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スウィンドラーは懲悪せり 《真白市中、花の見ぬ間に》【公開プロット】

「第一幕」
~日常の世界~
・コウキ視点。時間軸はスウィンドラーが二度目の家出をした輪花の捜索をメールで送り、それを受けて(スウィンドラーのためではなく、あくまで輪花のため。もっというとミツキが世話になっており、そのミツキたっての希望によって)輪花を探しているところ。
 烏野地区のショットバー「ピースメーカー」でマスターに狙撃銃をふいにした件を話したこと、マスターはコウキの傭兵としての成長を期待しているようで、さらなる出世払いを条件にまた新しい狙撃銃を手配してもらうという約束をどうにか取りつけたこと、その帰りがてらに烏野地区で輪花を探そうと双眼鏡(狙撃銃につけていたスコープは角山で狙撃銃と一緒に手放した)で建設中の新複合ビル(全十八階)に組まれた建設用の足場から烏野を見渡していたこと、などを説明する
・コウキは狙撃銃のスコープを恋しく思いながら、双眼鏡に不満たらたらといった感じ。そうして、そもそもなぜ自分は双眼鏡なんか使うことになったのか、について、角山での狙撃のおさらいから、その後の下山時の様子を回想する
・ここから回想始まり。スウィンドラーの指示どおりに藪の中で待機していたコウキは、電話口で聞こえていた音に違わぬ形で警察が角山のまわりを固めていることを察する。ただ、角山を山狩りするにしてはそういった騒がしさはなかった
・それに疑問を抱いていると、おーい、と不用心にもジェミニを呼ぶ声がした。まさかと思って藪からのぞいてみると、ひとりの警察官がこちらに近づくように山道を歩いていた。コウキは自分の存在を知っている点から、その警察官姿の男があろうことか、スウィンドラーであると気づいて驚く
・コウキと合流したスウィンドラーは、よく似合っているだろう、と緊張感に欠けることを言いつつ、コウキと一緒に下山しようとする。対してコウキは、警察官に扮すればスウィンドラーのほうは角山を怪しまれずに出入りできるだろうが、自分はそうもいかないのでは、と疑問を呈する
・するとスウィンドラーは、|正義の味方《けいさつかん》はいたいけな子どもを疑ったりしないものさ、と答え、考えがある、と告げる。そしてそのまま場面は進み、その考えは「なにか事件が起こったんだ、と気になった子どもが勝手に山に入ったのを善良な警察官が麓まで送り返す」という芝居の形で、すぐにコウキは思い知るのだった(ここでのスウィンドラーは誰にも疑われない。少なくとも、コウキの目から見ても、身ごなしや振る舞いは本物の警察官そのものだった(前職が警察官なので当然といえば当然))(他方、のちに通自はこのときの様子を当時、その場にいた警察官から聞き込み、「そう言われると、勝手に入ったらしい子どもを現場から連れ出していたあの警察官がどこの所属か、わからない」などといった証言を得ることで、それがスウィンドラー(ないしは自分が竜苑暗殺未遂事件の黒幕だと思っている人物)ではないかという疑いを強める)

~冒険への誘い~
・回想終わり。かくして角山を無事に脱したものの、代償として狙撃銃一式を失ったのである。コウキはなおもそれを悔やむ。そんな折、ミツキの人格が怪しいものを見つけ、コウキに知らせる。コウキはそのほうに目をやる。するとそこには、黒猫を抱いて逃げる女性を鎖で追撃しようと追いかけるマッシュルームヘアの男(タナトス)が見えた

~冒険への拒絶~
・女性のほうはベージュのボブではない。よって、本来であればかかずらう必要はない。ミツキも警察に連絡しよう、と、あくまでコウキに行ってほしくない感じのそぶりを見せる

~メンターとの出会い~
・だが、追われている女性は見るからに烏野地区のあくどい色をしておらず、抵抗する力も見られない「罪のない命」のようだった。よってコウキはいても立ってもいられず、すばやく足場を降りていく。烏野には何度も足を運んでいるため、女性が追われている路地裏へは迷わず着いた

~第一関門~
・マッシュルームヘアの男がデスボイスのような奇声を上げて鎖を振り回す。しかし、銃声と同時に鎖は持ち主の意図に反して暴れ、先端がはじけ飛ぶ。どうにか間に合ったコウキが、狙撃銃が手配されるまでのつなぎとして借りていた拳銃でマッシュルームヘアの男による女性への攻撃を妨害したのである
・遠ざかる女性になぜか目もくれず、マッシュルームヘアの男は嬉々とした顔でコウキを攻撃の対象としはじめる。コウキは殺傷をいとわないつもりで応戦しようとするも、ミツキの人格に強く反発されたあの感覚に襲われ、本調子を出せない。できたのは威嚇射撃の一発と、襲い来る鎖を撃ち返すことぐらいだった
・マッシュルームヘアの男の命知らずにもほどがある攻めっ気と、各動作の非人間的なレスポンスの速さに圧倒され、とうとうコウキはマガジンの弾を使い切り、間合いを詰められ、首をつかまれた状態で壁に押しつけられてしまう
・曲がりなりにも戦場を経験していた自分がこうも追い詰められるとは思ってなかったコウキは、今まで感じずに済んでいた死への恐怖を突きつけられ、万事休すと思う。だが、ここでなぜかマッシュルームヘアの男は、ほおを染めながら「撃ってください……これなら絶対に外れません……」などとコウキに告げた
・マッシュルームヘアの男の挑発のような言葉と快楽を求めるようなまなざしに、コウキはいくら頭を回しても理解ができない。やむなく、コウキはあいにく弾切れだ、などと答えて、拳銃のグリップ部分でマッシュルームヘアの男の側頭部に悪あがきの一発をかます。多少鍛えていても、しょせんは小学四年生。手応えからしてたいした威力ではなかった
・するとマッシュルームヘアの男は、これまた奇っ怪なことに、さも残念そうな様子でコウキを解放し、さっきの人たちとおんなじか、みたいなことをつぶやいてとぼとぼ路地裏から表通りに去っていった
・どういうわけかはともかく、コウキは難を逃れた。あれは表の人間ではない――そう確信できたが、マッシュルームヘアの男が果たして何者なのか、(女性を追っていた理由ももちろんのことだが)なぜ女性への追走をすっぱりやめて自分に反撃したにもかかわらずとどめを刺さなかったのかはさっぱりだった
・ひとまずコウキは助かった。それをミツキの人格は喜び、こういうことになるから|スウィンドラー《ちゃらんぽらん》との関係を断ち、傭兵も辞めるべきだ、と告げる
・対してコウキは、ぼくが強くなればいいだけだ、として突っぱねる。そんなコウキの頭にあったのは、角山での動揺のようなトリガーがあったわけでもないにもかかわらず、当時と同じような感覚に襲われ、まともに戦闘できなかったことへの、ただならぬ焦りだけだった

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