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スウィンドラーは懲悪せり 《桜花繚乱の一節》3【公開プロット】

~破3~
・ここで輪花による須佐美一家、そして自身が生まれ育った環境についての説明。
 兄弟姉妹のいない(と教え込まれた)須佐美家の総領娘(実際は次女)として輪花が生まれたこと(実際には、今は亡き須佐美桜花の妹として生まれた)。
 それに加えて家庭が裕福であったため食べ放題のわがまま放題な幼少期を過ごしたこと。
 その当時は両親の愛情のように見える感情をなんら疑っていなかったこと。
 しかし小学校高学年になって一般的な常識を覚え始めたことで自身の環境が世間のそれとはずれた異質なものであると気づき始めたこと。
 中学校に進学して間もないうちに見も知らぬ怪しい男たちに襲われかけ、(その当時は(実は輪花が知らないだけでいつも護衛についていた)須佐美一家の構成員に助けられたものの)いよいよ自分が育った環境が社会的悪に属するものであったという現実を突きつけられたこと。
 その日以来、須佐美一家の次期当主になるべくそちら側の知識や常識、なすべきことを父、竜苑を主体として強制的に学ばされるようになったこと。
 しかしすでに一般的な世界になじんでいた輪花に悪道を受け入れることはできず、両親に反抗するようになったこと。
 そして高校入学が決まり、入学式を明日に控えたその日、悪しき混沌から足を洗うべく、「連れ戻そうとすれば須佐美一家の所業を白日の下にさらす」的な書き置きを残し、家出を敢行したこと(なお竜苑サイドは輪花が学校に通っていることは確認済みであり、(下手に刺激して須佐美一家のありのままを公表されても収拾が面倒ということもあり)いっときの反抗期だろうとしてあえて放任している)。
 それからはたったひとりで生きるべく、しかしながら少しでも悪い人間にならないように、期限間近の食品を盗んで食いつないだり、スマホでほぼ完結する配信業や自販機あさりなどに手を出して宿泊代を稼いだりと、浅ましくも懸命に生活していたこと。
 そしてその日常の中で真白の仕事人と名乗る男、もといスウィンドラーに見つかり、紆余曲折を経て現在に至る、といったことを説明する
・よもやスウィンドラーについて調べているうちに、己が一族にかかわりのある事件について知ってしまうとはつゆほども思わず、図書館をあとにした輪花は未だ驚きに支配されていた。
 とくに問題だと感じたのは、ネネ子の出題にあった「少年は幼なじみを救わなかった事故の関係者たちを「悪」と断じ、憎むようになった」という箇所。必然、関係者には須佐美一家の人間、すなわち(事件当時はまだ生まれていないとはいえ)輪花自身も含まれる。次第によっては自分もまたこれまでの悪人同様に、いずれは懲悪されてしまうのではないか、と輪花はそう懸念せずにはいられなかった
・そんな不安を抱きながら帰路を行く輪花はふと、ぽつぽつと小雨が降り出しそうになっていることに気づく。このままではバス停に着く前に濡れ鼠になってしまう、と考えた輪花は、たまたま目にした近道になりそうな裏通りへと歩を進めようとする
・そうして裏通りに足を踏み入れた直後、輪花は後ろから力強い何者かの手によって拘束される。ここで拘束した男であろう人物から、恨むならレールを恨むんだな、と告げられる描写を入れる
 突然のことに驚きながらも拘束を逃れようともがく輪花だったが、花の女子高生の力では脱出はかなわず、次いで鼻に異様な匂いを発するハンカチを当てられ、そのまま意識を手放してしまう(クロロホルムにそんな作用はないが、現実ではまねできない安全? な演出であり、かつある種の様式美なのでこのような描写にしておく!)
