~急1~
・スウィンドラーのすみやかな指示と輪花の即応により、火炎瓶による被害はぼやにも満たない小事にまで押さえ込まれた。とはいえ、曲がりなりにもここは裏仕事を営む男の事務所。警察消防への通報など言うに及ばず、窓の修理を業者に頼むにしても、こちらの存在を世間に明かしてしまう恐れがあるため忍ばれる。
そこでスウィンドラーは襲撃者が何者なのかを調べるついでに代わりの窓を調達するべく、サイドカーに失神中の男三人を(あたかも積載物であるかのようにブルーシートに包んだ状態で)詰め込み、ひとり事務所を発っていった
・一方、残された輪花は男ふたりを撃退した錬磨の手当をしていた。致命の攻撃こそ受けずにすんだが、ナイフをかわすうちにほおをかすめていたらしく、顔に切り傷を負っていたからだ
・得体の知れない真白の仕事人がいなくなり、緊張の糸が切れたことでほおに刺すような軽い痛みを感じるようになった錬磨をパイプ椅子に座らせ、消毒液をしみこませた脱脂綿で傷口の手当てをする輪花。当の錬磨はこのぐらいどうってことない、と口にするも、輪花にしてみれば媚びるチャンスにほかならず、さも女子力をアピールするかのようにだめだと返し、半ば強引に錬磨の手当てを続ける
・やや大判の絆創膏をほおに貼り、ひとまずの手当てを終えた輪花は、ダメ押しにしゃがみながらの上目遣いで「あんまり無茶しないでね」などと錬磨を気遣うようなそぶりを見せる
・対して錬磨は気持ち照れているかのような反応を示すも、すぐにいつも通りの強気っぷりであの状況じゃ仕方ないだろ、などと返す
・しかして錬磨はこれで晴れて真白の仕事人に近づけた、調査もさらに進む、などと現状に満足げな態度を取る。輪花も家出について黙ってもらう取引も順調に進んでおり、かつ錬磨を一蓮托生の関係に近づけることができたため、内心にてことが順調に進んでいるとほくそ笑む。
(ついでにスウィンドラーが輪花に敵意を抱いていたとしても、「錬磨はスウィンドラーの情報を悪い組織に売ろうとするスパイだった」などとでっち上げれば、スウィンドラーの危機を未然に防ぐ味方ムーブができるのみならず、次第によっては錬磨の口を封じることさえかなうだろう、とも考えている(そんなことをすればいっそう悪道に染まってしまうとも知らずに……))
・とはいえ新たに生じた不安もある。事務所を強襲してきた男たちがもし須佐美一家ないしはその息がかかった人間で、「あくまで須佐美一家がやったわけではない」という体で輪花を連れ戻そうとしてきたのだとしたら、輪花にとっては錬磨の口封じどころではないのである(たとえ「連れ戻そうとすれば悪事を公表する」などとあらかじめ脅しておいたところで、須佐美一家サイドが痛み分けを覚悟の上で連れ戻そうというのなら脅しが抑止力として機能せず、対抗手段がなくなってしまうため)
・輪花が家出をしたのは極道としての在り方を改めないばかりか、自分を次期当主にしたがる須佐美一家の主導者たる両親に嫌気がさしたためであり、その点については激しく嫌悪している。さりとてしょせんは花の女子高生。自分の家庭、自分の両親ときれいさっぱり決別できるほどの覚悟もなく、須佐美一家の悪事の数々をスウィンドラーに告げて懲悪してもらうという、ある意味確実な対処方法を実行しようという気さえ起こせずにいた
・そんな考えごとをしていたがゆえに顔を曇らせてしまっていたのか、輪花は手当てを終えた錬磨から大丈夫か、などと不思議そうに尋ねられる。もちろん錬磨にうっかり思惑を悟られてはことなので、輪花は何でもないふうを装ってからいかにも何気なく「あんなことがあったんだし、後片付けの前に休憩しましょ」などと理由をつけてココアを入れにキッチンへと向かう
・そうして水を入れたやかんを火にかけながら、ふと輪花は「あっちは今頃どうしてるかな」などとつぶやきつつ、別行動を取っているスウィンドラーのことを頭に浮かべるのだった
