ゆきさめ

世界というのは、すなわち壺の中のようなものであり、つまるところ蟲毒と通ずるものがあるのではないか。女王だきにと、その従者きりんと世界の話。

仕事の昼休みに屋上で空を見上げる男と、男の言葉に耳を傾ける一羽。自由がどこにあるかと疲れ切った男と、「カラス」としての姿を当てはめられてしまう一羽の話。

二人で一つ、表裏一体、幸せという形はなんであるか、星を売ってあるいは星を買って、彼らは眠る。

天気雨に濡れる子狐と、青年の話。

赤いリボンが似合う少女は恋をする。

一糸乱れぬ隊列を組んで、それはどこまでも続くように思われた。

愛とはなんぞや、母の体温も知らぬ。 「とが」を説く幼子の声がする。

旅立ってしまう「せんせい」へ向けて、文人は筆をとった。

自主企画「偽教授杯　絵画に基づく競作小説コンテスト」に参加させていただきました。川瀬巴水 の『七里ヶ浜』を題材としています。

とある男が目を覚ますと静かな川辺であったという。

雨の日、海と空のその先を視る人は何を思うのか。

小鳥の一座が山を越えてやってくる。 駒鳥が踊る小鳥の一座は、厳しい山を越えて、やせ細った閉塞的な村にやってくるのだ。舞い戻るのだ。

青い湖畔に住まう少女が恋をした浅葱の色をした青年。 恋なのか本能なのか、蘭に似た姿をした少女は花蟷螂である。

月を見上げて、月に還ることを願う小さなこども。 微かな呼気がついぞ途切れる、その間際の話。

生きることは病である。眠りが十六時間ごとにその苦しみを軽減してくれる。眠りは一時的な緩和剤であり、死は特効薬である。 セバスチャン・シャンフォール 「格言と省察」より引用 …

桃だけで育てられた美しい娘は、金持ちの道楽で買われるという。男はとっくに初老を過ぎ、もう棺桶に半身を突っ込んでいる頃だが、これはその男と買われた桃の話。