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試し書きリテイク2 ダンジョン探索して、大手クランと張り合う話

こんにちは、武蔵野純平です。
暑いですね!
十一時までエアコンは使わないようにしているのですが、昨日今日は辛抱出来ず十時にエアコンを使いました。
文明は素晴らしいですね!

さて、構想中の新作の書き出しが決まりませんが、三回目の試し書きをしました。
こんな風にベースのアイデアを練り直していくんだなと、執筆するまでのプロセスが伝わると嬉しいです。

夏休みのお暇つぶしに、よろしければお読み下さい。



「ダンジョンには夢と希望が詰まっている!」

(本当か……?)

俺は村にやって来た行商人の話を眉につばを付けて聞いた。
行商人は迷宮都市キャサリンから毎月やってくるエンゾさんだ。
行商をした後に、サービスで迷宮都市キャサリンの最新ニュースを披露してくれる。

村の広場には、大人も子供も集まって、行商人の話に耳を傾ける。
行商人のエンゾさんは、冒険者たちの戦いを身振り手振りを交えて話している。

「その時! 『黄金の剣』のリーダーは振り向いた! すると、そこいは巨大な棍棒を持ったオークがニタリと笑っていた! ダンジョンの通路は行き止まりだ……。絶体絶命のピンチ!」

行商人エンゾさんの熱演に、女子供から悲鳴が上がり、男性はグッと拳を握る。
だが、俺は冷静に商人の話を聞いていた。

(オークって、ゲームでは初心者の壁的なモンスターじゃないかな? オーク一匹に背後をとられただけでピンチになるって、冒険者パーティーとして練度が低すぎないか?)


俺はリク。
元日本人の転生者だ。

日本で会社員をしていたが、会社で倒れて救急車で運ばれた。
救急車で運ばれる途中で意識がなくなった。

目が覚めた時には、この世界の赤ん坊になっていた。
状況から考えると、俺は日本で死亡して、異世界転生したのだろう。

この世界での父と母は農民で、俺が三才の時に盗賊に襲われて死んでしまった。

ここはペコーリ村という農村で、父と母はペコーリ村から近くの町へ野菜を売りに行った帰りに盗賊に襲われたのだ。

それから俺は村長の家に厄介になりながら、父と母の残した畑を世話して来た。
そして、この世界での成人である十六才になった。

十六才になると、冒険者として登録が可能になる。
俺は村を出て、迷宮都市へ移ることにした。
これから行商人に同行するのだ。


村の広場では、行商人が冒険者の戦いぶりを熱演し、村人が話に熱中している最中だ。
激戦の末にオークは倒され、冒険者たちは地上に帰還し大金を手にしたそうだ。

「魔物を倒し、宝箱を見つけ、富と名誉を手にするのは……それは君だ!」

行商人はシメの言葉をポーズ付きで決め、村人から拍手が溢れた。
村人たちの中には涙を浮かべて感動している人もいる。

だが、俺は村人たちとは違う感想を持った。

(なんだかなあ……。この世界の冒険者は強いのか弱いのか、よくわからない……)

俺は疑り深くなっている。
ちょっとした人間不信だ。

父と母が死んでから、村では邪険に扱われた。
村長は俺に食事を与えてくれただけマシだが、俺のことを呪われた子供だとうそぶいていた。

俺の髪の色と目の色は黒で、この世界では珍しい色らしい。
さらに両親が死んだから、村長は気味が悪いと思ったのだろう。

俺は前世で二十九才だった。
十六才といっても中身は大人だ。


だから、文明度の低い世界にある田舎の村で、見た目が異質な俺が気味悪がられるのも仕方ないと理解は出来る。
だが、気持ちの面では傷つくし、ストレスも受ける。

それに狭い村は、人間関係が濃厚で馴染めない。

俺が村を出て行くのは、必然だったと思っている。

「リク君。そろそろ出発するよ」

行商人のエンゾさんが俺に声を掛けてきた。
エンゾさんは背中に大きな荷物を背負い、そばには護衛の冒険者が五人ついている。

「最後に確認だが……、本当に迷宮都市キャサリンへ行くのかい?」

エンゾさんが、心配そうに俺をのぞき込む。
エンゾさんの周りを固める護衛の冒険者は、俺のことを値踏みするような目で見ている。

冒険者のリーダーと思わしき体格の良い大きな盾を持った男が俺に聞いた。

「オイ、坊主。魔物や盗賊が出て戦闘になるかもしれないんだぞ。ついてこれるか?」

「大丈夫です。準備をしていましたから、足手まといにはなりません」

「なら良いが……」

エンゾさんや冒険者たちの心配も無理はない。

俺は栄養状態が悪かったせいか、十六才のわりに身長が低いのだ。
多分、十三才くらいに見えるだろう。
前世でいうと、高校一年生なのに中学一年生くらいの身長ということだ。

それに、見た目も良くない。
俺はオンボロのズボンに、これまたオンボロのシャツを着て、薪割り用のナタを腰に吊るしている。
田舎の村の出身とはいえ、もう少しマシな旅装は出来なかったのかと、エンゾさんや冒険者たちは思っているだろう。

ここで置いて行かれてはたまらない。
俺は必死に食い下がる。

「畑仕事やトレーニングをして鍛えてましたから! 体は小さいですが、体力はあります! いざとなったら見捨てても構いません!」

俺は真っ直ぐに、冒険者リーダーの目を見て告げた。
リーダーは、一つ息を吐いた。

「ふう……。そこまで言うなら、俺たち護衛としては拒否も出来んよ。エンゾさん、どうしますか?」

「リク君が、そこまで覚悟を決めているなら、同行を許しましょう」

「よろしくお願いします!」

俺は十六年間住んでいたペコーリ村に別れを告げた。
目指すは迷宮都市キャサリン。
ダンジョンがあり、冒険者がしのぎを削る街だ。

キャサリンで成り上がってやる!
ビッグになるしかない!

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