・ネネ子が(輪花をとらえた写真が添付された)受信メールを確認し終えたところに、仕事用のもうひとつのスマートフォンへと公衆電話からの電話がかかる。それを繋げるやいなや、「やあキトン、僕だよ」などとあいさつをしたのは愛しのスウィンドラーだった
 (ここでスウィンドラーがキトンに電話したのは、「桜を愛でる会」での竜苑暗殺計画の相談もあるが、一番は少し前に輪花と接触したことについて、それとなく探りを入れるため。なにせ学生時代からの付き合いでキトンもとい知子の「真白懐人に近しい女性に対する攻撃性」を誰よりも把握していたのだから……)
・対してキトン(もといネネ子)はその声と言葉遣いを聞くやいなや、激しく尻尾を振りながらすり寄る犬のように、または帰宅した主人を甘えた声で迎える猫のように喜びをあらわにして応じる
・スウィンドラーはうれしがるキトンに対し、珍しく単刀直入に「会合はどうだった?」などと問いかける。するとキトンは相変わらずの牽制合戦だったが、いくつか報告すべきことがある、と続ける。
 まずキトンは例年通り、近日中(※できればここで正確な日付と何日後であるかを説明)に「桜を愛でる会」が真白市の角山公園にて開かれること、そこに繚乱会の御三家が一角、須佐美一家の当主こと須佐美竜苑が地元の名士として参加することになっていることを説明する。ここで須佐美一家が真白市に古くから存在する極道集団であることを説明する
・そしてキトンは「桜を愛でる会」の裏の二次会について、これも例年通り市内のグランドホテルにて暗々のうちに執り行われ予定であること、その場には繚乱会の御三家トップが一堂に会する予定になっていることなどを説明する
・一連の説明を受けたスウィンドラーは、二次会についてはさておき、表の会がつつがなく開かれるのであればこちらの計画も予定通りに進めなければ、と語る。対してキトンは「真白にはびこるすべての悪を懲らしめようだなんて」などと前置きし、「正義の味方は大変ですねえ」などと嬉しそうにスウィンドラーを正義の味方と称する
・しかしスウィンドラーはキトンの言を否定する。よかれと思って懲悪すれど、自分はけして正義の味方などではない、と
・自身の発言に乗ってくれないスウィンドラーにキトンは少しだけつまらなさそうに応じる。そしてふと、足がつきにくいからとはいえ「願わくは公衆電話越しでなく、直接会って話したかった」とキトンはこぼす。対してスウィンドラーは、今のところそれがかなうのは面会室の中(要するにどちらかが逮捕されたとき)ぐらいだろうね、などと皮肉を述べる
・そこでスウィンドラーは話題を転じ、もうひとつ、確認したいことがあったんだ、などと言って「オウレットになにかしたのかい?」などと切り出す(このような質問をしたのは、図書館での輪花とネネ子の邂逅をひそかに目撃していたため)
・対してキトンは一体全体なんのことか、などとお茶を濁すような物言いで応じる。一方のスウィンドラーはそれを聞いてから(ネネ子の態度にかすかな演技臭さを感じ、輪花が嫉妬の対象になった可能性が高いと判断したため、警戒されないようあえて何でもないふうを装いつつ)寸時、一考し、しかして「なんでもない」「気にしないで」などと答え、計画実行の前日にもういちどコンタクトを取る、と伝えてから電話を切る。
 (この時点でスウィンドラーはキトンと輪花が図書館での邂逅以前になんらかの形で接触を果たし、結果として「自分を狙っている(とネネ子が勝手に思っている)女性を排除したい」というネネ子の願望によって輪花はネネ子の意のままに動かされているのかもしれない、と考える。
 よってスウィンドラーはここから事務所にも戻らず、夜を徹してネネ子の監視を始める。そして(すでにネネ子が適当な悪党に輪花の始末を依頼した後だったために)目立った動きが見られないとして監視を一時中断、暗殺計画を進めるべくコウキとの接触を図るに至る。
 ちなみに例のショットバーにスウィンドラーがいたのは、そこがスウィンドラーら懲悪グループにとっての得意先であり、休憩するにうってつけな安全地帯であったため。もちろん、補充をしたがるであろうコウキのことも考えての場所のチョイスである)
・同日、ベンツの車内にて「真白の仕事人の調査」の依頼主である烏野の傀儡師に経過報告のため呼び出されていた錬磨は、あらかじめ渡された情報を利用し、首尾よく真白の仕事人に関与しているとおぼしき女と接触を果たしたことを烏野の傀儡師に伝える
・錬磨からの報告を受けた烏野の傀儡師は、背後に烏野組がいることに感づかれていないまではいいが、調査の手段が迂遠である、と一蹴する
