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カクヨムコン9完走(?・まだ終わっない)記念SSシーグ編をば⋯⋯

拙作をお読みくださり、いつもありがとうございます。

恋愛ものしかお読みにならない方はお久しぶりです

婚約「解消」ではなく、「破棄」ですか?
身代わりの私は退場します
死んだ日の朝に戻っていました

更新できてなくて申し訳ないです

異世界ファンタジーを読んで下さる方は、ありがとうございます

『異世界に喚ばれたけど間違いだったからって棄てられました』

カクヨムコンに参加するようになって初めて、読者選考期間中毎日投稿出来そうです
(しかも、毎日朝昼晩の三回!)
最終日(2/8)まで投稿予約してあります

そこから先は、不定期更新になりそうですが(^^;)

異世界ファンタジー週間ランキングも、 欄外だったのが、カクヨムコン9開始から1900番台だったのが、三桁にまで迫りました
✧ \( °∀° )/ ✧ 今朝は771位
(カクヨムコン用のランキングは259位)
私のファンタジー小説としては快挙です

感謝を込めて、シーグのお話を載せておきます
(人物画も 下手の横好き絵ですが)


 ❈ ❈ ❈ ❈ ❈ ❈ ❈

【消えた未来の先に出会った愛しい番い】


 なにが起こったのか、わけが解らなかった。

 成人の儀を執り行い、陛下から守番の命を受け、その証しとして『成人の銀鎖』を受け取る筈だった。

 確かに、戴冠の間で跪き、恭しく手を差し伸べたのだ。
 俺だけのための、俺の守護精霊に合わせて作られた銀鎖を受け取るその瞬間、戴冠の間に目も開けられないような眩い閃光が走った。

 光が収まり、目の奥の痛みに耐えながら目を開くと、そこは知らない場所だった。


 陛下の玉座も、戴冠の間の赤絨毯も、俺を羨ましげに見つめる数十の目も、すべてがなかった。

 代わりに見えるのは、太いたくさんの石の柱と冷たい石の床、魔術士が神に祈る祭壇のような台座と白地に金の縫い取りのズルズルした衣を着た見知らぬ男達。

 灯りは祭壇の揺らめくローソクの明かりと、柱の中ほどに留まる幾つかの火の元素精霊。

「ここは、どこだ?」

 少なくとも、俺の国の様式ではない建物の中で、戴冠の間でもなく陛下の御前でもない。

 俺は、魔術は苦手だが、複数の精霊の加護があるため、魔術の痕跡や精霊の動きは視える。

「強制転移魔術……か?」

 俺の足の下には、一部欠けて読み取れない魔法陣がある。形式から言って、単体転移や物体の入れ替えに関する魔術式のように見える。
 俺自身は魔術は使わないものの、乳兄弟のゼロフィリアスが金狼の身体能力よりも魔術の方が得意で、色々見せてもらったもののひとつに似ている。
 記号は読めないが、術に込められた形式と魔力の流れが同じだ。
 言葉や文化は違っても、魔術は似てるもんなんだな。まあ、万物の根源に触れるチカラだしな。

 で? 欠けて不完全な転移の魔法陣の上に跪いてる俺と、取り囲む、異文化の魔術士達。

 これは、どういう状況なんだ?


 * * * * * * *


 なんて奴らだ‼

 直接言葉は通じないが、守護精霊が守護魔法【調和】と【共存】を使ってくれたおかげで会話が出来るようになった途端、問答無用で魔力を毟り取って弱らせてから建物の外に放り出しやがった。

 知性あるヒトのする事か⁉


「なんと言うことだ。やっと、聖女様に匹敵する魔力を持つ人間が喚び出せたと思ったのに、魔術が使えない獣人《けものびと》だとは⁉」
「しかも、|女子《おなご》ですらないとは、式になんぞ間違いが?」
「これでは、使い物にならないではないか。また、神聖力を貯めるのに半年以上待たねばならんとは‼」
「信者を集めて祈らせなくては‼」
「いや、この者の魔力を吸い上げれば、補填になるのでは? 神の力を代行する魔力質を持つ者という条件に合う者なのじゃ、聖女様の魔力質に似ているのだから、代用できるじゃろう、恐らく」

