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【デバ最】◆舞台裏トーク1.1話 ユカイのストレッチ◆

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「うーん、今日も頑張ったなー」

 ユカイは疲労が蓄積され、クタクタになった体を伸ばした。
 軽いストレッチをしてみるが、筋肉の強弱が上手く付かない。
 かなりの間同じ体勢でいたせいか、変に固まってしまった。

「ユカイはそんなに頑張っていないだろ」
「フシギの言う通り。ユカイは座ってただけ」

 フシギは厳しいことを言った。
 間髪入れず、ナミダもユカイを非難する。
 ユカイはピクリと体が動き、鋭い眼が睨む。

「むむっ? 聞き捨てならないなぁ。私もアイデア出したでしょ!」
「アイデアは出したが、プログラムを組んだのは私で、絵を描いたのはアイだ」
「そう言うこと。ユカイは原案だけ」
「原案も疲れるんだよ!」

 ユカイは怒りだした。それもそのはず、今でき上がったモンスターの原案を描いたのはユカイだからだ。
 けれどその原案を基に改めてアイが形を描き直し整え、ナミダとフシギのおかげでようやく立体を得た。
 その作業量はユカイの比ではない。だからこそなのか、それとも楽しんでいるだけか、ユカイのことを揶揄ってしまった。

 しかしその扱いにユカイは納得ができない。
 ムッとした表情を改めて浮かべ、アイに訊ねた。

「もぉー、アイは分かってくれるよね?」
「う、うん。そうだね。でもみんなお疲れさまだよ。体も凝って、脳も疲れているでしょ?」
「全くだ。この後に控えた課題を先に片付けておいて正解だったな」

 アイは誰も傷付かないように器用な立ち回りを見せる。
 全員疲れている。それは言うまでもなクタクタ。
呼応するようにフシギは何処からともなくコーヒーを白い空間に取り出すと、残った課題を先に片付けて良かったと胸を撫でる。同じようにアイとナミダも首を縦に振った。
 けれどそれを聞いた中で一人だけテンパっていた。もちろんユカイだ。

「えっ、課題?」
「おい、忘れていたんじゃないだろうな。悪いが今回は手伝えないぞ」
「そ、そんなぁ! 課題忘れたらヤバいんだよー。ああ、単位が……補習かー」
「自業自得だと思う」

 ナミダは同情の余地などない顔をした。
 確かに一理あるかもとアイはユカイを見放す。
 そうしようと思ったのだが、ユカイはアイへと視線を預ける。
 なにか言いたそうで、ムズムズしてしまった。

「ねぇアイ。イサマシとドライは?」
「えっと、イサマシはサークル。ドライは家のことがあるみたいだから……」
「じゃあさ、誰が手伝ってくれるの? イカリは手伝ってくれるかな?」
「どうかな? イカリに教わったら怒られるよ? 確定だよ?」

 イサマシならきっと優しく教えてくれる。最後まで手伝ってくれるはずだ。
 ドライも手を貸してくれる。だけど自分でやらないといけないから、大変だ。
 忘れてはいけないのがスマイル。スマイルも手伝ってはくれるだろうけど、きっと今相当忙しい。こうして作業に苦しめられるアイ達より大変なので、手伝ってとは到底言えなかった。
 
 かと言ってイカリにお願いをするとマズそう。ただでさえU-20に選ばれて忙しいのに、それどころの騒ぎではなくなる。きっと「もっと真面目にやれ! バカがよ」と叱られるのだろう。

 それは流石にメンタルが傷付く。
 ユカイは唸り声を上げながら頭を抱えた。
 流石に可愛そうに見えてきてしまい、フシギは溜息を付く。
 手伝ってもいい素振りを見せる優しい側面を見せるのだが、ユカイはパッと顔を上げる。

「まあいっか。課題くらいなんとかなる!」

 ユカイは楽観的だった。しかもただの楽観的ではない。超が付く程、それこそ馬鹿みたいに楽観的だった。
 過去にこのやり方で宿題とか課題とか全部踏み倒したこともある。
 その呆れるほどの明るさでアイとは別の意味で周囲を取りまとめてしまう。
 それがユカイの凄いところだった。

「呑気な奴だな、相変わらず」
「その方が楽しいでしょー?」
「ふふっ、ユカイらしいね」
「それもそう。で、どうして急に立ち上がるの?」

 そんなユカイのことを良く知る三人は呆気に取られるというよりも納得してしまった。
 きっと今回も如何にかする。
 そう考えるのを止め、作業に戻ろうとするが、急にユカイは立ち上がった。

「ねえナミダ。私と勝負しよ。ちょっと体が鈍っちゃってさ」
「嫌です」
「そう言わずに。ストレッチだから。で、勝ったら課題手伝ってね」
「余計嫌です。一人で勝手にやってください」

 体が鈍っているから体を動かすことにしたらしい。
 けれどナミダは完全にとばっちりで、巻き込まれてしまった。

 可愛らしく敬語で断ろうとする。けれどユカイは訊かない。
 自分勝手なルールを取り付け、ナミダを再度誘う。
 けれどナミダはまたしても断るつもりだったが、そうもいかなくなる。

「あはは、変な敬語はいいよ。それに涙もなんだかんだ言いつつも、手伝ってくれるでしょ?」
「うっ……アイ、白熱したら止めてね」

 ユカイはナミダの意見を真っ向から否定、否、無視を決め込んだ。
 完全に自分のペースで話を進めると、無理やりナミダを立たせる。
 最初は面倒そうに抗うが、次第に力も抜け、ナミダは立ち上がると、助けを求める目をしてアイにお願いする。

「うん、いいよ。それじゃあ審判はフシギがお願い」
「仕方ないな。先に致命傷を与えた方が勝ちだ。もっとも致命傷になる前に……」

 アイは了承する。二人をいち早く止められるのはアイかスマイルだけ。
 もしくはイカリやドライが強引に間には入る。または仲介役としてイサマシの出番だった。

 けれどここにはアイしかいない。
 だから止める役を引き受け、審判を用意する必要もあるのでフシギに任された。
 面倒そうな態度を見せるも、一応厳格にルールを制定しようとするフシギだったが、そんな話は右から左へ流れる。

「それじゃあ行くよ!」
「いつでもいいよ」
「話は聞かないんだな」

 二人はフシギの話を最後まで聞く気は更々なかった。
 広い白い空間の中で二人は各々武器を手にする。
 ガントレットを装着したユカイと長槍を構えるナミダ。
 どっちが勝つのだろうか。アイとフシギは観客として楽しんだ。

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