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  • 現代ドラマ

新作候補②ー1 怪獣のスイング〜ゆえに世代最恐のスラッガーは"超"強豪校に招かれた〜

  第1話 暴れろ、剛健

 轟音が鳴り響く。
 バットとボールが衝突した音だ。
 打球は高弾道のライナーとなり、バックスクリーンに突き刺さった。

「うおっ、エグッ」

 どう見ても中学生の打球ではない。だから俺が思わず独り言を漏らしてしまったのも仕方がないことだろう。

 もっとも、どう見ても中学生でないのは打球だけではないが。

(岩尾剛健《いわお ごうけん》か……)

 観客席から、たった今ライナー性のホームランを放った選手を見下ろす。

 180センチをゆうに超え、190センチに届こうかというような巨体。
 そう、巨体だ。けして長身なだけではない。

 身体が厚い。太い。デカい。

 太っているというわけではない。むしろ引き締まっている。
 つまり、筋肉が身体を覆っているのだ。

 毎年この時期は、有望そうな選手を物色しているが、中学生にして縦にも横にもこれだけデカい選手というのはなかなか見当たらない。フィジカルだけならうちの新入生のなかでも歴代最高かもしれない。

 もし仮に中学生のうちから過度なウエイトトレーニングをしているなら問題だが、むしろこの年齢で極端な負荷をかけているなら、こんな身体にはなれないはずだ。
 となると、生まれつきの素質か。

 いいね。欲しいな、コイツ。

 善は急げだ。俺は試合の後、このクソデカい中学生に声をかけた。

「おう、見てたぞデケーの! スゲェ打球だったな!」

「はい?」

 そのデケーのが振り向く。見た目の印象どおりな、低く響く声だった。

「えっと、俺のことッスか?」

「他に誰がいんだよ。お前だお前」

 デケーの、名前は……そうそう、岩尾剛健だったな。さっき資料を見たばっかだってのに、もう頭から抜けちまう。ヤダヤダ、年は取りたくねえなぁ。

 その剛健は、俺のことを不思議そうに見ている。まあこんなジイさんにいきなり話しかけられたら困惑もするかもな。

「すんません、失礼かもしんないッスけどどちらさま……」

 剛健が俺にそう尋ねようとする途中で、

「や、谷田部監督⁉︎」

 このシニアチームの監督が身を乗り出してきた。ここの監督の名前は確か……木田だったか?

「志田監督? こちらの方とお知り合いなんですか?」

 違った、志田だった。
 マジで年は取りたくねえな……。

「馬鹿! お前知らないのか!」

 木田……違う志田か。志田がやや荒げたようにも聞こえる声で言った。そうだ、言ってやれ!
 俺は、

「関西の強豪校、常葉陰高校の監督を務められている、谷田部監督だ!」

「………………ええ!!」

 剛健が素っ頓狂な声を上げる。
 なんだ、うちの高校は知ってんのか。

 まあそりゃそうか。ここぐらいレベルの高いシニアチームで野球をやってりゃ、進路先になり得る強豪校は嫌でも意識するはな。

「まあそういうわけよ。うちの高校知ってんなら話は早えな。剛健」

 俺は改めてこのデカい選手に、岩尾剛健に向き直る。

「うちに、常葉陰に来い。特待生枠は用意してやる。うちで思う存分暴れろ」

 剛健が目を見開く。お前、このチームでクソほどホームラン打ってんだからそんな驚くとこでもねーだろ。
 まあいいや。俺は言いたいことを一方的に言い放った。

「高校野球を、お前のバットでぶっ壊せ」

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