私は怖がりであるにも関わらず、「怖い話を聞きたい」という好奇心や欲求に時々負けてしまうことがあります。「怖いものみたさ」ということなのだろうと思います。
私自身は、本当に怖い話を聞いてしまうと夜中にトイレにも行かれなくなり、悪夢を見てしまうほどの小心者です。大人になってからは精神的に疲れてしまう時間が増えたので、極力ホラー映画を見ることは避けております。怖くて消耗してしまうためです。
そんな私でもこの季節になると、どうしても「怪談」とか「幽霊」とか自分にとって未知の領域の話を求めてしまう傾向があります。それは、様々なひとから漏れ聞く「説明しきれない不思議なできごと」というものが確かにあるかもしれない、という未知の出来事に対する好奇心ゆえの冒険心のようなもの、なのだと思います。
先日、休みの日の夕方に夫に「怖い話が聞きたい」と要望を告げた所、その時は「ふ~ん」と軽く受け流されたのですが、数時間後・・・。
「あっ!」という夫の叫び声が私の部屋から聞こえてきました。どうしたのかな、と思い様子を見に行こうとしたら、夫が私の部屋から飛び出して玄関の方へと走り出ていきました。
「どうしたの?」と聞いた所、「出たんだよ。」という夫の手にはゴキブリ用殺虫スプレーが握られていました。
「え、私のへやのどこにいたの!?」
私の心臓の鼓動は急に激しくなり、仕留めるまでは安眠できない、という気持ちが頭をよぎりました。以前、インターネットの記事でゴキブリが耳の中に入ってしまい、3日後に摘出された記事をよんで以来、ゴキブリへの恐怖を感じてしまうのです。
部屋のどこにいるのを見たのか、どちらの方向に逃げていったのか、ということを夫に詰問し、部屋の中を必死の形相で捜索したのですが、見つかりません。
数分後、夫が私に言いました。
「怖い話が聞きたい、て言われたから。」
「え!?うそなの?ゴキブリはいなかったの?」
「うん、ゴキブリは見ていないよ。」
はああ、そういうことか。
夫の少しズレた怖い話の提供の仕方に振り回された真夏の夜の10分間でした。