・次いでなんのためにあの前金があると思っている、と烏野の傀儡師は言を荒らげる。対して錬磨は内心にて、相手が自分の学校の後輩、すなわち未成年の学生なのだから金を握らせるようなあまりに羽振りを利かせるやり方ではかえって怪しまれるだろうに、と思いつつ、口ではわかっている、などと烏野の傀儡師に同調する
・そうして烏野の傀儡師から、次の報告は三日後だ、と告げられ、いよいよ解放されようという中、錬磨はベンツの窓越しに、柄の悪い男に担がれながら車の中へと運ばれていくベージュのボブを目撃する。錬磨はすぐに、その人物が須佐美輪花であると感づく
・錬磨はただちに烏野の傀儡師に引き返すよう切り出し、たった今通り過ぎた車のほうに向かってくれ、と伝える。当然、子どもの突飛な命令に従う筋合いはなく、烏野の傀儡師は突然ばかを言うな、などとすげなく返す
・対して錬磨は、今さっきあの車に女子高生が連れ込まれたんだ、と話し、烏野の傀儡師はそれがどうした、と返す。対して錬磨はその女子高生こそが現在進行形で調査に利用している須佐美輪花なんだ、と声を荒らげる
・それを聞いた烏野の傀儡師は、片側一車線にもかかわらず即座にハンドルを切り、それを先に言え、などと怒声を浴びせつつ来た道を引き返す。見ると誘拐車はすでに発車しており、ベンツとの距離は相応に離れているように見える
・しかし烏野の傀儡師は道交法を含め、そんなことを意にも介さないような走りで誘拐車に追いつき、次いでグローブボックスからサプレッサー付きのオートマチック式拳銃を取り出し、後ろから誘拐車のタイヤを造作もなく撃ち抜いていく
・左右両方のリヤタイヤをパンクさせられては満足に走行などできず、誘拐車はわけもわからぬうちに速度を落とし、やがて路肩へと停車する。
 それを確認した烏野の傀儡師は誘拐車の前方へとすばやくベンツを止め、降車。ためらいのない所作で誘拐車の運転席にいた男へ、まわりにほとんど見えないであろう、実にコンパクトな構えで銃口を向け、一言「そこの女をよこせ」と告げる
・運転席の男含む誘拐車の面々はどうやら本物のヤクザに比べれば木っ端に等しい子悪党だったらしく、命乞いでもするようにすぐさま助手席からベンツの後部座席へと輪花を運び出していく
・女子高生の誘拐事件をまたたく間に解決して見せた烏野の傀儡師の手腕に驚きながらも、錬磨は自分の頼みを聞き入れてくれた烏野の傀儡師へと謝意を述べようとする。しかし烏野の傀儡師は目的のものが手に入ったとでも言わんばかりに、ここからは自分の脚で帰れ、などと錬磨に告げる
・突然の宣告にどういうことかと錬磨は尋ねる。対して烏野の傀儡師は、そこの小娘を始末するのにお前は不要だ、などと答え、殺伐とした雰囲気を放つ
・助けたわけじゃなかったのか、などと声を荒らげる錬磨を無視してベンツに乗り込もうとする烏野の傀儡師。そこで錬磨はすぐさま脚を動かし、烏野の傀儡師の前へと立ちはだかっては「それはだめだ」「そんなことをされては依頼をこなせなくなる」などと制止する
・それを聞かされた烏野の傀儡師は、幸運にも切り札《エース》が手に入った以上依頼などもはやどうでもいい、などとして錬磨の訴えをあしらおうとする。しかし錬磨はなおも食い下がる姿勢を見せながら、「たとえそちらがよくても、依頼を反故にされ、成功報酬を受け取れないようではこちらが困る」「依頼を確かにこなすには彼女の存在が不可欠だ」などと言って調査の続行とそのために必要な輪花の解放を強く訴える
・拳銃を持ったヤクザを相手にここまで己が意見を固持するとは思わず、このままではらちが明かないばかりか、近辺の人間に事態を悟られてしまう、などと思った烏野の傀儡師は、ひとつ舌打ちをしたのち、次はない、などと言い捨てて輪花の身柄を錬磨へと押しつけ、自身はそのままベンツで去っていく。
 一次はどうなるかと思ったが、辛くも錬磨は危機に瀕していた輪花を助けることに成功するのだった
・眠る輪花をバス停のベンチに座らせ、一息つく錬磨。ここで普段から迷わぬよう、即断即決を心がけていたとはいえ、なぜあのとき輪花を助けようなどと思ってしまったのか、などと自問自答する。
 確かに現状においては真白の仕事人の関係者たる輪花を利用するのは、仕事人の調査においてもっとも簡単かつ合理的な手段であろうことは間違いない。さりとて依頼については前金だけでも充分な額であり、依頼を中断させられても前金さえあれば当面の生活をそれなりに楽に過ごせる。たとえ悩むのを後回しにしたとしても、それぐらいはわかっていたはずだ、と錬磨は思い返す
