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コンクール敗因分析『グライダー』編

シナリオライター志望の多くが通る道、それがシナリオのコンクールです。
かく言う私もコンクールには苦い思い出、つまり自信を持って送り出したシナリオがド落選する様に何度も出くわしてきたわけですが、
今回はそういったシナリオを読み返し、何故落ちたのか、何が悪かったのかを分析し、次のコンクール挑戦へ繋げようと思います。
私と同じシナリオライター志望の方がいて、この文章を読んでくれる方がいれば、「この程度のシナリオが書ければ選考でここまで進める」という目安の参考程度に考えていただければと思います。



〇 分析作品『グライダー』
URL : https://kakuyomu.jp/works/1177354054891840539

このシナリオは2014年のフジテレビヤングシナリオ大賞に応募し、一次選考を通過しましたが、二次選考で落ちました。
まず、何故一次選考を通過するに至ったかを自分なりに分析します。

➀映像化向きのシナリオだった

シナリオとはそもそも映像化を想定したものであって、単純な読み物とは目的が全く異なります。
グライダーはストーリーこそ大した面白みもありませんが、高台から紙飛行機を飛ばすシーンや、クリスマスのイルミネーションが輝く庭でのシーンなど、映像にした時に映えそうなシーンを意識して書きました。
その点が功を奏したのかなと思います。

➁小道具が活きた

このシナリオにおける小道具は「短歌」です。
主人公の透子とハルを繋げるものとして、透子の心情の変化を表すものとして、シナリオ上で重要な役目を担っています。
少しばかりあざとい使い方ではありますが、ストーリーの流れの中で不自然じゃなく活かすことができたのではないかと。


次に、二次選考を通過できなかった敗因を分析します。


①単純な技術不足

最も思い当たる敗因がコレ。まずト書きがクソすぎました。
カクヨムに上げる段階で酷すぎるものは修正しましたが、誰に対してのト書きかをちゃんと明記していないものがチラホラあるんですね。
シナリオは映像化すること前提の読み物なので、誰が何をしたのかということをはっきりさせておくことはとても重要です。
誰の動きかわからなければ、俳優さんに指示が出せない訳ですから。

②人物の薄っぺらさ
これも技術不足のうちに入りますが、最も重要な登場人物であるはずのハルの描写が、どうしようもなく薄っぺらい。
そもそもハルは普段どうやって生活してるのか。
歌人としての収入もあんな採算度外視の売り方をしている以上は見込めないわけで、日々の食費や必要経費をどうやって得ているのかも不明な状態ですが、
それを「ホームレス」という設定や「自由」「アーティスト」という言葉で何となーく片付けようという当時の私の浅ましい考えが見て取れます。

そもそもハルの歌人、アーティストとしての主義や思想みたいなものが全く見えない。
言葉にも賞味期限があるだの、売れ残った短歌を紙飛行機にして飛ばすだの、意味わかんなくないですか?
明確な理由や根拠を設けずに「何かアーティストっぽいじゃん」ぐらいの粗末な考えで書いていたんだと思いますか、今読み返すとただの子供じみた自分ルールでしかありません。

ハルの描写がこうなった原因は、透子が憧れる自由の象徴としての役割をハルに求めた結果、『感性のままに生きている理想的すぎる自由人』として描いてしまったことです。
一応これは当時も自覚していて、ハルの自由さの背景として「弟の自殺」という葛藤を設定していたりはします。
それもちょっと唐突で説明的すぎましたね。

薄っぺらさでいくと、透子の両親、特に母親も描写が実に薄っぺらい。
なんか話し言葉からして嘘くさいんですよね。
これも透子が自由に生きるための障害の役割としてしか描いていないので、母親本来の人間性みたいなものが描けてないわけです。



ちなみにこのシナリオは、Theピーズの『グライダー』という曲をモチーフにしていて、登場人物のハルの名前も、Theピーズのボーカル、大木温之さんが由来です。
偉大な名曲に対して恥しか無い拙作ではありますが、何だかんだ初めて完成させた長編シナリオということで、気に入っている部分も多いシナリオです。

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