• ミステリー
  • 現代ドラマ

スウィンドラーは懲悪せり 《桜花繚乱の一節》1【公開プロット】

~序1~
・アッシュグレーの長髪をなで、すました調子で黒のサングラスを外しながら女がひとり、中央がくりぬかれた黒い円卓へと着く。向かって左側には老翁らしからぬムラのない黒髪の男、右側には金髪碧眼だが顔立ちが日系の女がそれぞれ席に着いている。老翁は自分と同じく黒服の男をふたりほど背後につけているが、金髪碧眼のほうは不用心にもたったひとりでこの場に集まっていた
・ここで金髪碧眼がいかにも取り繕ったような片言口調で秘密の集まりに部外者を連れてくるなんて無粋だ、などと前置きし、次いで「それともかつて敵対していた組織のボスとの会合がそんなに怖かったのか」などと言って老翁と女を挑発する
・対して老翁は金髪碧眼を侵略者と称し、海外マフィア相手に油断するほうが無体であろう、と一切の隙すらのぞかせない。一方の女は内心にて、やはりこの男は金髪碧眼率いる組織「RAIL」を少しも信用しておらず、必然的に自分が率いる組織「烏野組」にもまた同様の評価を抱いているのだろう、と考える
・ここで女がここに来た理由についてなどの説明。そもこの集まりは老翁――もとい須佐美竜苑が真白市の暗部すなわち裏社会に一定の秩序をもたらす取締役のような権能を働かせるべく立ち上げた秘密結社だったこと、しかしながら自身の支配下にあった真白市の暗部に自分と金髪碧眼――もといマダム・アクトレスの組織が台頭し始めたがために、その勢いを抑止するべくこれら二勢力を「ともに真白を牛耳ろう」などと謳いつつ、体よく監視できる受け皿へと成り下がっていること、そも監視されるとわかっていながら女が繚乱会に己が組を入会させたのは真白を支配するにふさわしい近道だと感じたからであること、今こうして女が繚乱会の会合に出席しているのは竜苑に招集されたからだけではなく、あることを竜苑に尋ねるためであること、などを説明する(なげえ)
・侵略者などと称されたマダム・アクトレスは、繚乱会のファミリーになったというのにつれない、などとひょうひょうとした返事に終始する
・竜苑とマダム・アクトレスのささやかな舌戦な意に介さないといったように、女はしらけてみせる。ここで竜苑は話題を転じ、繚乱会の会合を催した理由について語ろうとする。対して女はその話に待ったをかけつつ、その前に確認しなければならないことがある、として竜苑に「真白の仕事人」について切り出す(ここでいったん場面を区切る。続きの描写は回想的に、のちの場面で……)
※サクジ率いるヤクの密売組織と烏野組はつながっていた。なのでサクジの懲悪によって連鎖的に密売組織が瓦解させられたことでヤク関連の儲けがなくなり、「真白の仕事人」の存在を無視できなくなったのがパペティアがスウィンドラーの調査(からの抹殺)に乗り出した理由である。
 ちなみに「真白の仕事人」についてパペティアはうわさ程度には把握していたが、しかし一個人ごときに烏野組のシノギが脅かされるわけがない(放っておいても困ることはあるまい)と高をくくっていたために無視されていた

~序2~
・三年になった男子高校生、不動錬磨の独白。いかなる不運や災難に見舞われようと、人ひとりが解決できることには限度があり、ゆえに自分は解決を求めず、つらくつまらない人生であろうと「迷わず」生きているのだ、と独白
・そこへ生徒会長の栗栖秋奈が声をかける。新入生にも配布する生徒会誌の最終確認作業中に錬磨がうとうとしていると気づき、副会長なのだからしっかりしなさいといった注意である
・対する錬磨は、朝早くから新聞配達しているから放課後の陽気を浴びるとつい眠くなるのだ、と弁解。そこで栗栖に、だから今朝の入学式で自分が新入生にあいさつしているときにもあくびをしていたのか、と切り返され、錬磨はバレてた? などと高校生らしい軽々しさでその場を逃れようとする
・同日の夕方、個人経営の小さな自動車整備工場でのバイトのさなか、錬磨は珍しく常連ではない黒塗りの高級車とおぼしき車がやってきたことに気づき、意識をそちらに向ける。しかし工場長から、まるでその車から自分を遠ざけるかのような雑用を命じられ、迷わず高級車への意識を自発的に逸らす
・そうしてしばらくしたあと、不意に錬磨は何者かに声をかけられる。見ると相手はアッシュグレーの長髪に妖気な雰囲気をかもす女性だった