 会話が出来るようになって最初に聞いた言葉が、名を問うたり俺が誰なのかとか、体調を気遣うものではなく、強制的に喚び出した理由や経緯の説明でもなく、「魔術は使えるのか?」「神聖魔法は得意か?」だった。
 更に、ケモノ扱いの暴言。
 お前らこそ、祖になる獣神族が何者なのか解らなくなるほど獣相を失った、ただの裸形のヒトの下等種族のクセに、誇り高き|大神《おおかみ》の一族の俺をバカにするとは!

 強制的に喚び出しておいて謝罪もなく、説明責任も果たさず罵倒するコイツらの人間性を疑いながらも、正直に、魔力と霊力を変換して、筋力や魔装して防御力を上げたり俊敏性を上げるのは得意だが、魔術や精霊術は使わないと答えると、問答無用で魔力を昏倒直前まで変な玉石に吸い上げ、そのまま建物の外に放り出したのだ。

 魔力を抜かれて昏倒直前では生命維持のためより安定する狼の姿に固定され人型を保てず、毛艶も精気も衰えて、狼と言うよりはただの瘠せ犬のようになって、フラフラと石で囲われた窓もない暗い建物から離れる。

 勝手に喚び出しておいて、俺の国へ送還してもくれないのか!

 魔術が得意な|乳兄弟《ゼロフィリアス》ならともかく、俺は、魔力操作からの身体強化しかうまく操れないために、防御のための魔装すら変な玉石に吸い取られた。
 着ていた服も魔装も、文字通り身ぐるみを剥がされた状態だ。

 それから、魔装を纏えるようになるまでの数日間は、正に生き地獄に近かった。

 この国は、俺の国では王の創り出す魔障壁の防御が及ばない王都の外、辺境の地にしか蔓延らない、邪魔や瘴気がそこかしこにあって、ヒトに傷つけられて瘴気に染まり闇落ちになった獣が闊歩していた。

 魔力を根こそぎとられて魔装出来ない今の俺では、触れただけでも闇落ちになりかねない。

 せめてこれが、陛下から俺の『成人の銀鎖』を受け取った後だったなら、守護精霊が力を発揮して、闇祓いの|巫子《ふし》と同様に、邪魔や瘴気を祓えるのに!

 邪魔や瘴気を祓って大神の鎮守の森を護る役目が、成人したと認められた俺の誇りになる筈だったのに。

 それをぶち壊してくれた無礼で非常識なアイツらを、俺は、絶対に許さない。



 その後、数ヶ月間、奴らの建物──何らかの神の神殿だった‼ 俺への仕打ちは本当に聖職者のする事なのか?──から離れず、奴らの動向を探りながら、魔力が回復するのを待った。

 辺りがいつ瘴気溜まりに飲まれるか解らない環境で、なかなか魔力が回復しない。
 山深く、熊や猛禽、山犬などが多く、それらに追われるだけでも体力が消耗する上に、気を抜くと瘴気になりかけの穢れがそこかしこにあって、最低限の防御しか出来ず、狩りをして体力を養うことも安静にして魔力を蓄えることもままならない。


 そんな中、俺は出会ったのだ!


