解放軍により「救済」されたユートピアの片隅で暮らす、ちいさな兄弟の話。
2人にとってはユートピアだったかもしれない、外からはどんなにディストピアに見えたとしても……というSF風短編です。
(↑ここまで宣伝)
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(↓ここからひとりごと)
SFなんて書けないよー!
ファンタジーばっか読んできたもん!科学の知識なんてさっぱりないもん! 魔法はすべてを解決するんだもん!!
…と、ずっと苦手意識があったんですが、ふと思い出したんです。
一時期狂ったように読みあさっていたル・グウィン作品。あれって全部SFカテゴリーだったな、そういえば、と。
SFには「宇宙的ロマンを解さぬ者は去れ!」 みたいな偏見を勝手に持っていたんですが、ル・グウィンのSFってだいぶ違う。
あれは完全に文化人類学。
「こういう環境下だったら、人間はどう進化するか?」
という思考実験を延々とやっているように見えて、当時の私にはそれがめちゃくちゃ面白かった。
こういう話を書いてもいいんだ、SFってこんな自由なジャンルなんだ、と魂が震えた。(…のにすっかり忘れてた)
あと、もう一人。
同時期に夢中で読んでいた作家が、コードウェイナー・スミス。
色々読んだけど、最初に読んだ『スキャナーに生きがいはない』の衝撃がやっぱり凄まじかった。
C. スミスのSFは空想の方向性がとんでもないと言うか、ファンタジー・幻想文学が葉っぱを広げていく空間とはまったく別の場所から頭蓋骨を突き破ってロケットがぐんぐん飛んでいくようで、その刺激がめちゃくちゃ新鮮で、とにかく興奮したのを覚えています。
こっちにも世界があったんだ、まだ葉っぱを広げられるスペースが無限に残っているんだ、と。
SFとファンタジーの、この「使うパワーは同じだけど、伸びる方向が違うんだぜ」感はなんなのだろう。
この2つ、まったく別ジャンルのように感じていたけど、本質は同じなのかもしれないですね。