・いったいなぜ、自分はヤクザ相手に啖呵を切ってまで輪花を助けてしまったのか。結局のところ、錬磨には自分の行動の理由について、これだと言える理由を見いだせそうもなかった
・そのタイミングで輪花は目を覚ます。とっさに輪花は自分が何者かに襲われたのだと思い出し、周囲をすばやく確かめ、目に入ってきた錬磨に驚きながら警戒をあらわにする。対して錬磨はせっかく助けたというのにそんな態度を取られるのは心外だ、などと語り、誘拐されそうな輪花をたまたま目撃したため知り合いと協力して助けたのだ、とこれまでのいきさつをぼかしながら説明する
・それを聞いた輪花は、いぶかしみながらも、結果として安全なところにいることから錬磨の言を飲み込み、ひとまずの謝意を述べる。そんなものは毛ほども求めていなかった錬磨は、ささやかなむずがゆさを覚えつつも適当に言葉を返す
・そこで輪花は口を閉じ、ひたと錬磨を凝視する。いったいなんだ、などと錬磨が尋ねると、輪花はどうして副会長が自分のジャケットを着ているんですか、などとさも引いているかのような声色で聞き返す
・一瞬、言葉の意味がわからず首をかしげそうになった錬磨だったが、状態のいい落とし物だったことから拾得したミリタリージャケットが輪花のものであるとすぐに察し、違う、盗んだわけじゃない、などと慌てながら拾った旨を弁明する
・(自ら脱ぎ捨てたので盗まれたわけじゃないと承知していた)輪花は錬磨の弁明を承諾しつつ、自分のものなので、ということでミリタリージャケットを返してもらう
・その直後、輪花のことをあきらめていなかったらしく、さきほどの子悪党たちが慌ただしい足取りで近づいてくるのを錬磨と輪花は目撃する。どうやら一度は手放した輪花をそう離れてはいないだろうとして探しており、まだバス停にいるこちらには気づいていないことがうかがえる
・先ほど猛威を振るった烏野の傀儡師はおらず、バスもまだ来そうにない。万事休すかと思う錬磨。すると輪花は返還されたジャケットを錬磨の頭からかぶせ、そこに自分もぐいっと入りながら、じっとしてください、などと錬磨に告げる
・錬磨の体格でも若干の余裕があったジャケットのサイズゆえか、それをかぶったふたりはやってきた子悪党たちになんら気づかれることもなく、そのまま子悪党たちはバス停を通り過ぎていく
・しばらくしてもう大丈夫だろうと判断したらしく、輪花はジャケットからふたりの頭を解放させながら、行ったようですね、などとつぶやく。当然錬磨は、なぜ自身が着ていたジャケットを見ていたはずの子悪党の目を欺けたのか疑問に思うが、すぐにその疑問は氷解する。輪花のミリタリージャケットはリバーシブルのようになっており、表地がオリーブグリーンなのに対して裏地が黒であったがために子悪党はジャケットからこちらの存在を見抜けなかったのだと
・よもやジャケット一枚でここまで隠れられるとは、と錬磨は驚きを隠せない。対して輪花は逃げるのに使うのはなにも脚だけではない、などと自慢げに、かつ愛嬌たっぷりに告げるのだった
・錬磨にこれまでのいきさつと、とある人物から真白の仕事人についての情報をクイズ方式で呈示され、その答えとなるであろう手がかりを手にしたことを伝える輪花。対して錬磨は、であれば日をまたぐまでもない、と返し、輪花も錬磨の思うところに同意する
・そして輪花はガラケーの着信履歴からネネ子へとコーリング(同時に通話モードをハンズフリー通話にする)。数秒ののちに通話を繋げたネネ子から、そちらからかけてきたということは答えがわかったのかしら、などと聞かれ、対する輪花は肯定する
・そうして輪花はネネ子と一緒に出題の時系列を確認し合い、しかして己が推理に確証を得るべく、たった一度の「質問の権利」を使ってネネ子に対して「少年の幼なじみは『須佐美桜花』か?」を質問する。
 その問いにネネ子は「イエス」と答える
・ネネ子の回答によって確証を得た輪花は、ネネ子の催促に合わせて答えは④番――すなわち『十数年後、力をつけた少年は「真白の仕事人」として幼なじみを救わなかった悪人たちを懲悪した』という段落の中に嘘が含まれている、と回答する
・ネネ子はどうしてその段落が嘘なのか、と尋ねる。対して輪花は、手がかりから導き出した推理を述べる。
 幼なじみの少女――もとい須佐美桜花が亡くなった事故の関係者を懲悪したとあったが、その父親とされていた須佐美竜苑のみならず、その娘である自分もまた生きており、現状に対して矛盾している、と
