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ささやかなネタバレと共に【クデロの王国】。

こんにちは、珠邑です。
【クデロの王国】完結後もちょいちょい構っていただけて大変ありがたいです。


こちらはどこぞで言うたかも知れませんが、20年くらい前に日本ファンタジーノベル大賞に応募して落ちた奴です。
まにまに王国シリーズと銘打ち、さまざまな族(うから)が生息している話になります。

さて、本作とてもゆるーいファンタジーなのですが分類はミステリでありまして、すごーくゆるーい仕込みや、地味なヒントがありました。

そのうちのひとつ。

作者からの挑戦状にて④に提示していた「今は何時ですか?」

これは地味に答えが最初から書いてあったのです。

そう。
第一章の小タイトルですね。


https://kakuyomu.jp/works/16817330658339132427


ここでS62年とあるのは、昭和62年ではなくS(西暦)62年です。この時点で略称なのが分かります。

4月1日が土曜日なのは2062年。
これに近いのが1961年でした。

作中でうつぼ君が「なぜかいつも61年と間違える」というのは、彼の趣味が探偵で、カレンダーをよく記憶しているからという裏設定があるからですが、続編があれば使おうと思っていた小ネタなので、本編では日付と曜日から今がいつかをすぐに割り出せるというトリックに留めました。

1961年には水木先生のご結婚や、日光東照宮薬師堂の消失事件。他にもあれやこれやとなかなかエポックメイキングな年です。


※ちなみに京極先生の「姑獲鳥の夏」は1952年(昭和27年)が舞台になります。「鵼の碑」が1954年(昭和29年)


さて、というわけで本筋ですが、本作は2062年が舞台です。
執筆当時は2002年。あの頃の60年先というのは干支も一回りする随分先の日の筈でしたが、すっかり近付いてきてしまいました。

生きてるうちに追い抜くところを観られたらーー幸せなのでしょうね。

未来を書くというのは、その時点ですでに並行世界を生み出す事を意味しているのかも知れません。大きくズレ込んだ、カレンダーだけを共有する世界。
全く異なる特徴をもつ人間的な生物が闊歩する世界。


価値観が今よりも複雑だったり、それでいてどこか自由な世界。
そういう不思議な世界が、わたしの好きなファンタジーのような気がします。


復帰してwebを使い出してから、「お前の書く物はいらない」ときっぱり言われているように思っています。仕方ありませんね、ニーズからズレているのは昔からです。
頂いている書籍向けの作風だからというお言葉はありがたくも、そのレーベルやニーズに合致していないから、またレベルがあっていないから何作もゴミにしてきた過去があるわけです。


それでも書き続けているのはなぜか。


それはきっと、うつぼくんやハル子さんたちの生き様が、価値観が、わたしの何かを揺さぶるからなのでしょうね。


全部が届く事は求めません。
ただ、ごくごくわずかな胸の震えや感動に頼って、何カ月もかけて彼等と向き合って形にしたささやかな物語を、どこかの片隅で形にしておきたい。

それを、どなたかお一人でも拾い上げてくださったら幸せだなと。
そう思います。

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