タイトルからもわかるとおり、「東京迷宮」シリーズの一作になります。
毎週金曜日の18時更新、全15回の予定。
読んでいただければわかるとおり、今回はかなり重い題材も扱っています。
主人公は七十過ぎのおじいちゃんだし、なろう受けはまずしないでしょうな。
書いていいて、いろいろとキツいところがある題材でもありました。
この作品は、わたしにしてみるとかなりの難産で、一度書いたテキストを自主的にボツにするということを、何度か経験しています。
原因はいろいろあるのですが、とにかく、書きにくい。
たとえば、
「自分が直接的な被害にあったわけでもないのに、震災とか被災者のことを題材にして小説を書いてもいいのだろうか?」
という疑問は終始頭の中にあったわけですが、執筆中に鳥取とか熊本のあれがあり、東北とか北海道方面で例年にない台風被害がありで、
「日本に住んでいる以上、こうした自然災害は誰の身にでも降りかかるような、普遍的な現象なのだ」
と無理に割り切って書き続けることにしました。
このことについては、批判は当然出てくるものと予測していますが。
あと、方言の扱いなんかも。
主人公は軍司の経歴から考えると、かなり訛りが強いはずなのですが、それをそのまま表記してもほとんどの読者は理解できないでしょう。
ということで、作中ではあくまで「ある程度雰囲気を残しただけの標準語」として表記しています。
これについては、軍司や静乃の出身地を特定の場所に固定したくはなかった、という意図もあるのですが。
わたし自身は東京生まれですが、両親がともに東北の、それもかなり訛りがキツい地方の出身なので、「ズーズー弁もどき」でセリフを書くこと自体は、十分に可能ではあったのですけどね。
とはいえ、もどきはあくまでもどきであり、本番のネイティブの方からみれば不自然な点が多々ある代物にしかならないであろうから、現在の仕様にしておいた方が無難だとは思いますが。
最初のうちは短編か、あるいは中編くらいの長さでさらりと流す予定の作品でしたが、実際に書き出してみると想定外に面白そうなネタが多く、ずるずると長くなっていった作品でもあります。