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8月の短針

 ゆっくりと揺れていく
 影がゆらゆらと揺れていく
 大きな雲は胸を張って見下ろしている
 ずっとずっと見上げてしまう

 虫の声が聞こえる
 温い風が笑っている
 ほらもう一度
 同じ季節が巡っているだけ

 金網を握って
 僕は何を望んだんだろう
 炭酸のはじける音
 もう届かないのに

 ああ
 虫の声が聞こえる
 気持ちを置き去りにして
 影がただ濃くなっていく

 雲はどんどん着膨れして
 ため息ばかりが淡く溶けていく
 記憶の中とすり合わせをする
 どこかで呼ぶ声がする

 砂の山は柔らかく崩れて
 イルカはポスターの中に隠れる
 楽しい気持ちは宝箱にしまおう
 ほらまた見回りの人が来る

 虫の声が止んで
 まるで時間が止まったみたいで
 温度計のような気温が背中をさする
 風鈴がさっきからずっと黙っている

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