戦国の世から100年――宝永大噴火を幕開きとして、日ノ本は再び動乱の時代を迎える。
地獄へ通じていたのだろうか、歴史上類を見ない大噴火は火山灰だけでなく、夥しい数の妖を生み出した。その邪気は妖壊滅後も日ノ本を漂い、人々の心を侵食していった。この混乱に乗じ、朝廷は西洋の強国を後ろ盾に、倒幕の兵を挙げた。
邪気に侵された者を救う組織『鴉天狗』のもとで育った影狼はある日、半妖の武蔵坊、義兄の幸成とともに「侵蝕を止める」誓いを立てた。しかし朝幕の争いが激化する中、鴉天狗は妖の軍事利用を進める妖派と対立。幕府からも軽視されるようになる。そして遂には妖派との武力衝突が起こってしまう。この騒動で幸成は命を落とし、幕府・妖派から追われる身となった影狼は、武蔵坊とともに武蔵国へ逃亡することとなった。
逃亡中、影狼たちは南国メランからやって来た親子と巡り合う。鴉天狗に未練のあった武蔵坊は「故郷に戻る」と告げて鵺丸のもとへ向かった。思いがけずメランの親子と旅をすることになった影狼には、妖派の追手が迫る。
☆登場人物・用語
※若干ネタバレが含まれます。先に第十話までを読んでから見ることをお勧めします。
《主な登場人物》
*武蔵坊
人の姿をした妖怪。母は人間、父は……。本作第二の主人公。
*鵺丸
鴉天狗の代表。かつては殲鬼隊の一隊長を務めたことがある。
*源幸成
鵺丸の腹心。父は殲鬼隊で殉職している。影狼の義理の兄。
*影狼
主人公。元殲鬼隊の父を持ち、訳あって源家の里子となっている。
*ヒューゴ
南の島国、メラン諸島からやって来た生物学者。
*ヒュウ
ヒューゴの息子。
*梅崎勝正
甲斐国、来方家の家臣。逃亡した影狼たちを追う。
*來(らい)
梅崎と同伴の少女。その身体に妖の力を宿している。
*上江洲誠
鴉天狗の幹部。偃月刀を扱う。
*村正
鴉天狗専属の刀鍛冶。妖刀を数多く製作している。
*山梔子
月光の忍。とある任務を受けて幸成宅に侵入する。
*唯月
月光のくノ一。鵺丸の命令で武蔵坊を探していた。
《主な用語》
・殲鬼隊
大噴火で大量発生した妖怪を殲滅した剣豪衆。朝廷の挙兵により解散。
・鴉天狗
侵蝕人の救済を掲げる組織。代表は鵺丸。
・月光
鴉天狗と契約を結ぶ忍衆。
・妖派
妖の軍事利用を目論む、幕府の一派。
・メラン諸島
日ノ本の南にある島国。西洋人が移り住み、高度な文明を持つ。
・皇国
朝廷勢力。西洋の強国を味方につけ、王権復古を目指す。
※基本用語解説もご参考に。