「いやぁっ!やめてぇっ!」
彼女はついに押し倒された。彼の膝は彼女の両腿に割って入り、荒い息づかいが顔にかかる。
「ぼ、僕だってこんなことしたくないよ!」
「あなた、誰なの!?」
「僕は2019…僕の意思とは関係なく『時』が僕を推し進めてどうにもできないんだ!」
「…2019?」
ぐぐぐぐ……両腕で力一杯ふんばる2019の後頭部には立派な皇帝ペンギンが乗っかっている。
唇まで紙一重
吐息だけでなく、小刻みな震えも伝わる。
──もう、限界だった。
「ちゅっ」
ごーん。
除夜の鐘と共に2018が薄らいでゆく。
「そっか、時間なんだね」二人はゆっくりと立ち上がった。
ごーん。
寂しそうな笑顔を浮かべ、また薄らいでゆく。
「あの…僕、まだあなたに何も」
「大丈夫よ、あなたなら」
2018は振り返って言った「おいで」
先程の皇帝ペンギンがひょこひょことやって来た。
「『平成』は私が連れてゆくわ。あなたはその子をお願い」
「みゃあん」
生まれたばかりの子猫が2019の足元に座っていた。
「名前は?」
「まだないの」
ごーん。
消えてしまいそうな2018。
「サヨナラ。頑張ってね」
「ありがとう。お疲れ様」
ごーん。
最後の鐘の音と共に2018は消えてしまった。
僕はそっと唇に触れる。
残る甘やかな温もりとその香りは…
2019はlemonの香りで幕開けた──
今年は私にとって、カクヨム元年でした。
沢山の方と交流できて楽しかったです。
ありがとうございました!
来年もよろしくお願いいたします。
良いお年を!