・女性は女だてらな話しぶりで錬磨に喫煙所の有無を問う。錬磨は工場横の休憩室に喫煙台があるのでそこを使えばいい、と答える。すると女性は錬磨から顔をそらし、乗ってきた高級車のほうへと目配せする。直後、その高級車の運転席と助手席から黒服のいかにもヤクザっぽい男がふたり降りてきて、錬磨が言った場所を向きながらあごで男ふたりをそちらへ向かわせた
・自分が吸うわけじゃないのか、とこぼす錬磨に女性は人の車に悪臭を染みつかせるような粗雑な部下を持つと苦労する、と冷たく答える
・男の格好に部下という発言まで出てきたことでとっさに錬磨はこの女性がやばい系の人間だと考え、黙々と作業を再開する。そこへ女性が錬磨の若さに気がつき、こんなところで勤務するには若年にすぎる、仕事は相応なものを選択すべきだ、と指摘する
・対する錬磨は客との会話は自分の仕事ではない、として関わり合いを暗に拒絶。しかし女性はサービス業の範疇だ、と一蹴したのち、不意に不動鍛造はどうしている? と錬磨に尋ねる
・錬磨は自身の祖父の名前が出てきたことに驚きを隠せない。とっさになぜを聞き返そうとするも、しかしこのような怪しい人間とかかわりを持ってよいものか、と思い立ち、またも迷うぐらいなら、としてあなたには関係ない、とすげなく応じる
・その反応をどう受け取ったのかはさておき、女性は表情ひとつ変えずに黙ったまま錬磨に目を向けるも、工場長から呼ばれたことですんと身をひるがえし、己が高級車へと戻っていく
・それから錬磨のバイト先のひとつである自動車整備工場に女性がたびたび顔を出すようになったこと、そのたびに錬磨に声をかけてくること、錬磨は迷わず拒絶を繰り返したこと、その過程で女性が「烏野の傀儡師」を自称していたことなどを説明する
・生徒会誌が完成し、翌日配布するそれを生徒会室の栗栖が眺めていた放課後のある日、錬磨はふと栗栖にリムジンに乗ってる黒服の人間ってやっぱりやばい系の人だよな? と投げかける。対して栗栖はなにそれ? といいつつ、そのイメージだとまっさきに連想するのはハリウッドのスター俳優じゃない、と答える
・イメージの相違に疑問を呈する錬磨。対して栗栖はイヤホンを片方外しながら、錬磨が言っている車はリムジンじゃなくてベンツじゃないか、と尋ねる。錬磨もその問いから自身の誤解に気がつき、合点する
・そうして納得した栗栖に錬磨は、自身のバイト先に最近よく黒塗りのベンツに乗ったいかにもな人たちが出入りしていて、うちひとりの怪しい女にやたら絡まれてて困っていることを何気なく話す。栗栖は新聞配達のときにその人たちのところに配達し忘れたのかもね、と冗談交じりに答えつつ、たとえ絡まれ続けても悪い人とは変にかかわっちゃだめだよ? と優しげに注意する
・栗栖からの言葉を受け止めつつ、錬磨はさらにふと、気がついたかのように「そういえば」と前置きし、今朝の新聞に今栗栖が聞いているガチサクのサクジが警察に捕まったという記事が載っていたことを栗栖に伝える。栗栖は鳩が豆鉄砲を食ったようにとまどいを見せる。そこへ錬磨は悪い人が作った曲(とのかかわり)はセーフなのか? と投げかけ、さらに栗栖を煩悶させていく
・そこで錬磨の独白。自分にとって大事なことだからといって、こだわりすぎていては迷うばかりか苦しんでしまう。であれば初めから迷うことなどせず、マイナス思考とは真逆の考え方で自分を納得させてしまったほうが楽なのに――と胸中にて錬磨はつぶやく
・帰宅した錬磨は昭和じみた居間で狂的に祈祷をささげる母親を視界にとらえ、嘆息する。ここで錬磨の母親がハイッセム教団なるきな臭い宗教を盲信していること、その原因が八年前に起きた父親の失踪にあり、愛する父親が生きているかもしれないと思うあまりここまで狂ってしまったこと、などを説明
・ここで錬磨の独白。錬磨自身も父親の安否を気にしていた時期があったものの、自分を置いてみるみる狂っていく母親を目の当たりにして恐れを抱き、もう何年と父親が帰ってこない現実から目を背けながら「生きているかもしれない」と気迷っていてはいけないと感じ、であれば迷わぬよう無理にでも物事を判断していくほうがずっとマシだろうと結論づけたことを独白。
 大黒柱の喪失により一転して苦しくなった家計も、自分たちの生活のためにこなさなければならない朝晩ふたつのアルバイトも、自分の時間はおろか数少ない友人との時間でさえまともに取れない忙しさも、すべては仕方のないことだと、そう錬磨は考えていることを独白させる
