国立新美術館で開催中の「至上の印象派展」に行ってきました。
ビュ-ルレ・コレクションの名品の数々を堪能したなかで、かつて親友だったゴッホの死を悼んで描いたという、ゴーギャンの「肘掛け椅子の上のひまわり」があまりに美しくて胸を打たれました。
室内の薄暗さが、タヒチの陽光の眩しさを感じさせます。
小窓から見える海にはボートと二人の人影が見えます。これは或いは額縁に入れた絵かも知れません。
画面中央に据えられた肘掛け椅子には、輝くように咲き誇る向日葵の大きな花束。
ただそれだけの絵がどうしてこんなに悲しいのだろう。
花びらの柔らかさまで伝える繊細な筆遣いは、ゴーギャンが人物画で見せるあの大胆なタッチとはまるで違うものです。
そこにはルノアールが描いた「可愛いイレーヌ」のような愛にあふれる画家の眼差しを感じます。
向日葵はゴッホが生涯愛した花でした。
その肘掛け椅子に坐って、いまゴーギャンと向かいあっているのはきっとゴッホで、この向日葵のように笑っているのだろうかと思ったら、たまらなく切なくなりました。
タヒチで晩年まで暮らしたゴーギャンは、ゴッホの愛した向日葵の花が描きたくて、アルルから種を取り寄せて自ら栽培したそうです。タヒチには向日葵が無かったから。
その向日葵の絵を、ゴッホに見せたかったなあと思いました。