・真白市東区の自動車整備工場、その敷地にあるトレーラーの(どういうわけか電源に繋げられた三脚付きのスポットライトがある、視界の通った)コンテナにて、スウィンドラーは両手両足を縛られ、目隠しまでされた襲撃者の男を冷徹な言葉とともに蹴り飛ばし、コウキはプラスチッキーな白い拳銃もといエアガンにマガジンをセットしながらその様子を後ろから眺める(この描写の中で「腕時計だけが目立つ」みたいな書き方で男の手首に烏野組のシンボルたるブレスレットがないことを、「この男が烏野組の人間ではない」というのちの伏線のために描写しておく。もちろん、まだ烏野組のブレスレットについては明言しないでおく)。
ここでコウキがスウィンドラーに公衆電話から緊急の呼び出しを受け、このような場所に集合したこと、自分がコンテナに来た頃にはもうふたりの男が伸びていたこと、事情こそまだ聞いていないもののスウィンドラーが敵対者への尋問をしているのは見てとれることなどを説明する
・男は口調とは裏腹に暴力を辞さないスウィンドラーへ(姿が見えないということもあり)恐怖の叫びを上げ、必死の命乞いをする
・しかしスウィンドラーにその懇願を聞き入る気配はなく、引き続きどこの組織に属しているのか、誰に命じられたのか、なにが目的だったのか、などを詰問する。対して男は我が身かわいさに「それは……」などと言いかけるが、すぐに口をつぐみ、必死にこらえようとする
・そこでスウィンドラーはコウキへと目配せする。そのサインを助力の要請と受け取ったコウキは不承不承ながらも銃口を天井に向け、しかして発砲する。もちろんエアガンにつき、放たれたのは銃声とマズルフラッシュだけだったが、男を追い詰めるには充分だった
・コウキの発砲によっていよいよ死が迫っていると悟ったらしく、男は涙のごとく脂汗を流しながら、「烏野組」を名乗る女に命じられた、とついに白状する(ただし理由についてはふたたび口をつぐもうとする)
・烏野組――聞き覚えのない組織の名前にコウキは内心にていぶかしむ。それを聞いたスウィンドラーは深いため息をついたのち、男の下顎をすばやく蹴り込む。その一撃によって男は命乞いの台詞を言い切る前に沈黙する(脳震盪による一時的な気絶。そういうことにしといて……)
・そうしてスウィンドラーはスポットライトの電源を引っこ抜きながらコンテナの扉へ近づき、開け放ったのちひょいと飛び降りる。用が済んだのだろうと考えたコウキもエアガンを腰に巻いた上着に隠したガンホルダーにしまい込み、スウィンドラー同様にコンテナから飛び降りる
・コンテナを外から閉めるスウィンドラーに対し、コウキはたかが尋問ごときで呼びつけるな、などと毒づく。するとスウィンドラーは「コウキくんには申し訳ないけれど、君を呼んだのは可能性を考えてのことさ」などと前置きし、尋問していた男含む三人の男たちがスウィンドラーの事務所を襲撃してきたことを告げる
・コウキは反射的に自業自得だ、などと悪態をつくも、すぐに不審な点――つまりは散々ひた隠しにしてきた拠点がひとつをどうして男たちが突き止めたのか、という点について疑問を呈する
・しかしてコウキは頭を巡らせ、自分を呼んだのは事務所を知る者として男の背後にコウキがいるかもしれないという可能性を疑ったがゆえか、などと思い至り、その真偽をスウィンドラーへと問いただす。
するとスウィンドラーはコウキをさすが神童だ、などとあからさまにおだてつつ、その可能性を潰すためにコウキを呼び出したこと、しかし同時にコウキの仕業ではないという確信を得たので杞憂だったことなどを語る
・杞憂と語るスウィンドラーにコウキはなぜと同時に、烏野組とはなにか、についても問いかける。対してスウィンドラーは、烏野組とはこの前話した繚乱会の御三家がひとつで、須佐美一家に比べれば歴史も規模もたいしたものではないが真白に根ざした反社会的勢力としては油断ならない組織だ、などと説明する
