ゆっくりと揺れていく
影がゆらゆらと揺れていく
大きな雲は胸を張って見下ろしている
ずっとずっと見上げてしまう
虫の声が聞こえる
温い風が笑っている
ほらもう一度
同じ季節が巡っているだけ
金網を握って
僕は何を望んだんだろう
炭酸のはじける音
もう届かないのに
ああ
虫の声が聞こえる
気持ちを置き去りにして
影がただ濃くなっていく
雲はどんどん着膨れして
ため息ばかりが淡く溶けていく
記憶の中とすり合わせをする
どこかで呼ぶ声がする
砂の山は柔らかく崩れて
イルカはポスターの中に隠れる
楽しい気持ちは宝箱にしまおう
ほらまた見回りの人が来る
虫の声が止んで
まるで時間が止まったみたいで
温度計のような気温が背中をさする
風鈴がさっきからずっと黙っている