• 異世界ファンタジー

毒狼と桃血 あとがきなど

 この記事は拙作、『毒使いの殺し屋は幼女の騎士に転職する――毒狼は桃血の乙女と眠る――(https://kakuyomu.jp/works/16818093086956105641)』のあとがき兼、裏話などの小ネタ解説をする内容となっております。
 未読の方は、こちらを先に読んで下さいますと幸いです。


■本作を創作するきっかけについて

 前作、前々作は、いわゆる異世界ファンタジー小説のテンプレートをそのまま持ってきたような作品だったのですが、だんだんと小説創作にも馴れてきた為、今作は思い切って、王道ではあるけれど、人気作のテンプレートを継ぎはぎしたような展開ではなく、自分が面白いと思うストーリーで、最初から好きなように執筆した作品になりました。

 とは言いますが、一応本作を書くきっかけとなった小説も、あるっちゃあります。
 それは『テスカトリポカ』という作品です。
 この前直木賞受賞したので、知っている方は多いかと思います。
 名作なので、まだ読んでない人は読もう!

 テスカトリポカのあらすじをざっくり説明すると、アステカ文明の末裔のマフィアが、薬物を売ったり臓器を売ったりするクライム/ノワール小説です。
 本作品にも違法薬物が登場しますが――どちらかというと、クライム要素よりも、スペイン語のルビを多用する要素を格好いいと思ったため、本作品も、ルビを多用しつつ、スペイン語と英語のみで技名の命名などをしました。

 スペイン語と言えば――『BLEACH』のアランカル編も大好きなので、そちらからも非常に影響を受けたと明記しておきます(コイツいつもBLEACHに影響受けてるな)。

 ただ――私は造語の固有名詞や、技名などに、言葉遊びを含めるのが好きな反面、スペイン語は馴染みがないために、そういった遊び要素を殆ど入れられなかった点を少し後悔しています。
 しかし――読者の方的にも、スペイン語は英語と比べ聞き馴染みがないために、直訳でもそれっぽく聞こえ、はったりを利かせられたのではないかな? ――と思っております(打算!)

 あと、スペイン語の勉強をして気付いたのですが、もしかするとスペイン語は英語よりも覚えるのが簡単かもしれません。
 母音が日本語同様5つしかないのと、スペルもローマ字読みでだいたい発音できますし。

 それでいて響きも格好いい――凄い……凄いぞスペイン! いつか行きたいものです。
 サクラダファミリアとか見たいですし(南米のスペイン語圏は治安的に行く勇気がないです……)。


 ――話が大筋から逸れてしまったので、閑話休題。


■テーマについて

 私はライトノベルやウェブ小説に一丁前にテーマなどを考えても、創作の枷になってしまうと思っているタイプなのですが――一応あります。

 一言で表すなら『自己犠牲』です。

 人体を活動させるのに必要不可欠で、生命の源とも呼べる血液を、他者のために分け与える――それも、自分の生命活動に支障が出かねないまでに。
 作中で若干触れましたが――童話『幸せな王子』のような作品にしたかったのです。
 あとはアンパンマンですね。

 死ぬことが確定している少女が――死ぬ前に1人でも多くの人を助ける物語。
 それが例え――原因の根本的解決にならなくとも、目の前で救いを求める人間の手を拒む理由にはならない。
 最近流行りの冷笑文化に異を唱えるような、そういう思いを少しでも感じ取って頂けたのなら、作者冥利に尽きる限りでございますm(__)m

 アンパンマンもパトロール中にお腹を空かせた子供にあんパンを分け与えますが、「そのパトロールの労力で誰もが飢えずに済む社会システムを構築するのに尽力した方がいいんじゃない? それは偽善だろ?」みたいなニュアンスを、最近はインターネットでよく聞くようになりました。
 でも彼のやっていることは偽善などではなく、そういった近年勢力を伸ばしてきた冷笑文化に対して、ちょっとした異を唱えなたかったのかもしれません。

 結果的に本作のヒロイン、メロちゃんは、地道に自分の出来ることを1つづつこなしていった結果、最終的に問題の根本的解決に導けた訳ですし。


 あと、貴種流離譚をやりたかったというのもありますね。
 ただ優しいだけの世間知らずの高貴な血筋の少女が、命を狙われ地下へ逃げ、様々な人と出会い、問題と直面し、悩み、傷つき――そして成長する。
 なので――本作品の主人公はもしかすると、ロボではなくメロの方だったのかもしれません。


■キャラクターについて。

 この項では――各キャラクターの小ネタや裏話などを語っていきます。


・ロボ・ベレニハーノ
https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/16818093087207714954

 本作品の主人公です(語り部的な意味で)。
 白髪白目と革のコート、武器はノコギリという出で立ちの主人公です。
 そっけないけど素は甘やかし癖のある、優しいお兄ちゃんをイメージした性格にしました。
 これまで黒髪主人公ばかりだったので、今回は白髪にしてみました(コートの方は今回も着せてしまいました笑)。