 運命だ。間違いない。

 神殿の様子を覗っていると、俺と同じように、裏口から放り出された、華奢な少女がいた。
 小柄で細く、獣化は出来ないのか、受け身もとれない体勢に突き飛ばされ、手足に傷を負う。
 仲間だろうか似た服装の、緑気の精霊の加護の強い少女が僧兵を怒鳴りつけ、傷を負った少女の手と肘を癒す。
 俺も、ああいった回復魔法を学んでおけばよかった。

 仲間かと思ったが緑気の加護の少女は僧兵に連れ戻され、傷を負った少女は、元素精霊や妖精をたくさんくっつけた門兵から何かを受け取って、こちらへ歩き出す。

 僧兵に見つかると面倒になりそうだったので隠形し、息を潜めて茂みに伏せる。
 裏口に立ち少女を見送る僧兵も、近くを歩く少女も、俺には気づかなかった。


 そこで、奇蹟と運命を感じたのだ。

 なんと、少女が目の前を通ると、俺の伏せた茂みに蟠る穢れが消滅したのだ。
 そして、弱った俺の毛にこびり付いた負の凝りが散った。
 僅かに魔力が回復し、全身を熱く駆け巡る。

 俺を救ってくれるであろう存在……|番《つが》いだ!

 間違いない。
 嫁いだ姉や従姉は、運命の恋人と称して夫にベタ惚れで、出会った瞬間に全身が熱くなり、魔力が駆け巡ったと言っていた。
 |番《つが》いを得た兄も言っていた。
「今は解らずとも、出会えば自然と理解る。運命は何ものでも阻めずまた違えない。雷に打たれたような激しい衝撃と抗えない吸引力で、他は何も見えなくなる」と。

 まさしく! 俺は、その瞬間から、僧兵に見つかるかもとか、野生動物や魔獣に追われるかもなどは忘れ、身を潜めて少女を追うことしか考えられなくなった。

 その夜は、神殿のそばの林の中で過ごすことにしたらしい少女は、妖精魔法に包まれた衣を身に巻き付け、落ち葉の山に身を埋めた。

 俺は一晩、寝ずの番をした。

 彼女の美しい魂に惹かれ、精霊や妖精がたくさん寄ってくる。もちろん、野生の獣も。

 ──あれは、俺のだ!!

 ただ人型の見た目や毛艶、ちょっとした仕草がなんとなく気に入った女だとか、王や身内に勧められた女性というのとはまったく違う。
 彼女がなにより一番優先される存在になったのだ。

 彼女を取り巻く元素精霊達はいい。動植物に由来する妖精達も、彼らには遊びでも人間には酷いイタズラをしなければ許容範囲だ。
 だが、悪意を感じる遊びや災いを齎す邪妖精や界渡りの魔属はダメだ。
 彼女を傷つける者は許さない。
 彼女を捕食しようとする野生肉食獣も論外。

 自分の快復もままならないが、魔力も精気も霊力も、持てる力を使って、彼女を守る。

 俺より僅かに早く彼女の魂に触れ、深く心酔し切った人型の大きな風の精霊が彼女に安らぎの風を送る。俺が野生動物を追い払い、魔属を寄せ付けなかったのと合わせて、疲れてもいたのだろう、朝まで、一度も目を覚ますことなく、彼女は眠っていた。

 ──寝顔も可愛い

 俺が、女の子を可愛いと思う日が来るとは、人生何が起こるかわからないものだ。

 掟に従い、役目を果たし、国王の奨める縁談のままに大神の血脈を後世に継いで地に還る。
 そんな、当たり前の日々を過ごすことになると思っていたのに。

 俺は、この数ヶ月で快復も出来ず、国への帰還方法も見つけられないまま朽ちるのかと絶望していたが、もう、それはいい。
 国に帰らずとも、運命の|番《つが》いに出会えたのだから。

 もはや、この地が俺の還る地になったのだ。

 強制転移魔術に引っかかったのは、彼女に出会うためだった。
 兄者の言うことは本当だった! 運命は違えない。

 俺は、彼女を見守るだけで魔力の回復と安らぎを感じた。
 人型に変われるようになったら、なんて言って声をかけよう。

 狼の姿は怖がらせないだろうか? 大神に通じる金狼だからな。
 いや、彼女なら、狼の姿も、狼族の姿も、人型も、すべてを受け入れてくれるだろう。

 運命の|番《つが》いなんだから!!

 その日が楽しみだ。

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