お疲れ様です。
毎日寒いですね。
カクヨムコンも後半戦でしょうか、自分は書く方では結局参加できなそうなんですが、読むほうではなるべく読みたいと思っていて、いつもよりペースを上げて読んでます。応募されている方、最後まで頑張ってください。応援してます。
また、この期間でも変わらず自分のところに読みに来てくださる方、本当にありがとうございます。相変わらず更新頻度が遅く申し訳ありません。頑張ります。
□桜々
春までに最後までと思っているくせにペースが遅い。すみません。
□鳥獣
地味に続けていきます。10万字くらいになったら一度完結すると思います。今のところ月一ペースくらいなのかな。
□小話集
そろそろ始めるかも。桜々次第。ぬるっと始めたい。
以下、最近、長文化している感謝の小話です。
一月の休日、神社の前で待ち合わせ。
先に来ていた健一を見つけて薫が声をかける。
「あけましておめでとう」
「おー、おめでとさん」
「人凄いね」
「な」
境内は初詣の客で賑わっている。
「ま、とりあえずお参りするか」
と健一。薫がそれに頷いて二人は人波の中へと歩き出した。
参拝が済んで境内を歩く二人。
「健一、何お願いしたの?」
「ん、まあ、とりあえず健康と世界平和?」
「何それ、つまんない願いだな」
「いや、大事なことだろ。そう言う薫は何願ったんだよ」
「何か面白ことありますようにって」
「いや、どうなんだ、それが願いって」
ふと薫が境内の一角に人垣が出来ていることに気が付く。
「なんだろ」
近付き薫が覗き込んだ先では、タンクトップに短パン姿のマッチョの男衆が体をぶつけ合い声を上げていた。
「うお、なんだあれ、かかわらないようにしようぜ。あれ、薫?」
「あのう、これ何やってるんですか?」
「おいぃ!」
いつの間にか男衆の一人に声をかけている薫。
「ん? これかい? これは、おしくらまんじゅうサ」
答えるマッチョ。
「なるほど」
「なるほどじゃねえ! すみませんお邪魔しました、ほら、行くぞ薫」
「ごめん、ちょっと待って、興味あるから」
「ホウ」
興味と言う言葉に反応を示すマッチョ。
「はい、興味あるんです、彼が」
薫が健一の方を指差した。
「俺がぁ!」
「ホホウ!」
「違います! 興味ないんです! 薫!」
「彼シャイなんで」
「アッハッハ、照屋さんなんだネ」
「違いますって!」
「照れが凄いんです」
「なるほどネ」
「違います!」
「照れてる」
「アッハッハ」
繰り返すやり取り。
「ああ、もう、どうすりゃいいんだよ」
「あのさ健一」
薫は途端に真面目な顔になった。
「自分の気持ちに嘘を吐いて世界平和が本当に叶うのかな」
「…………いや、意味分かんねーよ!」
「まあまあまあ、話だけでも聞いてみようよ」
結局すぐに相好を崩す薫。
「はあ……、分かったよ、どうせそうするしかないんだろ」
「にしし、分かってんじゃん」
「で、えと、これ何やってるんでしたっけ」
健一は改めてマッチョに尋ねた。
「おしくらまんじゅうサ」
「……なんでそんなことを?」
「健康のためサ」
「ああ、健康ですか」
「凄い、健一と一緒だね」
「フム、やはり君には才能があるようだネ」
「薫! ごめん、余計なことは言わないで欲しい」
「健一君、我々は町内でスウェットと言うおしくらまんじゅうの同好会を組んで活動をしていル。良かったら君も入ってみないカ?」
「あ、いえ、結構です。てかこの町内そんな同好会あるんすね。引っ越そうかな」
「ライバルは隣町の同好会だヨ」
「隣町もかあ」
「まずはこれを着て準備体操ダ」
マッチョの隣で別のマッチョが白いタンクトップを見せてくる。
「着ない着ない、着ないです、凍えますよ」
「オヤ、寒いのかナ、ならばこれをどうゾ」
別のマッチョの隣でさらに別のマッチョが湯気の立ったジョッキを見せてくる。
「ホットプロテイン、これを飲めば体もあったまるし、バキバキになれるゾ」
「あ、大丈夫です、ちょっと胃もたれしてるんで」
「え、健一、大丈夫?」
「これ見よがしに入ってくんな! 大丈夫だし、どっちかって言うと胃もたれしてるのはこの状況にだ!」
「なるほど、胃もたれをしているなら顆粒のプロテインもあるゾ」
「顆粒だろうがプロテインに胃薬みたいな効果は無いですよね!」
「信じれば叶ウ!」
「この状況でプラシーボ効果は見込めませんよ! そもそも信じてないです!」
「アッハッハ、何事も前向きにだヨ! 大丈夫! 君なら出来ル!」
「ポジティブの方向性がおかしくないですか!?」
「あはは、健一面白ーい」
「笑ってんじゃねーよ!」
「じゃあ、早速新人歓迎稽古を始めようカ」
突然、笑顔で健一の腕を掴み群れの中に引き入れようとするマッチョ。
「え、え、何がじゃあ!? ちょっと、やめて、やらないやらない、やめて、て言うか別のマッチョ、タンクトップ押し付けてくんな! それでゲームみたいに一瞬で衣装変わったりしねーから! あとジョッキも! 接触していきなり巨大化とかしねーし、シンプルに熱ちぃ! 薫、あの、薫さん、見てないで助けて!」
「がんば」
ハッピースマイル。
「ちょ、おま、だ、誰か助けてえ!」
「待ちたまえ☆」
一同が声をした方を見ると、ウィンドブレーカーを羽織った爽やかな青年が立っていた。
「無理な勧誘は感心しないな☆」
「貴様ハ!」
「誰?」
健一が尋ねると青年は健一とマッチョの間に割って入った。
「君を助けに来たよ☆」
「え、本当に」
「ああ☆」
「なんか良く分かんないけど、ありがとうございます。助かり……」
健一が言い切らないうちに青年が言う。
「君のような才能ある若者をスウェットに取られる訳にはいかないからね。君は僕達の同好会が貰い受けるよ☆」
「は、え、どう言う……」
マッチョが青年に言い放つ。
「貴様に我が同好会の新星を渡すものカ! 軟弱なアクエリアスの連中なんぞニ!」
「アクエリ、え……」
「凄い、健一を取り合って二つの勢力間で争いが始まろうとしている……!」
「は、薫、何言って、え、これ、え……?」
健一の両腕をそれぞれ掴んで引き始める両者。いつの間にか青年の背後には同じウィンドブレーカーを着た者達が集まっている。
「ちょ、え、待っ、痛い痛い、え、待って、な、何これ―!!!」
喧騒巻き起こる中、健一の声がこだまする。
そんな様子を見ながら薫が笑って呟いた。
「こりゃあ今年も楽しそうだな」
感謝の小話、初詣とおしくら同好会