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スウィンドラーは懲悪せり 《マルチプル・フェイス》2【公開プロット】

「第二幕後半」
~最も危険な場所への接近~
①日常の世界(サブ5)
・ところ変わって、とあるホテルの地下駐車場。ワゴン車の中で狙撃銃をタオルで磨くジェミニに、使わないと言っただろうに、と言いながらスウィンドラーは缶ジュースを手渡す。対してジェミニは取り逃がすことがあればそうも言ってられないだろう、と返す
・事務所を出てから丸二日、殺人ドライバーにこれといった動きはなく、スウィンドラーはすっかり気抜けしていたが、ジェミニはなおも気を張りつめていた

②冒険への誘い(サブ5)
・そんなジェミニにスウィンドラーはふと気晴らしでもするように「新しいお姉ちゃん(輪花)はどうだった?」と尋ねる。対してジェミニは「こんなやつに振り回されて、つくづく気の毒に思う」とあおるように答える

③冒険への拒絶(サブ5)
・スウィンドラーは、輪花はあれでなかなか人好きのする性格だとして、甘えてみるのも悪くないぞ、とあおり返す。しかしジェミニは、だからこそ人にすがったり媚びるしかない――すなわちスウィンドラーのようなエゴイストに利用されるほどの弱者になってしまうのだ、と持論を述べる

④メンターとの出会い(サブ5)
・そしてジェミニは、自分はそんな人間を認めたくないし、なりたくもない、さらにはそんな弱者を苦しませ、あげく死に至らしめるような人間なんて許したくもない、と続ける

⑤第一関門(サブ5)
・そんな折、車中ラジオの音楽番組が突如として速報を報じる。それは件の殺人ドライバーがとある高速道路に出没した、という火急の知らせだった
・緊急速報を耳にしたスウィンドラーは「幕間の時間(インターミッション)は終わりだ」「であれば、なおさら懲らさないとな」とジェミニに目配せする。応じたジェミニがワゴンのドアを締めるやいなや、スウィンドラーは高速バックで方向転換。タイヤを甲高く鳴らしながら地下駐車場を(料金所の開閉式バーをなぎ倒しながら)飛び出した(そしてジェミニに「そういうとこだぞ」と(スウィンドラーのエゴイストぶりを)非難される)

①日常の世界(サブ6)
・車を暴走させる殺人ドライバーは、前方の車をあおるだけあおったのち無理やりな車線変更をしながらその車を抜き去る。真白の警察の対応がなおざりなのをいいことに高速道路をまるで私道のように思い、速度に快楽を求めていた

②冒険への誘い(サブ6)
・まるで下々に好き勝手できる上級国民のような感覚に高揚しきりの殺人ドライバーだったが、そのとき唐突にクラクションが鳴ったかと思いきや、一台のワゴン車が暴走車の後ろ4~5メートルあたりにぴたりと追走してきた
・どこか気に入らないと感じた殺人ドライバーはあおってやろうとして、不意にスピードをゆるめて車同士を追突させようとする

③冒険への拒絶(サブ6)
・しかしワゴン車はまるでそのもくろみを読んでいたかのように、全く同じタイミングでスピードをゆるめ、激突寸前の位置でこれまたぴたりと止まってみせる

④メンターとの出会い(サブ6)
・なにが起こったのかと驚きを隠せない殺人ドライバー。そのとき、ワゴン車の運転手――スウィンドラーが車窓から顔を出す(ここで異常事態の原因がスウィンドラーのせいだったことを描写する)

⑤第一関門(サブ6)
・そして「悪いねじいちゃん、ぼくにそっちの趣味はなくてね」「そんなにお釜がさみしいならパンダ(パトカー)に掘ってもらいなよ。電話してあげようか?」などと言ってスウィンドラーは殺人ドライバーを思いきりあおって見せる
・そんなスウィンドラーを前に怒りが頂点に達した殺人ドライバーは、すかさず車を急発進させる。合わせてスウィンドラーもアクセルを踏み、カーチェイスへと移行する

