解釈をしてみると、自分は珍しい存在、ということしかわからなかった。
「よし。じゃあ、今日はこれで解散だ。…ビャッコはこれを元に。3人は調査に向かってくれ」
「了解」
「わかったのじゃ」
「えぇ、任されたわ」
「カエデ…でいいのか?ついてこい!」
妻ではないビャッコに誘導される。何が何だか、いまだにわからない。
…
「ひとまずだ、カエデが私の何を知っているのかわからないが…多分その様子だと…何も知らない、だろう?」
「…まぁ」
「だろうな!服装もタイリクオオカミとほぼ一緒だ!他のベースにいるオレンジと同じ服装だからな…」
「…父さんも…」
ここで父親であるオレンジもいることが判明した。これも少し自分にとって収穫だった。
「…ま、何もわからないなら実際に見てもらうのが早いな!ほら、これを着てくれ!」
「…これは?」
「防護服、正しくは『アグレッシブスーツ』だな!これがこの世界の標準装備だからな、数着持っておくことが基本だぞ?何も持っていなかったからっていうことで、団長からのサービス、だそうだ!」
「なるほど…」
そのスーツに身を通す。肌にピッタリついて、なんだか変な感じしかしなかった。しかし、なぜか動きやすかった。
「ふむ、似合っているぞ!」
「そ、そうかな?」
「あぁ!じゃあ、外を見に行こう。武器は…使えるか?」
「武器…刀とかなら」
「ほーう?刀か!…まぁ、自衛ができるならいいんだ。私だって、パワードスーツを着ていてもちょっと厳しいところもあるからな!」
「は、はぁ…」
「…その様子だとパワードスーツも知らなさそうか…それは今度話そう!今は、現実を見てもらわなきゃな!」
…
とある場所にたどり着いた。かなり大きい扉。自分の身長の何倍もある扉。なぜこんなに大きいのか、理由も知らないが。
「さて、こっちだ。この大きい扉は掃討作戦が出た時だけ開く。普段は、こっちの小さい扉から出入りする」
「なるほど…」
なんとか頭をフル回転させて現状を知ろうとする。夢であっても、なぜか知ろうとする。探究心故か。
「さぁ、外に出るぞ?」
ビャッコが外に出るために扉を開ける。そこには…
「…へ…?!」
空は紫色になっていて、空中には細かい黒い粒のようなものが浮いていて、山の頂上からは黒い煙が出ていた。
なぜこういうことになっているのか、さっぱりわからないが、一つ分かったことがあった。それは、山の形。山の形は、ビャッコとよく来ていたへいげんから見た山の形と全く一緒だった。つまり、ここはパークだと、言うことがわかった。
「…知らないみたいだな…」
「パーク…なんだよね」
「…そうだな。今から大体…そうだな…30年くらい前、オレンジはパークにいる全てのフレンズを結集させ、自分の心の闇が生み出したセルリアンとの全面決戦を仕掛けた。だが…負けた。セルリアンたちはフレンズたちを取り込み、勢力を拡大した。そして、私たちフレンズは今や絶滅危惧種となり、虚しい抵抗を続けている」
「…その決戦に、僕は?」
「…カエデ…はいなかったな。そもそもオスのタイリクオオカミのフレンズはオレンジとその子供のレオしかいなかったからな」
どんどん事実が明らかになっていく。この意識の世界は、セルリアンによってパークが支配された世界、フレンズの数がもう非常に少ないこと、そして、カエデが存在しない世界ということ。
「…その、オレンジさんは?」
「あぁ、オレンジか。別の拠点にいる。このセルリアンの世界をどうにかしようと奮闘してくれている、私たちの総司令官だ。あの基地だって、オレンジを含めた5人のオスが人間だった頃の知恵を総結集させて作り出した基地だ。今朝カエデを連れてきてくれたコスモスもその1人だな。…聞きたいことはまだまだある…だろ?」
「…だね」
「時間はたくさんある。聞きたいこと全部聞くといい」
聞くチャンスはここしかないと感じる。そして、なぜか、この夢は簡単には覚めなさそうだと感じた。
「…じゃあ、オレンジさんの子供って…」
「さっき言ったオスのレオと、メスのイナの2人だ」
「…そっか、じゃあ…この原因を作ったオレンジさんのことをみんなは責めたりしないのかな…」
「もちろん責めるフレンズはたくさんいた。そもそもオレンジたちが来なければこのようなことはあり得なかったんだからな。だが、慕うフレンズもたくさんいた。オレンジたちオスのこの世界を救う意志に励まされたフレンズもいる。私もその1人だ」
「…なるほど…」
冷静でいるように見せているが、実際は逃げ出したくて仕方なかった。この世界が怖かった。不安をそそられるような感じしかしなかった。
「…セルリアンについて話しておこう。ちょうど出てきたからな…」
目の先にはセルリアンが出てきた。いつも出てきていた青い小さいサイズのセルリアンではなく、黒く、自分の身長の3倍くらいのサイズのセルリアンだった。触手があり、見た目も恐怖をそそられるものだった。
「ひっ…」
「恐れるのも無理はないな…だが、恐れたら負けるぞ!」
「せ、セルリアンって弱点は…」
「無い」
「無い!?」
普通のセルリアンだったら後ろに石があって、そこを叩けば消える。なのに、このセルリアンはそれが無い。
「昔のセルリアンはあった!だが無い!」
「どうすれば!?」
「逃げるしかない!」
「えぇ!?」
「今持っている兵器じゃ勝てない!特殊兵装か、アレでなきゃ勝てない!ついてこい!帰るぞ!」
ビャッコに手を引かれるがままに逃げる。ひたすら逃げる。セルリアンにも意識があったならいまの自分たちみたいに逃げていたのかもしれない。しかし、それが今、自分たちが追われ、仕留められる立場になっていた。
…
書いてたら楽しくなってきたから長編にします。
あと、これは本編の決戦に負けたルートになります。ちなみに察しのいい人は気づいたかもしれないけど、カエデくんは決戦におけるキーパーソンでもあったのだよ。ちなみにこれ、カエデくんが好きになる以前からあった設定だからカエデくんを贔屓してるわけじゃない。