・ひとまず錬磨は母親に声をかける。だが、母親は応じることなく祈祷を続ける。いつものことかと錬磨はあきれつつ、やむなく今月分の家賃をちゃぶ台に置きながらその旨を伝え、錬磨は自室のふすまを開ける
・壁掛けの学校制服や畳に直置きの教科書類などを除いて、ろくすっぽ私物がない錬磨の自室。ふすまを閉め、しかして壁に学生かばんを立てかけたそのとき、ふと錬磨の目に机代わりの段ボール箱と、その上に置かれた茶封筒が留まる
・おおかた自分が学校にいる間に投函され、母親がこちらに置いておいた奨学金絡みの書類だろうと思いつつ、錬磨はその封筒を手に取る。しかし予想に反してその封筒には差出人が印字されておらず、ただ裏に自宅の住所と「不動錬磨様」の活字体が印字されているのみだった
・不審に思いつつも、届いた以上は迷っていても仕方がない――そう思って錬磨は封筒の封を切る。そうして取り出した一枚の紙に目を通した錬磨は直後、一驚を喫してしまった(茶封筒の中身は「『真白の仕事人』なる人物の調査依頼書兼契約書」であり、烏野の傀儡師と書かれていたことから依頼人はあの女性だということがわかる。錬磨が驚いたのは前金で100万、成功報酬で200万という常識の埒外的な契約料が明記されていたから(これほどの大金をパペティアが支払おうとするのは、スウィンドラーによって第二第三の資金源を潰されると仮定した場合の損失より、スウィンドラーの始末のためにここで費やす必要経費のほうが結果として安くすむと考えたため)。
 依頼書の中には『真白の仕事人』に関する限定的な――髪の色やごく少数の目撃例といった――情報が含まれており、中には仲間のひとりとして(不動家とつながりがあった)須佐美一家の次期当主たる娘がいるといった情報もあった。だから二重の意味で錬磨は驚いてしまった。
 なお、この時点ではこれらの描写は行わない。物語が進むにつれて段階的に明かすこととする)
・その日の夜、バイト先である自動車工場へと足を運ぶ錬磨。この時間の工場はとっくに終業しており、シフトも入っていないため仕事をしに来たのではない。仕事を請負に来たのである
・錬磨が工場の敷地へ踏み込むやいなや、自動車のヘッドライトが闇夜を切り裂く。それはあの黒塗りの高級車が発したものであり、言わずもがなそこにはあの女性の姿もあった
・高級車のボンネットに腰を下ろす女性を前に、錬磨は逆光に負けじと自室にあった茶封筒の書類を突きつけ、単刀直入にこれが女性による仕業であり、かつこの書類――もとい契約書は確かなものなのか、問い詰める。対する女性は目配せひとつで後部座席から部下を出し、その部下から札束が詰まったアタッシュケースを錬磨に確認させる。
 ここで錬磨のもとに送られた契約書に契約成立時に前金100万、依頼成功時に200万支払われると明記されていたこと、高級車を所有するぐらいなのだからこの大金もおそらくは本物であろうこと、大黒柱を欠いた自分たち親子にとってこの大金は到底無視できるものではないことなどを説明する
・女性は契約するか否かを端的に問う。対する錬磨は逡巡をいとうように契約すなわち「『真白の仕事人』の調査」を引き受けると答える
・錬磨の即断が意外だったらしく、女性はこれまで代わり映えしなかった表情、口元をかすかにゆるめ、であればといった感じでアタッシュケースから100万円分の札束ひとつをつかみ、錬磨へと投げ渡す。そしてこれは前金である一方で調査費でもあると伝え、母親に食いつぶされないよう気をつけろと皮肉るように忠告する
・用が済んだと言わんばかりに撤収しようとする女性。そこで錬磨は彼女を呼び止め、あるひとつの疑問――女性が何者なのかについて尋ねる。対する女性はすでに承知しているだろう、とつまらなさそうに応じる。諸悪を寵する烏野の傀儡師である、と――

~破1~
・スウィンドラーとジェミニによるひき逃げ犯の懲悪の折に、結果としてピンチに陥っていたスウィンドラー(とコウキに手を汚してほしくないミツキの心)を救えたため、仕事人の助手として自信がついていた輪花。その気持ちが顔に表れていたのか、一緒に登校していた友人、田畑美乃里から、なにかいいことでもあったのか、などと尋ねられる。もちろん公然と口にできる事柄ではないので輪花は「人の役に立てた」などと言を左右にする