・しかして真白一の夜の街である烏野を拠点としているだけに、須佐美一家よりずっと一般に知られていること、竜苑が烏野組を繚乱会へと招いたのは昔から攻撃的だった烏野組が組長の代替わりによっていっそう過激になったことで、いっそ懐柔策に打って出たほうが対応しやすいと判断したからだろう、などとスウィンドラーは語る
・対してコウキは自分が知らなかったことへの気後れ感を「相手にしたことがなかったから」「どうせたいした組織じゃないんだろう」などと言い訳しつつ、いくら知名度があるとはいえその烏野組とやらにずいぶん詳しいな、などとスウィンドラーをいぶかしむように応じる
・コウキの言はもっともだ、などとスウィンドラーは口にするも、過激派ゆえに真白の無能警察にも少なからずマークされているため(無理に相手をして芋づる式にこちらの存在を悟られても困るので)基本的にはかかわらないほうがいい、などとお茶を濁す形でRAILについての言及を避けようとする
・対してコウキは内心にて、こちらの仕事を害するようならそうもいかないだろうが、さりとて自分は正義の味方気取りではなく報酬と引き換えに与えられた仕事をこなす傭兵であるため、今はまだ自分から進んで処理する段階になくかかわる必要もない、(加えて、仕事に支障がない以上はスウィンドラーがなぜ烏野組について把握しているのかなど知るところでなく、どうでもいい)などと考え、烏野組という新たなに知った悪党についての質問をそこで締めくくる
・ここでスウィンドラーは当初の質問である「なぜ(コウキが襲撃者を仕向けたのではないと確信を得たのか)」についても言及し、
襲撃の手段が事務所を対象として実行された(つまりスウィンドラー個人を狙うなら当人がひとりのタイミングを見計らえばいいところを、わざわざ(学校が休みである)土曜に白昼堂々、事務所を狙うという不確実な手段を執った)こと(ここから転じて、スウィンドラー以外を狙った可能性にスウィンドラーは思い至る)。
(コウキに嫌われている)自分だけならまだしも、輪花さえ巻き込まれうるそのような手段をコウキはおろか、ミツキが許可するはずがないこと――。
これらの理由をもってコウキの仕業ではない(もといミツキが輪花にも危険が及ぶ襲撃を容認するはずがない)と確信したことをスウィンドラーは説明する
・対してコウキは、そも尋問されていた男が嘘をついている可能性については否定しきれず、それこそこちらが「桜を愛でる会」にて襲おうとしている竜苑率いる須佐美一家が仕向けたかもしれないだろう、などと述べる。するとスウィンドラーは、であればなおさら次期当主として育てようとした娘を危険にさらす手段など執らせはしないさ、などと返してその可能性を否定してみせる
・しかしてスウィンドラーはそれに、と前置きしつつ、襲撃を命じた相手についてはおおむね見当がついている、としてコウキの懸念を払拭しようとする。
(このときスウィンドラーは「男の手首に烏野組のブレスレットが見えなかった」ことから、命じた組織が烏野組でないと考える。これについてはのちのちの伏線として、ここでの描写は控えておく。
また、あくまで見当がついているだけで襲撃を命じた首謀者の特定には至っておらず、具体的には自分に少しでも近しい女性にどういうわけか嫉妬深いキトンと、輪花の紹介という体であの場に居合わせた部外者たる錬磨、この二名に疑いをかけている。
なのでスウィンドラーは、「桜花の妹である輪花を守る」ためにこの時点で両名の懲悪を決意する。もっとも、キトンについてはいつもの暴走ムーブだと思っているので、「輪花に対してだけは看過できない」という意思表示を行い、それに対するキトンの対応次第で懲らすか否か判断しようとも考えている(まあ自身含めて最終的には皆殺しならぬ皆懲らしにするんだけど……))
