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昼は短し食い倒れよ少女

 世の中には不思議な存在がいる。自分で言うのも何だが、私もその1人。何が不思議って仕事の休憩がてら訪れる飲食店の多くでサービスをしてもらえる。今日の昼なんかオマケの品が2品もついてきた。それもカリッカリに揚げた牡蠣に高級デザート、パッションフルーツ。頼んだのはランチメニューの串6種盛り定食850円なのだが、普通は串の種類がお任せのところを我儘言って食べたいものだけを詰め込んでもらった。このランチのお得なところはご飯も味噌汁もおかわり自由という点。もうこれだけでだいぶお得なのだが、その上でのサービス品。価格崩壊も良いところだ。牡蠣に歯を立てると衣のカリッという音と共に牡蠣のあの旨い汁がジュワリと染み込んで顔が綻ぶ。熱くて『はふはふ』しながら食べる牡蠣は最高だ。こんな時は数年前のことを思い出す。
 クリスマスの日、私はメイクをして、お洒落をして東京をうきうきと歩いていた。普段のデートならメイクどころか服装も手抜きなのだが、クリスマスというものは女子を可愛くさせてしまうものらしい。そういうわけでその日の私は普段の何割増しか可愛らしかった。
 私が歩けばサービスに当たる。たまたまやっていたヘアアレンジの移動式車のメイクさんに呼び止められ、無料でヘアアレンジをしていただいた。天使の出来上がりである(ナルシストここに極まれり!)。そうしてはしゃぎながら歩くと今度はワインの試飲をやっているではないか!スタッフさんに呼び止められて思わず立ち止まり一口。「美味しい〜!」と笑うと中央の席へと案内される。あ、しまった、これ、契約させられるやつだ。やらかしたなぁなんて思っていると次々とワインが運ばれてくる。その上、「好きなだけお飲みください」なんて言うではないか!わけもわからず大喜びで美味しい、美味しい、と高級ワインを次々と試飲。ふと見渡すと私の周りのテーブルで次々とワインの契約が決まっていく。なんてことはない、そう、私という客寄せパンダが誕生していたのである。彼氏と「有紗が可愛くて得したね」などという甘い会話をしたりしなかったりしながら私の中で『クリスマス=美味しいワイン』となっていった。
 どの店に行っても心配になるくらいの丁寧な接客にサービス品。某ラーメン屋に至っては休日に無料で素麺や天麩羅をお出ししてくれたし私は完全に利益クラッシャー。しかも周りにお客さんがいて私が客寄せパンダになれているなら良いのだが、なにぶんコロナで人がいない時間帯を狙っていくのでいつもガラガラ。私のせいで店が潰れたりしないだろうか、なんて一抹の不安に駆られて昨日思わずスペイン料理店のカウンターで口を開いた。
「わー、嬉しい!でも、こんなに良いんですか?」
 料理人が笑っていた。
「いやぁ、君、すごく美味しそうに食べるからこちらもつい……」
 無意識だった。びっくり。
 言われてみれば美味しいものを食べているといつも私は顔が綻んでいる。美味しいから笑顔になる。これはもう反射的なものなのだが、サラリーマンの多い都内では駆け込みで表情ひとつ変えずに食べて去っていく人も多いのだろう。料理人も大変ということか。(……私が美人だからとかそういうことではなかった笑)
 今日の串盛りもペロリと完食。店長の言う通りパッションフルーツは種を噛まずに果汁と共に飲むと最高に美味しい。はー、と幸せな息をつきながら私は笑う。
「美味しかったー!ご馳走様!」
 店長が嬉しそうに笑う。これからも食欲に素直に笑顔でご飯を頬張っていこう。

★写真は川越で冷たい抹茶をいただいたときの写真。ご馳走様でした!

1件のコメント

  • 近況ノートに出てきた店名は質問があればこっそりお伝えします(簡単に教えて流行って私が行けなくなったら嫌なので……笑)
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