タイトルのとおりです。レビューとなると、肩に力が入って気取った表現になってしまうので、思ったとおりの感想をちょろっと。もしかしたら、ネガティブな意見も出してしまうかもしれませんが、それはご容赦を。
【 煉 獄 螺 旋 】 ボンゴレ☆ビガンゴ様
ビガンゴさんの作品は大好きで、結構な数のレビューを書いていると思う。その味わいはよくわかっているつもりだったが、今回は面食らった。初読の時は何が何だかわからなったし、今でもわからないところがあるが、それが強烈な魅力になっていると思う。不条理系が苦手なのに、最後まで読まされてしまった。筆力の高さを感じた。
悪食ーあくじきー 榮織タスク様
現代の闇に潜む歪んだ存在を書かせたら、際立った能力を発揮する作者の方が、その能力を存分に発揮していた。世界観が本当に素晴らしくて、それが最期まで読みつづける原動力となった。
ただ、おじさんとしては、闇堕ちする弌藤さんは見ていて、切なかった。マスコットとして、何も知らない能天気な青年であってほしかったよ……。
独狼~念真流無間控~ 筑前助広様
時代劇の作法に則った、本格時代小説。導入から展開、転機、終末に至るまでの完成度の高さには圧倒された。プロットに大きなひねりはなく、一直線なのであるが、それ故の力強さがあった。逆に、自分の作品が時代小説の作法から逸脱していることを実感させられた。すごかった。
個人的な希望を言わせてもらえば、ほんの少しだけ彩りが欲しかった。供に旅をする仲間がいるのだが、そこに笛の名手がやさしい楽曲で場をなごませたり、料理得意の人物が野宿の最中にも得意の魚料理をふるまったりすれば、作品に潤いが出たし、彼らを失った時に喪失感の大きさを読者に感じさせることができたかもしれない。
瑞穂國に花も黄金も咲きぬれば 秋保千代子様
正直、こんな書き方もあったのかと驚かされた。舞台は史実でいうところの戦国末期なのであるが、アレンジが巧みで、知っている者からすれば、あの人物はああで、舞台設定はこのあたりかとわかって楽しめるし、逆にいえば、まったく知らなくとも作品に入っていける。
あまりにも設定がよかったのだが、史実を感じさせる人物がもう少し出てきてくれればと思ったほどだったが、実際に出てきてみたら、それは蛇足だと思ったかもしれない。
あと、万丸はわかっていても、たびたび、音読みしていた。いや、何かかわいいので。
御伽術師 花咲か灰慈〈長編版〉 乙島紅様
水川さんに冷たい目で見てもらいたい。罵ってくれたら、思わずありがとうございましたと言ってしまいそう。それほどまでに魅力的な登場人物。彼女に限らず、作中に出てくるキャラの造型が巧みだった。それが細やかなな描写とあわさって、作品に彩りを与えていたと思う。
ほんの少し物足りなく感じたのは、普遍性か。ヒトにとって死とは何であり、この理不尽な事態がどうして起きるのかといった、多くの人が考えてきたことに、灰慈や、その周りの人物の考えから触れてくれれば、作品に広がりが出たように思える。でも、それをやると、この美しい物語を壊してしまうようにも思えるので、何とも言えない。何か無い物ねだりをしているような気がするが、それをつい書いてしまうほどの魅力がこの作品にはあったということで、ご容赦願いたい。
以上、だらだらと書いてきた。これが人の目に触れると思うと、いささか照れくさいがたまにはよいのではないか。せっかくのお祭りであるんだし。