・であれば降りかかる火の粉を払うかのごとく「桜を愛でる会」での暗殺任務の前に(コウキ的には烏野組と想定している)その組織へしかるべき対応をしなければならないのでは? とコウキは今後についてスウィンドラーへと尋ねる。対してスウィンドラーは、いずれは処理しなければならない組織には違いない、としながらも、今回はジェミニの仕事に支障が出ないよう自分がどうにかするのでコウキは予定通り仕事へ臨んでほしい、と告げる
・しかしてスウィンドラーは話題を転じ、下見のほうはどうだったか、とコウキに尋ねる。対してコウキは角山は短いながらも登山道もありそれなりの人数が出入りしているので、仕事の前後に目撃される≒暗殺の関与を疑われる可能性を排除するためにも、仕事の前夜にポジションへと就きつつ一夜を明かし、仕事後に下山するつもりだ、などと下見からデータをもとに構築した具体的な計画を得意げに語る
・それはよかった、などとコウキの言葉に安心感を示すスウィンドラーは、コンテナを施錠したのち、本番はあさってだからね、などと言いながらトレーラーの運転席へと歩みゆく
・解散を告げるスウィンドラーに対してコウキは、お前はどうするんだ、などと尋ねる。するとスウィンドラーは悪意に満ちた顔を振り向かせ、情報をくれたコンテナの三人にすてきな船旅をプレゼントする、などと告げる(要するに海外行きの貨物船にコンテナを載せに行くということ)
・『仕事の手伝いやほかの助手を通じて調べるしかない』――そんな輪花の言葉を反芻するように思い返す錬磨は、逆さにした段ボール箱の上にラップがかけられたご飯と味噌汁、ふりかけの小袋を広げていく。今日も今日とて、錬磨の夕食は育ち盛りには不相応なぐらい質素なものだった
・日本家屋なら茶の間で食事を取るのが普通だろうが、錬磨にとっては祈祷を続ける母親の背中を見ながら食べるより自室でひとり箸を進めるほうがよっぽど安心して食事ができる。ゆえにこそ錬磨は段ボール箱などというみすぼらしい食卓へとわざわざ就いているのだった
・あれからスウィンドラーは一時間経ってもなお戻ってこず、ひとまず家の固定電話の番号を伝えて錬磨は帰宅した。毎日のようにある朝刊の配達(すなわち早起き)に備えたいという事情もあったが、具体的にどのような仕事をするかについては輪花さえ「実際に経験したほうがわかりやすい」などと言い渋ったため、具体的にどうすればいいか、なにを準備すればいいかなどが少しもわからなかったのである
・解散の折、仕事に際して動きがあれば輪花から連絡してもらうという約束を取りつけたため、そのあたりについての心配はない。
一方で、錬磨の祖父たる鍛造と知己の仲にあったらしきスウィンドラーに対して、個人的にも調べたいこと(祖父とスウィンドラーの関係や、(あくまで祖父を知る人物ゆえの期待だが)寝たきりだった祖父の死をきっかけに家を出たまま帰らなくなった父親の行方など)が生じてしまったようにも感じられるが、目下の目標は烏野の傀儡師から受けた調査の完遂――すなわち200万円の報酬である。
それだけの大金があればこの鬱屈した暮らしにも光明を見いだせる。場合によっては、行方知れずとなった父親を探したり、狂ってしまった母親の適切な精神療養のためにだって使える。そうして個人的な調べ物への迷いを振り切り、錬磨は改めて調査への尽力を決意し、目標へ近づきつつあるという確かな手応えを確信するのだった
・同時刻。ひょっこり帰ってきたスウィンドラーが工具片手にどこからか調達してきた窓ガラスを壊されたそれと交換するのを眺めながら、輪花はスウィンドラーが携帯を持っていないがために連絡が取れず、一時間以上も錬磨を待たせてしまったとしてスウィンドラーを軽く責める。対してスウィンドラーは通話ならパソコンでもできるじゃないか、などと言って携帯を持たない理由をはぐらかそうとする
・今日日おじいちゃんおばあちゃんでもスマホを持っているのに、としてスウィンドラーの時代錯誤ぶりに異を唱える。一方のスウィンドラーは輪花が錬磨と連絡先を交換しておいたのであれば今日みたいなことは二度も起こらないだろう、などと他人事のように話しつつ、あとは自分が錬磨の連絡先を把握するだけさ、などと楽観してみせる