 中国の伝統的な呪術――蠱毒を肉体に施された――と何度か描写していますが、実際に行われている蠱毒とは若干の相違があります。
 コンセプトを決めてから蠱毒について調べたら、蠱毒の本質はイメージしていたものと違ったのですが、まあ正確さよりも面白さ優先だろうと思い、押しとおしました。

 名前の由来は、ロボはスペイン語で狼という意味。
 苗字の方は茄子のスペイン語ベレンヘーナを少し文字ってベレニハーノと命名しました。

 ちなみにベラドンナという毒草があるのですが(本作にも同じ名前の魔物が登場しますが)、その和名が『オオカミナスビ』というので、狼であり、毒である。
 故に毒狼――といった意味を込めて命名しました。

 コイツの異名――《毒狼(エル・カラベラ)》のカラベラは髑髏という意味です。
 毒狼→DOKURO→髑髏といった感じです。
 あと〝エル〟(スペイン語の男性名詞に使う冠詞)ではなく〝ラ〟(スペイン語の女性名詞に使う冠詞)が正しい表現なのですが、ロボが男なのであえてエルを採用しました。

 一応エル・カラベラというスラングもあるそうです。
 意味は悪い意味で自由奔放――といったニュアンスですが、主を勝手に変える程度にはロボも自由なので、良い感じにダブルミーニングになった気がします(本当か?)


 能力自体はチートなのですが、いかんせん戦闘能力が割と低めなので、毎回ボロボロになってます――ロボだけに(は?)



・メロコティーニャ・ルシア
https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/16818093087048282393

 本作のメインヒロインです(かつもう1人の主人公)。
 彼女も前述の蠱毒と同じく、中国の伝承である桃娘をコンセプトにして作成しました。
 まあ――実際に中国には桃娘の実在を裏付ける文献はなく、割と最近に日本人が考えた都市伝説という説が有力なのですが……。

 細かいことには目を瞑りつつ――蠱毒と桃娘、どちらも中国文化を土台としながらも、真逆の性質を持つコンビがタッグを組むのは面白いのではないか? と思った次第です。
 ちなみにメロの髪の毛がピンク色なのは、桃を食べ過ぎたせいです(笑)。

 私は育ちの良さや、世間知らずからくるお嬢ちゃんお坊ちゃん特有の善性が好きではないのですが(育ちが悪いので)、実際育ちの良いお嬢ちゃんお坊ちゃんってすごい人誑しなので、会話してると好きになってしまうんですよね(チョロい)。
 そういうのを、ロボとメロで表現しようと思いました。

 また同時に、育ちの良さからくる世間知らずな女の子が、現実の厳しさに絶望しながらも、それでも立ち上がり――当初の理想を初志貫徹する強かさに眩しさを覚える癖があるので、メロコティーニャの成長物語として、その辺はうまく書けたのではないかと自負しております。


 これは裏話ですが――メロは当初男の娘という設定でした。
 でも流石に男と男がずっとイチャイチャしてるのは、作者的には嬉しいのですが、読者の方的には、ストライクゾーンを狭めてしまうと判断し、泣く泣く女の子にしました(涙
 でも書き進めていく内に――ショタにはないけどロリにはある特有の可愛らしさや、兄妹を思わせるイチャイチャシーンを沢山表現出来た気がするので結果オーライでした。
 踏みとどまってくれてありがとう過去の自分!

 名前の由来は――メロコティーニャはスペイン語の桃(メロコトンmelocoton)を名前っぽく文字って命名。
 苗字の方はキリスト教観で光という意味を示すルチアのスペイン語読みです。
 つまり作中に出てくる宗教組織ルナルシア月教は、月光という意味が込められています。



・ローザロッタ・ロメロペス
https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/16818093087093696668

 メロの世話役である金髪ポニーテールの女騎士です。
 教会に籍を置く騎士でありながら、その信仰は神ではなく組織(つまりは人間)に向いていることを自覚し、その乖離に苦しむキャラクターです。

 私の中の宗教観に、仏教の教えは素晴らしいが坊主は憎い――みたいな潜在意識がありまして、その辺が表層化した節があります。

 ウェブ小説の流行を見る限り――敵から味方に改心するキャラクターは、手の平返しと解釈されて受けがよくないと思っているのですが、これもまた成長の物語であり、何より私がそういうキャラクターが好きなので、露悪的だなと思いながらも、味方キャラとして書きました。

 個人的に目上の者に使う最上敬語表現を調べながら書くのが大変でした。
 でもそれだけ、君主に忠実な女騎士っぽさの説得力が出たような気がするので、頑張ったかいがありました(笑)

 名前の元ネタはなく、これは完全に口にしたときの気持ちよさ、語感で決めました。
 ローザロッタ・ロメロペス(Rosalotta=Romerolopez)――LとRが沢山入っていてややこしいけど、口ずさむとどこか気持ちいい響きがある――と作者は思ってます。


・ミリャルカ・ルシア
https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/16818093088149913789

 本作のラスボスです。
 最後に倒したキャラクターはホセですけど――あいつはまあ消化試合みたいな所があったので……。
 自分の血を操ると同時に、自分の血を一滴でも飲んだ対象の血液も操ることが出来るチート能力持ちです。

