みなさん、お久しぶりです。そうです、名無之です。
知らないですか? では、初めましてですね。二人組の作家ユニット「名無之権兵衛」の執筆・渉外担当の名無之です。ここでは、僕ら二人が読んだ本の感想を記していきます。
知っていたけど忘れた? なら、思い出してください。
それではやっていきましょう!
あらすじ:7500万円の横領金を資本に、銀座のママに転身したベテラン女子行員、原口元子。店のホステス波子のパトロンである産婦人科病院長楢林に目をつけた元子は、元愛人の婦長を抱きこんで隠し預金を調べあげ、5000万円を出させることに成功する。次に彼女は、医大専門予備校の理事長橋田を利用するため、その誘いに応じるが……。一方、元子を恨む波子は楢林と別れ、大物総会屋をパトロンにクラブを開く。政治家秘書の安島を通じ、医大の裏口入学者のリストを手中にした元子は、橋田をおどし、一流クラブ、ルダン買取りの仮契約を結ぶ。しかし、橋田、安島らの仕組んだ罠が元子を待ち受ける。安島との一夜での妊娠に怯える元子の前には黒服の男たちが……。
おすすめ度:中の上
僕にとっては初清張でした。上下2巻という長編でなかなか読むのに苦労しましたが、会話文多めで、淡々と事実のみを積み上げる文体は非常に読みやすく苦ではありませんでした。二、三回ほど長い回想があって必要かと思いましたが、連載ものだという事で納得しました。
一つ感心したのは、物件の値段や塾の費用などかなり具体的に書いていたところです。これは作者の綿密な取材による賜物でしょう。推理小説を十八番とする彼だからこその芸当です。
加えて、視点を途中から元子一人に絞っているところから、他の人物の感情を元子の主観で描いています。そのため、連続の勝利で陶酔しきった女性が見た短絡で楽観的なものの見方が見事に描写され、騙されたとわかった時の衝撃をより大きく演出していました。
ここまで細かく物語を構築したのには感服しました。すごいです。見習わなければ。
というわけで、僕は十分「上」の評価だったのですが、権兵衛からは「中だるみが見逃せない」とのことでおすすめ度は「中の下」になりました。しかし、確かに分量は多いので、文芸書に慣れている人にしかお勧めできません。
今回は文体でもかなり参考になりました。僕はこれまでキングや漱石のような婉曲的で上塗りするような文章の表現を目指していたのですが、下手に重ねてしまったせいで脂ものを食べた時のような胸焼け状態になっていました。
しかし、この小説の文章は端的に感情や思考、会話だけが描かれていて、さながらさっぱりとした塩ラーメンのような味わいで、こちらも悪くないと思いました。
次回作はこちらで挑戦してみようと思います。
というわけで、今回はここまで。
次は一週間後か二週間後になりますので、末長くお待ちください。
それじゃ!