ふと目を覚ますと、そこは見慣れた自室では無く見知らぬ部屋だった。
「ここは……どこだ?」
頭痛を覚えた事で手で頭を支え、微睡みながら目を覚ましたのだが、突然の出来事に目をパチクリとさせ一気に覚醒した。ただ思考が追いつかない。ここはどこだ?
「えっとあっと……そうだ!周りのものは!?」
逸る気持ちが、自室に置いてあった物が無いか確認する。携帯機やパソコン、衣類やゲームといった私物を探すが、あるのはスマホと手鏡だけだった。しかもこのスマホ、俺のじゃないから起動できてもパスワード画面を突破出来ないから何にも使えない。当然のように圏外で通話とかも期待できない。
「ここは何なんだよ……」
私物が無い、自室じゃないと言う突然のホラー展開に気が狂いそうになる。落ち着かせる様に手元にあった手鏡を見て身嗜みの確認や名前を思い出せるか確認する。
「身嗜みは問題無し。俺の名前は結城白金《ゆうきしろがね》。」
よし、こういう時、名前が言えるのは良かった。名前を奪われて言えない思い出せないってのはゲームでもよくある展開だ。ゲーム脳とは思ってしまうが、こんな摩訶不思議な出来事が起きれば普段しない、出来ない思考もしてもおかしくは無いだろう。
「とにかく、ここから脱出しよう。……出来ればホラー展開は無しにして欲しいが」
これで俺が女だったら、エロトラップがしこたま仕掛けられてるんだろうなと他人事の様に考える。……いや、男なら男でサキュバスという夢魔がいる。アイツに絞られでもしたら、脱出不可能もあり得なくはない。
「とにかく部屋から出よう」
ギィィと音をたてながらドアを開けて、廊下に出た。見渡すとゲームでもよく見るレッドカーペットが敷かれ、ここ以外の複数の部屋があり、在り来りの洋館を思わせるような風貌だ。ただ窓ガラスが無く、外の様子が見られ無い。
「ますます脱出ゲームの舞台な感じがしてきたな……」
そう考えていくと別の逸る気持ちが溢れるのを感じる。脱出ゲームの主人公になったと思えばこの状況、夢だと思いながらでも攻略していけば良い。ならばとゲーム脳をフル稼働させながら、周りの状況を確認する。
「……ん?」
ふと、廊下の先から足音がしており、こちらに近づいてるのかどんどん音が大きくなってきている。誰かが来てる。
「なんだ、清水玲華《しみずれいか》か」
本来なら警戒して部屋に隠れたりするものだろうが、そうしなかった。出来なかったと言うべきか。
制服を着て校則通りにスカートの丈が長く、柔らかい黒髪で癖毛が特徴的な、素朴に感じる幼馴染である玲華の見慣れた姿だ。夢の中でも幼馴染の姿が出てくるとは、変わった夢だなと笑い飛ばす。
「よ!玲華!お前もこの夢に捕まったか?」
距離2メートルといった所で玲華は止まるので冗談を飛ばした。が、玲華は無言で反応しない。それどころか、近づいた事で分かったが、玲華はまるで人形のように無表情で、手に持ってる物を視認してしまった事で思わず確認した。
「な、なぁ……その包丁……なんだよ……」
的な感じで始まります