①日常の世界(サブ7)
・同日の高校にて、輪花は友人に別れを告げ、事務所への帰路を行く。スウィンドラーの留守につき実況配信の好機であったが、しかし気持ちが乗っておらず、どうしたものかと逡巡する

②冒険への誘い(サブ7)
・そうやってぶらぶら帰り道を歩きながらスマホをいじっていると、ふとトップニュースに速報があることに気づく。その速報のタイトルを目にした輪花は思わず足を止める。それは高速道路上で件の暴走車と一般車両が揃って暴走している状況をリアルタイムで報じたニュースだった

③冒険への拒絶(サブ7)
・『役に立たない』として今回の仕事から外された自分にできることはない、と輪花は思い返す。だが、それでも輪花はこの二日間、片時も仕事のことを忘れられずにいた

④メンターとの出会い(サブ7)
・それは仕事から外された悔しさからではなく、役に立てない無力感からでもなく――輪花自身には形容しがたい、ペテン師への純粋な心配ゆえのことであった

⑤第一関門(サブ7)
・形容できず、また認識もできてないが、それでも輪花にとって抑えがたい気持ち。そんな衝動に突き動かされた輪花は周囲を見渡し、目に付いた今にも発進しそうなタクシーの前に立ちはだかっては運転席の窓まで駆け寄る。そして一言「乗せてください! 今すぐに!」と輪花は運転手にまくし立てる

~最大の試練~
・一方、スウィンドラーとジェミニは暴走車とのカーチェイスを続けていた。前方の暴走車が速度を落とせばスウィンドラーがそつなく速度を落として対応し、また暴走車から投げられてきた空き缶は後部座席のスライドドアから身を乗り出したジェミニがエアガンでこれまたそつなく狙撃して直撃を防ぐ。状況はスウィンドラーとジェミニの優勢だった
・あおり行為をことごとくかわされて怒り心頭の殺人ドライバーは、とうとう最終手段に出る。車線を変更し、逆走を交えて今度はワゴン車の後方へと暴走車を移動させる。そして殺人ドライバーは運転席の窓から手を出す。そこには一丁の拳銃が握られていた
・(カーチェイスにおいてこちらが終始余裕だったことから)とうとう観念したかとスウィンドラーが口にした直後、銃声と共にワゴン車のリアガラスとフロントガラスが破裂する。そしてスウィンドラーは前言撤回と言わんばかりに口笛を吹く。ここでスウィンドラーらふたりは殺人ドライバーが手にしたものがエアガンではなく、まぎれもない実銃であることを察する
・そっちがその気なら、と臆することなく後部座席に同席させたギターケースに手を出そうとするジェミニに対し、スウィンドラーは待ったをかける
・相手はその気なんだぞ、と反論するジェミニ。するとスウィンドラーは、さもあおるかのように「相手の攻撃がよく見えないなら外せばいいだろう? ――もっとも、涙目が恥ずかしいのであれば無理にとは言わないけど」と口にする。対するジェミニは馬鹿にするな、と言い返し、後方に向き直ってからエアガンを構える
・法定速度超えの速さで縦に併走する暴走車とワゴン車。迎え撃つかのように車線を変えないスウィンドラーと実銃に相対するジェミニ。やがて異質な空気をかき消すように銃声が鳴り響く。――しかし銃弾はスウィンドラーとジェミニどころか、ワゴン車にすら命中しなかった
・まるで偶然のような回避を否定あるいは確認するように続けて数発、発砲されたが、いずれの銃弾も対象としたであろうものには当たっていない。そこにスウィンドラーが「さすがはFPSの国内トップランカー様だ。よく見えていらっしゃる」と口を開く。殺人ドライバーの銃弾は、あろうことかジェミニのエアガン、そこから放たれるプラスチック製のBB弾によってことごとく軌道を逸らされていたのである
・人一倍の仕事をする――そのモットーに(スウィンドラーと違って)嘘偽りはない、と断言しながらジェミニはおもちゃを武器に実銃と渡り合っていく。そこでふとジェミニがところで、と前置きしてから「例のポイントはまだ着かないのか?」と尋ねる。いくら見えているからといっても相手は実銃にして実弾。ゲームと違ってワンミスすら許されないがために、さすがのジェミニも不満を漏らさずにはいられなかった
・そんなジェミニにおどけた調子で「いつ着くのか? ――今でしょ!」と言いながら、後部座席から自分たちを守ってくれていた助手におかまいなしでスウィンドラーはハンドルを切る。そこは地上10メートルに高架された曲がり道――もとい、前車の車体によっては曲がる直前まで見ることのかなわない魔のヘアピンカーブと呼ばれるポイントだった

