とある昼休み。弁当を食べながら、俺はため息をついた。
「はぁ・・・」
「どうしたよ一ノ瀬《いちのせ》。辛気臭い顔をしてよぉ」
「ああ水樹か。昨日な、他人の情事に巻き込まれてな」
「なんだそれ、聞かせろよ」
「面白い話じゃないが、それでもいいなら」
俺を一ノ瀬と呼ぶのは、もじゃもじゃしたくせ毛がトレードマークな友達である水樹進《みずきすすむ》だ。
げんなりしながら言ってみたが、水樹はそれに対して興味を示したように昨日の出来事を話してほしいそうだ。
面白いとは思えないが、興味を示したのなら語ろう。それは昨日の出来事だ
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「どうしてだよ……」
俺がどうしてだと頭を抱えて言いたい。
何が悲しくて文化祭の道具を買いに行っただけで同じクラスメイトである高橋達郎《たかはしたつろう》の恋人の浮気現場を目撃しなければならないんだよ。
これが友達ならともかく、関わりの少ない相手だから余計そう思う。しかも俺を置いてけぼりにするから野次馬状態になってるし。
「お前には伊藤は不釣り合いなんだよ。俺みたいなのじゃないとな」
そう言って王子様系の野球部エース、葛葉英知《くずはえいち》は伊藤の肩を……いや、胸にまで手を持っていってる。伊藤は急に胸を触られた事に顔をしかめてる。
伊藤とは伊藤流美《いとうるみ》。ボブな茶髪にスリムな体型だが、胸は制服越しでも理想型の大きさと形をしてますって思わせる大きさをしてる。明るい女の子で男達に人気な女の子だ。高橋はそんな女の子を彼女にしていた。
浮気された事にはご愁傷様だが。
「っ・・・急にそういうの止めてよ」
「俺とお前の仲だろう?」
そう言って見せつけるようにイチィチャをしている二人。俺はただただ巻き込まれた事によるダメージだが、恋人だった高橋のダメージは計り知れないな。
「もうお前の知る伊藤はいないんだ。男なら潔く諦めろ?」
勝ち誇るように葛葉は、高橋に諦めるよう進言した。
「うっ、・・・うぅぅ、わぁぁぁ!」
泣き叫びながら来た方向に向かって走り出してしまった。待ってくれ、買い出しもそうだが俺をこんな状況下に置いていかないでくれ。空気が辛い。
「で、一ノ瀬はどうするつもりだ?この状態を見て」
「買い出し行かせてくれ、正直どうでもいい」
「・・・薄情なのねキミって」
「・・・慰めるにしても走るの早すぎて、今どこにいるのか分からん」
早くてもう見えないし、あの調子だと家に直行した可能性もあるからな。
「ま、なんにせよ。明日分かる事だし別に良いか。じゃあね」
そう言って葛葉は伊藤を連れて繁華街に消えていった。
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「とまあ、簡潔的に言えば目の前で浮気現場を見た」
「災難だな一ノ瀬」
「全くだ……」
一緒に弁当を食べながら、前日に買い出しが遅れた理由を愚痴りながら語った。あの後げんなりしながらとぼとぼ戻ったから、遅いと怒られて余計にやる気が下がった。
「しっかし。よくまあ浮気出来るもんだなぁ」
「最近はそういうのもNTRと言うみたいだぜ」
「NTRの範囲広すぎねえか……」
浮気とNTRを分けるのが面倒だから一緒にしてるってところか?……NTRは肉体関係までいってたら、っと思うが、区分が面倒ならNTRで良いか。
「改めてNTRってなぜ起きるんかね」
「お?お?気になる?なら同人誌で見たので良ければ語るぞ」
「なんだよそのわくわくした表情。キモイぞ」
そもそもそれって語れるものなのか?表情的に語れるんだろうけども・・・
コイツに彼女ができない理由な気もする。俺も彼女いないけど。
「例外はあるものだけど、まああれを見ながら談義しようじゃないか」
あれとは伊藤と葛葉のやりとりと、それを恨めしく眺める高橋だ。
NTR現場というか、背景にNTR談義を始めるってなんなんだろうな?
だがまあ恋愛とは無縁だった俺だ。
相手してくれるのなら水樹とNTR談義しよう。なぜNTRは起きるのか
これで始まるNTRざまぁ劇。ただ、はい。作者である私が女の子に致命的なダメージまで負って欲しくないので、あくまで主人公は巻き込まれた第三者視点になります。された彼氏の悪い点と、した彼女の悪い点。された男がただ泣いて逃げるっていうのがね。後日、話し合いすらしようとしないのも描写します。
だって、浮気女である伊藤が今回のヒロインですゆえ。
というか純愛路線というか、ライバルや間男を登場させられない人が書く以上、これが限界なんですよね。途中で心が死ぬ。でも書いてみたいってなった結果これ。
浮気で済んだのにNTRざまぁにもつれ込ませた周りが悪いって感じです