没部分をひっそり供養(22話終盤部分

※大分今更ですが丸々カットした文章を供養しておきます。
※文章ベタ貼りだからルビとか強調部分の処理とかそのままですん。






お師匠の元でお世話になって半月程度。
いよいよ明日はお別れ――霊峰を下りる日だ。

いやー、なんだかんだ言って濃密な時間だったね。
鎧ちゃんの変化に始まり、連日の稽古と続いてアホ共の襲撃まで、より取り見取りのイベント目白押しだった。

最終的には、収まるべき処に収まった感があって何よりです。
お師匠的にも、ずっと昔に亡くした家族の|牙《かけら》が戻って来たというなら……それはきっと良い事なんだろう。
俺の方もマイラブリーバディのデレを知ることが出来たし、連日の稽古のおかげで《三曜》の扱いも少しばかりマシになったし、悪くない成果だ。

だが。
だからこそ、この日の内に、最後の夜の内に片付けておかねばならない案件がある。

夕飯を終え、終始和やかに談笑して時間を過ごした後。
後は風呂の準備を始めるか、という辺りで、自室に戻ろうとしていた師匠を俺は呼び止めた。

お師匠、お話があります!

「……なんでしょう? どうかしましたか?」

幸いと言って良いのか、リアは今晩のみ屋敷に宿泊することになったガンテスを客間に案内するのを買って出て、今ここにいるのは俺と師匠のみ。
ならば、此処で話を切り出すのは当然だった。

思いつめた真剣な表情をしているであろう俺を見て、お師匠は不思議そうに小首を傾げる。
いつも通りの彼女だ。ひょっとしたら俺は、余計というか無粋というか、無理に蒸し返す必要のない話題を掘り起こそうとしてるのかもしれん。

だが、言わねばならん――それが筋だというのもあるが……後が怖いから!

俺はその場に素早く膝を折って身を伏せると、両の掌を地面につき、額を屋敷の床へとたたきつけた。



――|セクハラ《お尻ダイブ》かまして、大変に! 申し訳ありませんでしたァ!!



渾身のDO☆GE☆ZAを決めて、誠心誠意の謝意をぶつける。
結果的には助けた形になったけど、それ以上にやらかしたからね、仕方ないね(白目

「…………」

額を床に擦りつけているので、お師匠の表情は分からない。
でも無言が怖い。実は怒ってたりしたらどうしよう、考えただけでポンポン痛くなってきた(逃避感

ペシっと。

俺の床にたたきつけた頭部に向けて、軽く手刀が落とされる。
力も何も籠ってない、子供がするようなソレに頭を上げようとすると、それを遮る様に、連続でペシペシと手刀でたたかれた。

「……忘れなさいっ」

頭上から降ってきた声に込められていたのは、羞恥と、それを誤魔化すような――女の子が恥ずかしい思いをして怒ったみたいな、威の伴わない《《普通の》》怒り。
予想だにしない反応に困惑しつつも、それだけ嫌な思いをさせてしまった事に今更ながら罪悪感と申し訳無さがモリモリ湧いてくる。

いや、もう……この度は弟子にあるまじき行いをしてしまい、まっこと申し開き様も無く……!

再度、より心を込めて謝罪すると、連続ペチペチが更に加速した。

「私はもう気にしてないですから、とにかく忘れなさいっ……!」

いや、でも、そこまで嫌がる事をしてしまった身としてはキチンと……。

「――っ、別に嫌という程でも……あぁっ、もう、とにかく忘れるのっ!」

聞いたことの無い、ちょっと声を荒げるような、慌てる様なお師匠の声に驚いて、今度こそ顔をあげる。

目に映った、彼女の表情は恥ずかしさを堪えるように、口元を強く引き結んでいて。
その顔は頬を通り越して、耳まで真っ赤だった。
羞恥心を大きく刺激されたせいなのか、その不思議な光彩を放つ龍眼はちょっと潤んでいて――ぶっちゃけなんか艶っぽい。

セクハラしたことを謝罪しておきながら、我ながら懲りない思考が頭を掠めるが……それよりなにより予想外過ぎるお師匠の表情に呆気に取られていると。

視線を数瞬、合わせた後、慌てたように目を伏せるとお師匠は最後にもう一度、俺の脳天をぺちんと力なく叩いた。

「とにかく、この話は終わりです。いいですね? もう話題に出さないこと」

あ、ハイ。すいませんでした……。

「――よろしい」

なんというか。
以前までは、いっそ植物じみた超然とした存在感を強く感じたお師匠だったが。
最近のリアとのやり取りや――今の表情を見ると、人間臭いを通り越して普通の女の子にしか見えなくて。

けれど、何となく……この変化はきっと良い事なんだろうと、そんな風に思ったのだった。




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