カクヨムコン4、応援ありがとうございました

「神野アセビは諦めない」https://kakuyomu.jp/works/1177354054887694737
が中間選考を通ってました!

右も左も分からないまま無謀にも挑戦したコンテストで読者選考を通して頂けたこと、本当に嬉しくそして驚いております。

今作は王道ジュブナイルSFを目指したお話です。
どんな内容かは、私があれこれ書くより頂いた素敵なレビューを読んで頂く方が早いかもしれません。
未読の方はこの機会にぜひ、一読して頂ければと思います。



(以下、お礼SSです。64話後のお話になりますので、途中までしか読んでない!な方はお気をつけ下さい)


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(ハルキ視点)


 三学期の学年考査を終えたセントラル生が次に挑むイベント、それは三者面談だ。
 ここで生徒達は、親と教師を交え、卒業後の進路希望についての具体的な話をする。セントラルでは二年のうちに就職先を決めるよう推奨されているのだ。三年目の授業は就職先に合わせた実習がメインになる為、二年目で基礎的な学習とそれぞれの特性を活かした実技を習得することになる。三者面談後に決まる授業コースが将来を決めると言っても過言ではなかった。

 といっても、それは一般的なセントラル生に当てはまることで、ハルキやアセビを始めとする『未来を変える6人』には関係ない。
 現職教諭である若月ソウを含む6人は、二年後保護省に就職することが決まっていた。周防キリヤの逮捕を重要視した政府が保護省内に急遽設けた『予知調査研究推進本部』、それが卒業後の彼らの新たな本拠地だ。

「――特定の生徒だけ免除すると、他の生徒達の動揺を誘うので。悪いんですが、五分ほど世間話に付き合ってから帰って貰っていいですか」

 柊ユウとハルキの前に座った若月ソウが、申し訳なさそうに切り出す。
 ハルキの中身が25歳の成人男性だと、今の若月は知っている。更に柊ユウが多忙なスケジュールを調整し、わざわざセントラルへと足を運んだと聞けば、若月が恐縮するのも無理のない話だ。
 弱り切った若月に向かって、柊ユウはきっちり腰を折る。

「いえ、形は大事です。中身がどうであれ、今の息子はまだ16です。今後もご指導の程をどうぞよろしくお願いします」
「はぁ。……えー、なにこれ、ほんと辛いんですけど」

 若月は額を押さえ、小声で零した。
 居た堪れないのは若月だけではない。ハルキも彼以上に途方に暮れていた。
 以前のままの冷えた関係なら、父は無理に時間を取ろうとはしなかっただろう。三者面談が二者面談に切り替わっただけだし、ハルキにとってはその方が気楽だった。
 ところが、アセビと二人で話してからというもの、父はがらりと変わった。何かとハルキを気遣い、関わろうとしてくる。夫婦の間でも話し合いが持たれたのか、母の態度まで軟化していた。
 そのこと自体は歓迎すべき事態なのだが、問題なのは両親の目に映る自分が『まだ16歳の少年』ということだ。中身は違うと頭では分かっていても、視覚効果は侮れないらしい。油断すると彼らはすぐに『保護者』の顔を見せる。

「父さん。若月先生困ってるから。特に話すこともないし、もういいよ、仕事に戻って」

 正直な気持ちを吐露したのだが、この姿だと反抗期真っ盛りの少年がよく口にする照れ隠しのように聞こえる。
 若月は額に当てていた手を口元にずらし、そっぽを向いた。彼の肩が小刻みに震えているのを見て、ハルキは頭を抱えたくなった。

「だが――」
「どうか戻って下さい、社長」
「……分かった」

 役職名で呼ぶと、ようやく父は重い腰を上げた。
 
「先生。息子の力は、まだ公にされていません。どうかあと二年、しっかり守ってやって――」
「父さん」

 ドスの利いた低い声でそれ以上言わせまいとするハルキに、とうとう若月はふはっと声を立てて笑った。素早く睨むと、若月はくすくす笑いながら何とも穏やかな眼差しでハルキを見つめ返してくる。

「いや、すまん。けど、お父さんの気持ちも汲んでやれよ、柊。幾つになったって、親にとっては子は子なんだろう。何より大切で守ってやりたい存在。だが親なら誰でもそんな風に思うってわけじゃない。気にかけてくれるだけ、有難いことだぞ?」

 若月の生い立ちを知っているハルキは、何とも言えない気持ちになった。と同時に、胸の奥が熱くなる。
 両親が何より大切にし、守ろうとしてきた『柊ハルキ』を自分は消した。それなのに、今こうして再びやり直そうとしてくれることがどれほどの僥倖か、分かったつもりで分かっていなかったのかもしれない。

「……来てくれてありがとう。気をつけて帰って」

 本来の自分を抑え、16歳の自分が口にしたであろうことを伝える。
 父は唇の端を曲げただけで、何も言わずに教室を出て行った。
 二十歳の成人式でも同じ表情を見た。それが感極まった時の父の癖だと、今のハルキは知っている。



2件のコメント

  • 最後!最後に泣かしに来るの狡いです!(大好きですありがとうございます)。゚(゚^ω^゚)゚。

    カクヨムコン通過、おめでとうございます!
    とっても大好きなお話なので、たくさんの同志が増えると良いなぁとワクワクしてます!
  • ボタン様☆

    こちらこそ読んで下さってありがとうございます!
    こういうお話が好きな方まで届けるにはどうすればいいのかなと考え、やはり露出を増やすしかないのかな、という結論に至ってコンテストに挑戦してみました。温かなコメント励みになります。同好の士に届きますように!

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