こんにちは。いつもありがとうございます。
ウクライナで戦争が続いていますね。
私は見ているのがつらいです。
多くの人々が逃げまどっている姿が目に浮かびます。
そんな中、自分が書いて来た「首取り物語」。大好きです。だから書き続けます。
でも贖罪の気持ちを表したい。だって物語とはいえ「大虐殺」を何度も繰り広げちゃったのですから。
だから書かせてください。
三月末までの隔日のエピソードは書いてあります。
サポーターの皆様への先行配信がちょっと中断しちゃいますが、代わりにこの作品を先行配信します。
キャッチコピー
【戦場の英雄。それは衛生兵!誰よりも危険。誰よりも勇敢。そして誰よりも消耗品】
作品名
【白銀のセイバー。勲章よりも欲しいもの。それは……】
作品情報
戦場の英雄は戦士?騎士?魔法使い?賢者?
いえ。
砲弾銃弾弓矢が雨のように降り注ぎ荒れ狂う中、倒れた味方を助けに飛び込んでいく者。看護兵・メディック・衛生兵。なんとでも呼びなさい!私はセイバー。戦場で敵を打ち倒さず、ただ助けるのみ。勲章なんかいらない。只々欲しいものは【一緒に生還する家族!】。
これは遥か彼方の世界線に作られた別の戦国時代。こちらの歴史で言うところの北条氏と武田氏、そして上杉勢との激戦場となった場所で生き抜く小部族の司祭の娘の物語。
次々と襲い掛かる敵に倒れていく彼女の家族たち。それを危険を顧みず突っ込んでいき助けるセイバーという戦士になった十七歳の少女の戦史である。
第一章【敗走】
第1話:戦場の英雄
ドクンドクンドクンドクン
自分の動脈の鼓動が聞こえる。
いけない。
これでは大事な「声」が聞こえない。
もうすぐだ。
ドゴーン!
ガガーン!
ズズズーン!!
来た。
味方の砲撃が始まった。重雷撃と超爆炎術。500mの距離からの砲撃。重装甲を施した掩体壕でも吹き飛ばしてしまう威力と教わった。黄色い曳光を引き幾発もの攻城用墳進弾が飛び着弾、爆発する。数名の平民が一年間生活できる程の費用をかけて製造された墳進弾が惜しげもなく無く発射される。
だけど敵のゴルディオ城塞はびくともしない。
難攻不落と言われる平地と湿地の中の小高い丘に建設されたそれは、今まで長期に渡り蓄えていた巨大なエネルギーで魔障壁を作り上げて完璧に防いでいるように見える。
「第2小た~い! 前進。前方砲撃跡まで。躍進距離50。進め~っ。前へ~!!」
小隊長の号令がかかる。
周りで息をひそめて簡易塹壕に身を隠していた
《《私の家族」》
が前進を始める。
11名の家族。
分隊長のハルジン
装甲士のブンター
装甲士サモン
大剣士ゴサン
大剣士クエィ
弓兵ホリィ
弓兵ヨイチ
魔法士ゴンター
魔法士ハルヒ
修道士タカハ
錬金士アミ
そして私、セイ。兵種は衛生士
分隊長のハルジン以外は初陣。
ハルジンは歴戦と言ってよい戦歴を持っていると自慢しているけど本当なんだろうか。そうならいいけど。
私とアミ以外は私たちの故郷オーゴ村出身の招集兵。
私たち二人は特殊な兵種だから1年間兵学校で訓練を受けた。それが今遂に……
いけない。
皆が走り出した。戦いの場に集中しなくちゃ。
アミと私は皆のその後姿を壕からゴーグル付きのヘルメットと顔半分だけ出して見守る。
突然、敵の城塞から無数の閃光弾が頭上に発射され、六発の毒々しい紫色の輝きが円を描く位置で輝きだす。
あれは。多分障壁無効化魔法陣!
周りから魔素を竜巻のように吸収して地上の味方に吹き付ける。みんなの装甲や装備にかかっていた硬化魔法が見る見るうちに無くなっていくのを感じる。
そして要塞からの遠距離弓の射撃が始まる。
早く伏せて!
あと少しで爆裂痕に辿り着く!
しかしその願いも空しく家族の一人魔法士ゴンターの叫びが、私の《《頭の中》》に響く。
セイッ!
やられた。足が、足に矢が! くそっ! 抜けねぇ。このままじゃ腐っちまう。頼む。助けてくれ!!
まだ「現実」の声も聞こえるから大丈夫。間に合う。
私は隣にいたアミと目で合図を交わし、毒消しと緊急処置剤を《《自分の》》口に含む。そして腰のポーチに綺麗に並べて入っている小型シリンジを自分の左腕に刺した。
私の体が白銀に発光する。
腰まで伸びた髪が、縛っていたコヨリを弾けさせ鳥が羽を広げたように舞い上がる。淡い白銀の燐光が壕内に満ちる。
私は脇に立てかけてあったボードに両足を無造作に置き、腰を落とす。
《《いって》》!
ボードが浮くと共に前進ベクトルが掛かる。勢いを制御するためにボードのテールを浮かせて浮力も推進力に変え、塹 壕の壁で反発させてから一気にポップアップ。
なるべく速く、なるべく低く。
弧を描くようにゴンターの倒れた場所へ滑っていった。
直進すれば帰ってくるのが大変。
矢に当たる確率も高い。
思いっきり低空を飛び、左手でグンターの魔法士ローブの襟元を掴んで引き寄せる。
光った特殊繊維のグローブをはめた左手が大人の男の体重を支える。グンターの体も発光し毒消しの効果が無事始まったらしい。
そのまま弧を描き先程の簡易塹壕へ戻る。
「アミ。後は頼むわ」
既にアミは背嚢のジップを開けて応急治療魔法具を並べて待っている。
「おーけー。任して」
ではこれから残った4分間程。次の任務を始めましょうか。
「セイ。気を付けてね。帰ってくるんだよ!」
「わかった。まだ貴方にスイーツの貸しが1つ残っているから必ず帰ってくるんだから!」
アミが既に顔を爆炎の埃で汚しながらサムズアップをしてきた。
私もそれを返しながら、一気にボードのノーズを上に向け上昇を開始する。これから《《囮》》の時間だ。
体が益々発光する。
その軌跡を追うように敵の矢が飛んでくる。
その分、地上の味方に降り注ぐ矢が減る。
これが私たちの任務。
戦場を白く輝きながら飛ぶ衛生兵。
そして飛翔時間が余った時は《《天空を駆ける囮》》。
人は尊敬と畏敬の念で私たちをこう呼ぶ。
【セイバー】と。
戦場の救世主。
誰よりも頼りになり、誰よりも目立ち、誰よりも勇敢。
そして誰よりも戦死が多い。
前の戦争で生きて帰って来た人はただ一人。
私のお母さんだけ。
そして今度の戦争では私がその血を受け継いで戦場を駆け抜ける!
読まれないような内容だと思います。
でも三月二八日締め切りのメディアワークス文庫さんのコンテストに応募したいのです。あそこのレーベルならこの作品でも行けるかもしれない。
ちょっとハードスケジュールですが、既に二万五千字は書いてあります。起承転結の「起承」までは書きました。
あとは怒涛の転×2つ。下仁田版「橋の上のホラティウス」と沼田攻囲戦の別ルート。これを一気に書き上げ終章へ持って行きます。
もしよろしかったら応援くださいませ。
「首取り物語」は絶対に続けます。