難しい話でごめんなさい。ややこしい裏設定とかたくさんあって、それを知った上で再読していただくと更に面白い話になるはずです。
1.氵とは
ご存じの通り、これは「さんずいへん」です。しかし、見方を変えればカタカナの「シ」のようにも見えます。後篇の方に「ずっと死ぬ気でいました」という台詞にも分かる通り、「シ抜き」でいたということです。少々メタくなってしましますが、同じく後篇の「――〈京〉は意外と涼しそうな顔してるけど、可愛いんだな」という〈炎〉の台詞以前(前篇含む)は、さんずいへんの漢字を一つも使用していません。逆にこの台詞以後は、「京→涼」、「炎→淡」、「麗しい(谷)→灑」、「戻→涙」などとさんずいへんが付いています。
また、〈炎〉の名前を考える時、「氵=散水=水で散らすもの=炎」という裏設定もありました。
2.「にんべん」と「きへん」
上記の逆として、「絶対に生き抜いてみせます」という台詞があるかと思います。これも氵同様、「イ(+)キ抜く」という意味を持たせています。氵とは逆で、〈炎〉の台詞以前はにんべんときへんの漢字があったものが、以後では外されています。その最も分かり易い例が、「機械→幾つもの戒め」です。
3.〈京〉の読み方
常用では「きょう」や「けい」と読まれる京という漢字ですが、実は「かなどめ」という読み方があったのはご存じでしたか? 実は「いろはにほへと」で有名な「いろは歌」には最後、「京(これは「きょう」と読みます)」という文字が含まれていたのです。元々いろは歌は子どもに50音を覚えさせるために制作されたもので、促音(つまる音)の練習のために追加されたといわれています。そして、やがて「かなの最後」なので「かなどめ」という呼び方も追加されたそうです。この物語での最後の死者である彼女に、この名を名づけました。
4.数字
ラストのアビスでのシーン、プログラムの解除率が95.6%になっていましたよね。これは残り4.4%であることを表しています。「幸せ(4合わせ)」か「不幸せ(2つの4合わせ)」かは、読んだ貴方が決めてください。
5.副題
実はこの物語には副題があります。それは「Burning staff」というもの。単純に直訳で「燃えた役者」という意味でやはり〈炎〉を示唆すると思われるかもしれませんが、「staff」には「五線譜」という意味もあるのです。この物語は舞台が「戦火で燃えた日本」ですから、「燃えた日本=二本」ということで五本から二本引いて、三本というわけです。
6.完全に影響された
I do (not) want die.
これは完全にあの作品に影響されています。しかしちゃんと意味も持たせているんですよ。後篇の〈灑〉の台詞「もうさ、カッコつけるのはやめたらどうなの?」を機に、カッコ=括弧がつかなくなります。これにより、「I do want die.=死にたい」から「I do not want die.=死にたくない」に変わるのです。これは1.にも繋がってきます。
7.Last half
後篇のタイトル「Last half」には「後篇」という意味の他に、「裏」という意味もあります。前篇の「しかし、表だと思っていた面が裏面だったということはこの世の摂理である。(以下略)」という台詞に通ずる微々たる設定でした。
こんな感じでした。長い。
今いる僕たちが〈涼〉や〈炎〉の努力によって生かされた命なんだと思うと、なんだか生きようと思います。
他の作品の解説も随時出来たらなぁと思っているので、首を長くしてお待ちください。
それではまた。