 名前の由来は吸血鬼伝説で有名な女吸血鬼、カーミラの別名マーカラの文字りです。
 マーカラ(Mircalla)→ミリャルカ(Millarca)みたいな感じです。

 自分の美貌を永遠のものにすることを執着したキャラクターが、最後は醜いバケモノのような姿に成り果てて死ぬのは、因果応報で良い感じに無様さを表現できて良かったと思ってます。

 彼女が率いる聖血(サングラダ)騎士団のサングラダは、血(サングレ/Sangre)と聖(サグラダ/Sagrada)を組み合わせた造語です。
 絶妙にスペルが似ていたので、うまい具合に組み合った気がします。

 ついでに彼女が生活している大聖堂(カテドリアル)は、大聖堂(カテドラル/catedral)と王の〇〇を意味する(リアル/real)を組み合わせた造語です。
 王が住む大聖堂、みたいなニュアンスです。

 造語が多すぎて自己満足感が強い世界観になってしまったとは自負してますが……ちょっと楽しくなってしまい(焦

 ちなみに教会(イグレシア)と奴隷(エスクラボ)と殺し屋(シカリオ)はスペイン語の直訳です。



 ――ここからサブキャラ



・ソフィア
https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/16818093088421752590

 ダンジョンの中で生活する集団、ピエドラドの里長補佐です。
 個人的に石礫を楔に成形し、トンカチで叩いて飛ばす戦い方がお気に入りです。
 効率は非常に悪いですが……そこはロマンということで……。

 コイツは一瞬で石材を、想像通りに組み立てられるチート能力持ちです。
 NARUTOで木遁を使って一瞬で家を建てるシーンから着想を得ました。
 素材さえあれば城塞も一瞬で築きます(強すぎる……)。

 名前の由来は特にないです。
 ソフィアには知恵という意味が込められていますが、特に意識はしていません。
 元々ソフィーという名前にしようと思っていたのですが、スペイン語読みだとソフィアになることを知って、その辺を整えた程度です。


・レオナルド
https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/16818093088543993633

 超巨大な斧を使うピエドラドの里長です。
 コイツは元々、メロが怪我を治した恩を売って、ピエドラドの里の一員になるイベントを消化するために作ったキャラだったのですが、書いていく内に濃いキャラになりました。
 単純な戦闘能力なら作中最強で、騎士団を単騎で殲滅させるくらい強いです。

 名前の意味はレオニダス、ラインハルトと似たニュアンスで――「ライオンのような」みたいな感じの意味です。
 ライオンってアフリカや中東の温かい場所にしか生息していないのに、それでもヨーロッパ圏で力強い生物の代表、みたいなシンボルに多用されるの面白いですね。


・ザイン
https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/16818093086962578464

 主人公の元主人1です。
 コイツはマジで思い入れないです。
 でもまあ、今作は違法薬物の密売を作中に取り入れようと思ったので、とりあえずマフィアのボスみたいなのを作りました。
 これを書いている前に丁度ゴッドファーザー2を見ていたので、少しマイケル・コルレオーネにっぽくなった気がしますが――そんなこともなかった気がします(どっちだよ)。
 いや、よく考えたら全然似てないな……。

 まあ、ゴッドファーザーの乱暴なタイプのマフィアっぽいのは確かです。


・ホセ
https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/16818093086969159017

 主人公の元主人2です。
 正直ホセがいればザインはいなくてもの物語は問題なく成立していたのですが、知的探求心を満たすのを第一にするホセが、1人で魔薬密売組織を切り盛り出来るイメージがわかなかったので、別途ザインというキャラクターを用意した感じです。

 喋り方はBLEACHの涅マユリまんまですが、最後はマユリ様ではあり得ないくらい無様に死にました。


・クエル
https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/16818093089388724468

 ローザロッタの部下。
 聖血騎士団の副団長です。
 ローザロッタと若干似ていますが、ローザロッタが根本に忠義からくる加害性を持っているのに対し、コイツの加害性は自分の保身のためでしかない小心者といった感じのキャラクターです。

 でもそれなりに強いです。
 名前はカラスのスペイン語、クエルボから末尾を抜いてクエルです。



■おわりに

 だいたいこんな感じです。
 散文悪文で申し訳ない限りですが、一通りの小ネタ集などを書かせていただきました。

 本作は書いてるときは楽しかったのですが、ウェブ小説のニーズとはかみ合わなかったのもあり、芳しい評価は頂けませんでしたが(自分の実力不足に対する言い訳に読者を利用するな)――各キャラの心情が物語が進むたびに変化したり、大きな問題を1つずつ解決していったりと――書いていて面倒臭いプロセスを、最後まで書き切ることができ、創作能力を鍛える良い経験になったと前向きに捉え、次回作に生かしていこうと思います(本当書くの大変だったんだよ……)。


 次回作の予定は未定ですが、縁が巡り合い、私の紡いだ物語がまたいつか、優しい読者の方の目に止まることを月に祈って――ノシ

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する