・輪花の回答をいぶかしみつつも、さして興味がなかったらしく美乃里はさらりと話題を転ずる。輪花たちの通う卯木高校では六月に体育祭が行われるが、その種目がひとつである200メートル走にふたりの友人である越前秀斗がエントリーしていた、と美乃里は輪花に語る
・次いで美乃里は、秀斗が最近一緒に登校しないのは一足先に登校して練習しているからだ、と語る。野球部なのにやっていることはまるで陸上部だ、として輪花はそのちぐはぐさに笑みをこぼす。
 ここで美乃里と秀斗について簡単に説明。ふたりはそれぞれ中学、小学で親しくなった友人であり、輪花の家系についても寛容な姿勢であるため、輪花にとっては貴重な親友であることを説明する
・そんな美乃里との会話も、登校する生徒の人混みが見え、校門をくぐり、下駄箱で靴を履き替えたところで幕引きとなる。美乃里は昼休みにご飯を食べるときは秀斗も連れてくるから、などと言って輪花にいっときの別れを告げる
・ここで学校における輪花の状況について説明。髪を染めてもとがめられない程度に(悪い意味で)奔放な高校につき、ベージュのボブ以外に目立った特徴がない輪花はクラス内ではいい意味で目立たずにいられていること、まわりの空気を読みつつ適度に媚びているため対人関係でトラブルを抱えてこそいないものの、その実腹を割って話せる友人は美乃里や秀斗を含めてたったの数人しかいないこと、それでも輪花にとっては生まれ育った混沌などよりはるかに過ごしやすく、およそ外敵と呼べる存在がいない環境なので個人的には有意義かつ平和な青春を送っていること、などを説明する
・自分の教室へとやって来た輪花。すると中では生徒会と思われる生徒が生徒会誌をクラスメイトに配布しようとしていた。ここで輪花はいつものように媚びて取り入る感じでその生徒会関係者に生徒会誌の配布を手伝います、と言いながら生徒会誌の一部を手に取る。対する生徒会関係者はなにやら驚いたようなそぶりを見せる(ここで錬磨が驚いたのは、パペティアから写真で見せられていたスウィンドラーの仲間である須佐美輪花が、よもや自校の新入生だったとは思っても見なかったため)
・生徒会関係者は一言簡単にお礼を言いつつ、ベージュのボブを指してなかなか冒険してるね、などと口にする(動揺を悟られないための精一杯の社交辞令)。対する輪花は生徒会であろう男子生徒が注意しようとしているのかもしれないと感じ、とっさに謙遜しつつ生徒会誌の配布作業へと移行する
・その日の昼休み。輪花は美乃里ともうひとりの友人、越前秀斗を交え、昼食を取っていた。輪花の昼食は購買部で買ったコロネ、あんパン、メロンパンといった、いくつもの菓子パンと紙パックの苺オレ。ここで秀斗は輪花の大食いについて軽口を述べつつ、今まで金欠を理由にここまで豪勢な昼食は取らなかったのに、最近はどういうわけかよく買っているな、と疑問を呈する
・対する輪花は(よもやスウィンドラーの助手として事務所に住まわせてもらっているため宿泊費が浮いたことや、給料という名のお小遣いをもらっていることなどを明かすわけにもいかず)動画配信で思いのほか稼げている、とあらぬ事を理由にでっち上げ、実情をごまかそうとする
・そんなうまい話があるものか、といった感じでいぶかしむ秀斗は美乃里にも話を振る。しかし美乃里はさして興味がないらしく、野菜も食べないとだめじゃんねー、と話題に無関係な所感を鷹揚に述べる
・輪花ら三人が歓談する中、唐突に校内放送が入る。それは「生徒会室に来てください」という生徒会から輪花へ向けられた放送だった
・突然の呼び出しに輪花は首をかしげ、秀斗は点と点がつながったな、などと言って悪いことでお金を得たことが学校にバレたんだろうと輪花をからかう。もちろん輪花は身に覚えがないとしてしらを切る(ただ当たらずとも遠からずといった感じなので、内心ではひやひやしている)
・輪花は昼食をすばやく平らげ、苺オレ片手にその場をあとにする
・生徒会室の前までやって来た輪花。扉をノックしつつ入室すると、そこには棚に寄りかかる男子生徒とその男子に注意する女子生徒の姿があった。
 話の内容から男子は生徒会の副会長、女子は生徒会長であることを輪花は理解する
・輪花に気づいた生徒会長はそこで言葉を切り、一転して朗らかな調子で輪花に適当な椅子にかけてどうぞ、といった感じで案内する。そも呼ばれた理由がわからない輪花は不思議あるいは不安に感じながらも言われたとおりにする
