二月は逃げると言いますが、皆さまにおかれましてはどのようにお過ごしでしたでしょうか? 自分は今年も逃げられました。
カクヨムコン、節分、バレンタイン、色々ありましたが気が付いたらもう末日。タイミングを逃し続け近況ノートの更新が今日になってしまいました。と言ってもいつも通り特別報告することはありません。とりあえず自分は元気です。
読みに来て下さる方、読ませていただいている方、毎度ではありますが本当に本当にありがとうございます。それとカクヨムコン大分経ってしまいましたがお疲れ様でした。連載中の作品は引き続き追いかけさせていただきます。
□桜々
連載中。今のままだと四月に突入しそう。出来ればペースを上げたい。
□鳥獣
書きたい話は溜まっている。ただ桜々を優先したい。
以下感謝の小話です。
ついに分割掲載になってしまいました。
二月のある日、道を歩く健一と薫。
唐突に薫が呟いた。
「こないだ冬将軍に会ってさ」
「え、冬しょ、え?」
「冬将軍」
「え、ん、えと、冬将軍って、あの?」
「うん」
「……(なんだこいつ凄え嘘吐くな)」
「なんか元気なかったんだよね」
「(面倒臭いしとりあえず泳がしてみるか)あー、そうなんだ」
「やっぱりもうすぐ春だからかな」
「まあ、そうなんじゃね、俺もどっちかと言うと冬が好きだから気持ち分かるわ」
「え、本当、じゃあ将軍の悩み聞いてあげてよ」
「あー、いいよ聞いてやるよ(笑)」
公園のベンチ、並んで座る三人。健一を真ん中に左に薫。もう一方に鎧武者のような恰好をした白い髭のでかいオッサン。
「あの、薫さん、この方は……」
神妙な面持ちで声を出す健一。
「冬将軍だよ」
「ウム」
薫の明るい声と将軍の重い頷き。
「居たんだ、本当に……」
「え、何?」
「うん、ごめん、なんか今、申し訳なさとか自分の愚かさとか凄い感じてる……」
「変なの。まあいいや。それでさ健一、将軍の話聞いてあげてよ」
薫は健一にそう言ったあと将軍の顔を見た。
「将軍、彼が相談にのってくれるって」
「本当デスカ。ありがとうゴザイマス」
「あ、ええ、まあ、はい。自分などがお力になれるか分かりませんが……」
「うんうん。じゃあ、あとは男同士お二人でってことで」
薫はそう言って立ち上がった。
「え!?」
健一の驚きの声は無視して薫が言う。
「あ、そーだ、将軍、あれお願いします」
「ウム」
将軍が頷いて健一に差し出したのは掌大の大きさの丸っこい木製の人形だった。
「な、何これ?」
「ワタシの故郷の民芸品、マトリョーシカデス」
「……あ、ロシア出身なんですね。へー……、日本語上手いすね」
「ニホンが好きデス」
「健一開けてみて」
「え、今? 開けるの?」
「ドウゾ」
「は、はい、じゃあ……」
言われるがまま薫と将軍が見つめる前で健一がマトリョーシカを一つづつ開けていく。
健一の横に段々背を低くしながら並んでいく人形。
そろそろ最後だろうと言う大きさになった時、中から人形じゃないものが出て来た。
小さな紙に包まれた飴玉のようなものが一粒。
それを摘まみ上げる健一。
「何でしょうか、これは?」
薫が両手を広げて笑顔で言った。
「ハッピーバレンタイン! 私の気持ち受け取って!」
「……チョコ?」
「そう、しかもこれお酒入り。ウィスキーボンボンならぬウォッカボンボンだよ」
「え、これ、え、全体的にこれどう言うこと? 今気持ちグチャグチャなんだけど」
「実は健一にサプライズを仕掛けたくて将軍に協力して貰ってさ。だから、はい、将軍にはこれ。ありがとうの気持ち」
「オー、アリガトウゴザイマス」
薫は将軍にも同じ物を一粒手渡した。
「じゃ、そう言うことなんであとよろしく」
そして颯爽と立ち去ろうとする薫。
「ええ!? 結局!?」
「将軍に協力して貰う代わりに相談にのるって約束しちゃって」
「相談のくだりは本当なの!? だったら自分で聞かなきゃ駄目じゃない!?」
「んー、私じゃ力になれなそうだったから。それに……」
薫は健一の目をジッと見つめた。
「健一、私の言うこと何も言わないで信じてくれて将軍の話も聞くって約束してくれたでしょ」
「ぅぐっ……」
ほくそ笑む薫。
「大丈夫だよ。健一なら絶対できるよ。ファイト。じゃ、私は遠くで見守ってるからね」
そう言うと本当に二人を残して薫は軽い足取りで公園を出て行った。
ベンチには鎧を着たでかいロシアのオッサンと健一。それとマトリョーシカ。
「トテモ可愛い彼女さんデスネ」
「はは、ええ、まあ。本当に、手に負えないくらいですよ、はは……」
将軍の言葉に対して、何処か虚しく健一の声が口からこぼれ落ちた。
感謝の小話、(前編)こんにちは冬将軍