「つわものたちは江戸の夢」を執筆したときの記憶をたどり、悩んだこと、工夫したことなどを振り返ってみたいと思います。
今回はリアリティについて
小説や映画などの創作物ではリアリティのある・なしで評価されることが少なくありません。
時代小説を書くにあたり、体験したことのない江戸時代のリアリティを読者に感じてもらうには大変に気を配ります。
事件や風俗習慣などは、資料を読み込めば想像はできるわけですが、どこか実体を伴わない、輪郭がぼんやりした世界しか頭の中に描けません。
時代劇を観て、時代小説も読んではいますが、いざ自分が筆を取るとなるとそう簡単ではありませんでした。
江戸の世界を描く想像力の助けにしたのが、
両国江戸東京博物館、深川江戸資料館、太秦映画村などの博物館、資料館です。
当時の建築物が復元され、家具身の回りの物が置かれていますので、ぼんやりとしていた映像が自分の脳内でくっきりと形になってきました。
さて、江戸の街並みは脳内に描けたけれど、肝心の人、キャラクターをどうするか?
さらに、インプットを増やす、時代劇を観て、時代小説を読み込んでも、私の力量ではキャラクターの焼き直しになってしまう、これは避けたい。
そこで、現代人でも江戸時代の侍でも共通にある悩みや喜びを描こうと考えました。
風俗、価値観が変わっても人間なら普遍的に感じることを表現できればキャラクターにリアリティを出すことができるかもしれないと考えたのです。
この発想から、第一部には生まれた時代が違っていたら…というキャラクターが登場します。
身近にいた人を参考に、普段は少しわがまま、会社で働くには窮屈ではみ出しがち。なかなか評価されない人が、いざという時には頼りになる。
この人、戦国時代や、戦後すぐのヤミ市とかでは頼りになったんだろうな、たくましく生きたんだろうなとある意味尊敬できる人物。
もちろん、人を斬ったり、命のやり取りをした人物ではないので、どこまで表現できているかはわかりませんが、少しは血が通ったキャラクターになったと思っています。
つわものたちは江戸の夢 第一部
https://kakuyomu.jp/works/16817330669442740548