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  • SF

 冷える夜、誰もいない道を背を丸めて帰宅を急ぐ。
 街灯の下でふと後ろに気配を感じて振り向くと、アスファルトの道路の上、街灯が落とす光の輪の中に小さな盛り上がりが居た。
 そいつは小さくチィィィと鳴いた。

 物語の芽である。
 恐怖の始まりを予感させるようなイメージ。その背後に眠る長く恐ろしい物語。
 だがそれは形を取る前に無駄な思考の奔流に押し流され、拾われることもなく消え去ってしまった。
 もったいない。また帰って来ておくれ。
 それまで私はこの街灯の下で震えながら待っているから。

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