9/25 第37話投稿
ぬぐぐぐ……
今週のメモ
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詩歌文学館賞 第19回 2004年 受賞紹介ページより転載
http://www.shiikabun.jp/wp/book/bp-19安藤元雄『わがノルマンディー』(2003年10月/思潮社)
わがノルマンディー
私のノルマンディーは熟れたチーズと密造シードル
村の旅籠の昼食に出る小粒の泥臭い牡蠣
食堂の天井に吊った鼠よけの板の上に
日もちのする田舎パンが載ったまま忘れられ
私のノルマンディーは茶色まだらの巨大な牛ども
ゆるやかに傾く野の道を 従順らしく
白い歯の子供たちに追われ追われて
尾を振り ときには啼き声をあげながら行く
私のノルマンディーは陽を浴びた僧院の廃墟
それへ向かってゆっくりと川面を揺れる渡りのはしけ
青空に映える真っ白な石材 その曲線が途中で折れて
川上からは双生児を載せた筏も流れてこない
森を抜けるといきなり崖の端 その先は海
水の彼方に落ちる太陽がぽたぽたとしずくを垂らし
あたりの陸地はすでに翳り 沖合だけがなおも明るく
しかし間もなくすべてが闇に没するさだめ
詩人の名 音楽師の名も いまは街路に残るばかりで
私のノルマンディーは舟底天井の木造教会
どこか遠くの石造りの鐘塔を夢に浮かべて
古い港の一角へ ムール貝でも食べに行こうか