・輪花の回答を聞いたネネ子は、どういうわけかしばらくの間黙り込む(よもや須佐美桜花に妹がいたなどとは思わず、さらにはその妹がオウレットで、スウィンドラーの助手という近しいポジションに就いているなどとも思っていなかったため)。
 質問から確証を得たものの、質問できるのは一度だけ。見落としがある可能性も充分にあり、手がかりと質問から導き出した推理で問題の正誤を当てられたかは結局のところ断言できない。ゆえに輪花は固唾を呑んでネネ子の反応を待つ
・そうして数秒経ったのち、ネネ子はさも猫のように(にゃはは、みたいな感じで)笑ったのち、たった数日でよく正解できたねー、などと輪花に賛辞を送る(なお、ネネ子の想定していた答えは③番――すなわち『少年は幼なじみを救わなかった事故の関係者たちを「悪」と断じ、憎むようになった』という段落であり、幼なじみを二度も救えなかった己の無力さと、結果的に幼なじみをみすみす死なせた存在の双方を悪と断じて憎むようになったのが理由。
 よって輪花の回答は、問題そのものに対しては不正解であり、偶然輪花と邂逅したネネ子による図書館での助力もミスリードを狙っただけにすぎない。
 にもかかわらず正解としたのは、死してなおスウィンドラーの心をつかんで離さずにいる桜花の妹という、おあつらえ向きの復讐対象(もといスウィンドラーが須佐美の女と決別するという展開の演出にふさわしい生け贄)に出会えたというこの上ない感動から、解答の正誤などどうでもよくなってしまったから)
・いやにテンションの高いネネ子をよそに、輪花はスウィンドラーの正しい情報を手に入れることができた、として安堵する。一連のやり取りをそばで聞いていた錬磨は会話の流れから真白の仕事人の来歴、その一部を突き止められたとして輪花とはまた違った形で安堵する
・わざわざクイズ形式にされたにもかかわらず、輪花はスウィンドラーの情報を知ることができたとしてネネ子に謝意を述べる。対してネネ子はそういえば、と前置きしてからなぜスウィンドラーのことを調べているのか、などと尋ねる
・「脅されたあげく、自己保身のためにスウィンドラーの情報を売る必要があった」などとはさすがに言えず、輪花は言を左右にしながら、ドラさんの助手同士、お目にかかれる日を楽しみにしています、などと言いつつ強引に通話を終わらせる
・危うくぼろが出るところだったと感じ、危なかったな、などと錬磨は漏らす。しかして内心にて、真白の仕事人についての情報は手に入れたが、この程度では不充分と言わざるを得ず、さりとて先ほどの通話相手から立て続けに新たな情報を引き出すのは(輪花の不自然極まる対応のせいで)難しいだろう、と考える
・そのタイミングで到着するバス。それを踏まえて輪花は、真白の仕事人についての情報は確かに伝えた、としてさも約束は果たされたかのようなそぶりでバスへと乗り込もうとする。しかし錬磨は待て、と言い放ち、輪花の足を止める
・そして錬磨はこの程度の情報ではとてもじゃないが満足できない、などと切り出し、さりとて同じ方法でさらなる情報を手に入れることはかなわないだろう、と続ける
・対して輪花はそうであれば自分にはもうどうしようもない、として暗にあきらめるよう促す。対して錬磨は、ほかに手段がないのなら、といいながらバスに乗り込みつつ、自分自ら真白の仕事人の助手として近づき、直接情報をつかむほかないだろう、と宣言する。あまりに意想外な提案に面食らう輪花のことなどおかまいなしに……
※多分このあたりで前後編の前編終了になるかも。輪花にとっては錬磨との取引が無事に終わったかのように思えたタイミングであり、錬磨にとってはパペティアとの契約をより確実にこなせるかもしれない好機にして、輪花を迷いなく助けたことに端を発する感情の微妙かつ名状しがたい揺らぎ(なぜ心引かれているかのように輪花を意識しているのかという謎)と向かい合おうというタイミングなので……。
 ちなみにこの時点ではまだ錬磨は、自身の家系である不動家が須佐美一家に従事していたことや、祖父である不動鍛造がスウィンドラーが幼なじみを亡くした事件の関係者にして無念の被害者であったこと、そして父である不動精鋼の失踪の理由が「(精鋼にとって父である)鍛造の死は、須佐美一家、ひいては当主である竜苑の扱いに原因があったのではないかと責任追及し始めたことで、事件を掘り返されるのではないかと憂慮した須佐美一家に始末されたから」ということもまったく知らない。
 これら事実はおいおいパペティアによって知らされることとなる(予定)

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