・ここで輪花は注意されていた副会長が今朝、輪花のクラスに生徒会誌を配りに来ていた生徒会関係者であることに気がつく
・生徒会長は今朝の副会長に対して、今後はこういったことはないように、と釘を刺してから退室する。それを見送ってから副会長は輪花へ目をむけ、まずは突然呼び出したことについて軽くわびを入れる
・言われた輪花は適当に受け止めつつ、自分が呼ばれた理由について尋ねる。そこで副会長はふと扉まで歩みだし、その内鍵を閉めつつ扉を背にして輪花へと向き直る。そして(あえて強気を装ってから)一言、須佐美さんは実は家出しているよね? などと問いかける
・よもや校内の誰にも話していない家出のことを聞かれるとは夢にも思わず、輪花は瞬時に動揺する。それでも気を取り直し、すぐになにを言っているのかわからない、などとしらを切る。対して副会長は(なおも強気の姿勢で)須佐美家がどういった家柄なのかについて調べがついている(半分はったり)と語りつつ、生徒の学校生活をよりよいものにする使命を背負う生徒会の人間としてはこの事実は見過ごせず、ともすると学校と連携して輪花の両親に連絡を入れることになるだろう、と告げる
・輪花にとってそれはとても困ることであるがゆえに、輪花はそれだけは……、と苦悶の色を浮かべる。対して副会長はそれがいやならひとつ取引をしよう、と輪花に返す
・媚びることで穏便に済ませられるなら(好きではないが)やぶさかでない――そう思った輪花だったが、副会長の「もし家出のことを暴露されたくなければ、真白の仕事人について調べてほしい」という意外すぎる提案に驚かざるをえなかった
・どうして真白の仕事人なるワードを知っているのか、どうして自分とスウィンドラーの関係を知っているのか――あまりに謎めいた副会長の発言に輪花は混乱する。そこに追い打ちをかけるように副会長は、この取引に応じなければ家出の件はすぐにでも露見するだろう、として時間的猶予を与えないという形の牽制をしつつ、次いでたかが知り合いひとりの素性を調べるだけで片付くなら須佐美さんにとっても悪い話ではないはずだ、とたたみかける
・輪花は副会長の言に、内心で同意する。自分にとっての最悪とは家出の事実を学校に知られ、公的かつ強引に混沌そのものである自分の家に帰されることであり、それに比べれば(悪道にいざなった張本人であれど)自分に寝食に困らない居場所をくれたある種の恩人たるスウィンドラーを売ることなど些事にすぎない。輪花はすぐにそう結論づけるも、それでもすぐには首を縦に振れなかった
・引き延ばされた寸時のさなか、輪花は苦渋の決断として副会長の提案を受け入れる。そこで副会長は取引成立だ、などと口にしつつ、自己紹介代わりに自分は不動錬磨だと軽く名乗る。かくして輪花は不意に襲った秘密の暴露から身を守るべく、真白の仕事人に対する利敵行為へと走るのだった
※偶然にも自校の新入生に輪花がいることを知った錬磨は、輪花と接触し、輪花が家出していることを須佐美の人間にばらされたくなければ『真白の仕事人』について教えろ、と脅す(これより前の時間軸、パペティアとの契約時に置いて、錬磨はパペティアから「輪花は家出しており、須佐美家が目下捜索に当たっている(らしい)」ことを聞かされている。
 ちなみに輪花は家出の際に「連れ戻そうとすれば須佐美家の悪行を公にする」といった文言を置き手紙に残している。おかげで父、竜苑は学校や警察を介しての表立った捜索ができずにいるため、パペティアが言う「目下捜索に~」というのは半分間違っている。ぶっちゃけ繚乱会で知った断片的情報から推測した出任せである)
※輪花から『真白の仕事人』はスウィンドラーと名乗る謎の男性で、懲悪を目的として過激かつ危険な仕事をしていることを突き止める。そこで錬磨はさらなる情報を得るべく、助手をしているという輪花をつてとして自らもスウィンドラーの助手にさせろ、と持ちかける(もちろん逆らえばばらすぞ、という脅し付き)
※輪花は寸時逆らうことさえままならず、なすがままに錬磨の要求を飲んでしまう(のちにスウィンドラーと邂逅させてしまうが、もちろんそのときも口裏合わせをさせられる)

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する