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西暦5880年。とある晴れた日。
チュチュと鳥のさえずりの声が聞こえた。
満天の空、温かい日差し。そんな中、一人の少年が草原に横になり、本を読んでいた。名をナルフェルド=“トゥサン”と言った。
本はかなり厚くまるで辞書のようだ。ナルフェルドはそれを楽しげに読んでいる。
そんな彼のもとにドサドサと歩いてくる少女がいた。名をルカフェルド=“トゥサン”と言った。ルカフェルドはナルフェルドの姉である。
ナルフェルドは姉の姿を見て観念したかのように本を閉じ、
「また来たのかい?姉さん」
「またって何よ!またって!」
「悪かったよ、すみませんでした」
ナルフェルドはそう言ってルカフェルドに謝った。ルカフェルドはそんな弟の姿を見て、
「ほんとよ。遊ぶって約束していたのにまた本を読んでいるんだから」
「反省してるよ」
ナルフェルドはやっちまったぜ!って顔をしている。ルカフェルドはそんな弟の様子をじっと冷たい目で見ていた。ポタポタと冷や汗が垂れてくるのをナルフェルドは感じた。やばいなこれはと。現にルカフェルドの頬はピクピクと震えている。ピクピクと頬を揺らすのをナルフェルドは見るたびに体が震える。そしてついにルカフェルドの怒りは噴火した。
「ナルぅ〜〜〜〜〜!最近、生意気よね?お父さんに本を読むのを禁止にしてもらうように告げ口してあげようかしら?」
「す、すみませんでした!調子乗ってすみませんでした!!!!!」
ナルフェルドは土下座をした。これでもかと高速のスピードで土下座をした。ルカフェルドはそんな弟の様子に満足したかのように
「許す。それで何を読んでいたの?」
「【竜王伝説伝】」
ナルフェルドは端的にそう答えた。
「それって確か、曾祖父が活躍したっていう話だったよね」
「うん。オルフェルドひいひいじいちゃんが竜を倒して今のように平和になった話って言いたいけど、正確にはそうじゃないんだ」
ナルフェルドは誇らしげにそう言い、本を開き、ペラペラとページをめくる。
最初の章の一ページ目にはオルフェルド=トゥサンが【ダナスティーナ王国】へと亡命し、初の竜退治をしたところまでが記されていた。
「じゃあ、どんな話なのよ?」
「竜を倒したのはひいひいおじいちゃんだけじゃないってことだよ」
ナルフェルドはルカフェルドに向かって言った。
風がビュッーと吹いた。そして、
「1代目竜王と“二代目”竜王 が竜を倒して今の世の中になるまでの歴史の話」
この物語はオルフェルド=トゥサンが二代目竜王と呼ばれるまでの伝記ではない。オルフェルド=トゥサンと1代目竜王が“本当の平和”な世界を築くまでの伝記である。
そして、
『“オルフェルド=トゥサンと1代目竜王が残した伝説の物語”』