不気味な風が唸る 赤い鮮血色に月が染まる
遠い時代 古き時代 昔々に無残に殺された兵ども(つわもの)がやって来る
海の底から
あるいは大地の奥から白い砕けかけた骨の手が無数に あって 地上へと
手を伸ばす ゆっくりと白い骨 その手を伸ばしてゆく
彼等が身にまとうは 昔々の
あの頃にまとった鎧装束 戦支度の壊れた物ばかり
大勢の者達 唸り声は 怨念の声か 嘆きの声か 恩讐の悲鳴ばかり
惨い絶叫の悲鳴だった
あの時 大戦(おおいくさ)で血に染まった あの時の海 青を赤に染めていった
海は また再び記憶を辿るかのように 赤く 鮮血の色に染まってゆく
静かに染まってゆく 染まってゆくのだった