・錬磨とではなく、スウィンドラーと円滑に連絡が取れないことが問題だというのに、などと輪花はあきれ気味につぶやく。そんな輪花を意にも介さない様子で、スウィンドラーは何気なく「輪花ちゃんは明日、暇かい?」などと輪花に尋ねる
・明日が土曜すなわち休校日なので(強いて言うならみわわの放送でもしようかと思っていたぐらいで)特に予定はない、と輪花は返す。次いでなにかあるのか、と尋ねる輪花に対し、スウィンドラーは軽いお出かけ、小旅行にでも行こうかと思ってね、などと軽々に答える
(この旅行というのはある種の建前で、本来の目的は錬磨(あるいはそのバックにいるかもしれない勢力)に事務所の場所が割れてしまったので、また別の場所に拠点を移すことにある。小旅行という体であれば自然な流れで輪花にスマホや財布といった、置いていけない最低限の貴重品を持たせつつ事務所から連れ出せるとスウィンドラーは考えたのである)
・旅行というワードそのものにはさしたる魅力も感じなかった輪花だったが、スウィンドラーが「またどこかへ食べ歩きに行くというのも悪くないかもね」などと口にしたことで態度を一変。出先でおいしいものを食べられるかもしれないというのであれば話は別だと思い直し、行きましょう、と快諾する
・輪花に外出の予定を取りつけ、ついでに新たな窓も取りつけたスウィンドラー。工具片手にやおらパイプ椅子に腰かけたのち、ふと目についたテーブル上のガラケーを指して、それはなんだい? などと輪花に尋ねる
・対して輪花はグルメ旅行が決まった高揚感からついうっかり、それはキトンさんと連絡をとるためのもので、などと言いかけてから、(そもキトンとの接触はスウィンドラーの素性を調べるべく隠密裏に行ったもので、スウィンドラー本人に知られては困る事柄であったため)慌てて閉口する
・キトンの名前が挙がったことでスウィンドラーはキトンと会ったのかい? などと輪花に尋ねる。対して輪花は、やや言葉を濁すように、コウキくんからキトンさんの話を聞いて会ってみたくなったので少し前に会ったのだ、などとそれっぽい言いぶりでスウィンドラーの問いに肯定する(もっとも、仲間内ですら直接会わないようにスウィンドラーが徹底させているので、すぐにスウィンドラーは輪花の言を嘘だと見抜く)
・次いで輪花は、その携帯はキトンさんの忘れ物で近々届けるつもりだった、などと出任せを言う。するとスウィンドラーは(ここでキトンがオウレットもとい輪花の存在を完全に把握しており、携帯についても位置情報から輪花の場所を特定するための道具なのかもしれない、と察し)であればちょうどあさって、キトンと会うことになっているので自分が代わりに届けてあげよう、などと申し出る(連絡を取り合う手はずにこそなっているが、もちろん会う約束などしていない。スウィンドラーの出任せである)
・対して輪花は、内心では着信拒否やらなんやらのせいでキトンとの唯一の連絡手段であるガラケーを勝手に手放してはまずいだろう、と思うもスウィンドラーに怪しまれては元も子もないと考え、結局、スウィンドラーの申し出を(表面上は)快く承諾してしまう
・輪花から了承を得たスウィンドラーは、これで一時的とはいえ輪花とも連絡がとれるね、などと言いつつ、ガラケーをズボンのポケットにしまい入れる。しかしてスウィンドラーは頃合いだし夕食にしようか、などと言ってキッチンへと赴く。一方の輪花は、やや面倒なことになったかもしれないと不安に思いながらも、せっかく自分がキトンと接触した理由について運良くスルーされているのにこの話題を続けてしまっては言い逃れができなくなりそうだ、としてスウィンドラーの話題に応じるべく夕食は何かをあたかも気さくに尋ねる
・そこでスウィンドラーは、今あるのはカップ麺と冷凍のピザだね、と前置きし、どっちを食べようか? と輪花に尋ねる。対して輪花は迷いなく「両方食べます」と即答するのだった