~報酬~
・計算通り、ワゴン車の大きさゆえに魔のカーブが見えなかったらしく、暴走車は突如として視界に入ってきたであろうカーブの直前でブレーキをかき鳴らす。だが、無情にも暴走車は速度を出しすぎていたがゆえに、勢いを殺しきれないままガードレールに激突するのだった(ここでスウィンドラーとジェミニは、カーチェイスにおいて勝利という名の報酬を得る)

「第三幕」
~帰路~
・遠鳴りにサイレンがこだまする。幸か不幸か、暴走車はうまいことガードレールに引っかかり、すんでの所で転落しそうになっただけでぎりぎり高架に踏みとどまっていた。車中の殺人ドライバーは死の淵に瀕したためか気絶していた
・そこへジェミニが歩み寄り、背負ったギターケースをしゃがみながら下ろす。そこから取り出したのは、白でも黄色でもなく、迷彩色に塗られた狙撃銃だった
・狙撃銃を手にしたのち、ジェミニは立ち上がる。するとジェミニの目の前にスウィンドラーが立ちふさがっていた
・スウィンドラーに対して「消音器(サプレッサー)は付いている(≒殺人ドライバーを始末する)」とジェミニは宣言するも「仕事はすでに終わっている」とスウィンドラーも譲らない姿勢を取る
・悪を懲らすことに違いはない、と返すジェミニ。対するスウィンドラーに「生き地獄でさえ納得できないのか」と諭されるも、母子をひき殺された遺族の生き地獄に比べれば仮借同然だろう、としてなおもジェミニは聞く耳を持とうとしない
・そしてジェミニはためらいなく安全装置(セーフティ)を外し、槓杆(レバー)を引き、銃口を殺人ドライバー――もとい、その射線上に立つスウィンドラーへと向ける
・だが、小学生の指が引き金にかかった直後、聞き覚えのある声がジェミニもとい光輝の名を叫ぶ。ジェミニの後ろから駆けつけ、制止を訴えたのは輪花だった

~復活~
・スウィンドラーはなぜここに、と決まり切った台詞で輪花に尋ねる。そこで輪花はふたりが心配だったので事務所にあったスウィンドラーの財布から拝借した(盗んだ)クレジットカードでタクシーを使った、と答え、スウィンドラーに天を仰がせる
・次いで輪花は、たとえスウィンドラーが悪人だとしても、そんなこと(殺し)をしてはいけない、としてジェミニを説得しようとする(つまるところ、状況を微妙に勘違いしている)。輪花の勘違いを察したジェミニは(さすがにそのつもりではなかったので)弁解するか否か、と言葉を詰まらせる
・そんなジェミニにスウィンドラーは「オウレットはああ言っているけれど、君はどうだい? ジェミニ――いや、ミツキ」と、唐突に輪花が聞き覚えのない名前を口にする
・するとジェミニは体をびくりとけいれんさせたのち、狙撃銃を下ろし、懐から取り出した髪留めで前髪を頭頂部にまとめながら「血を見るのはゲームだけで結構よ」と答える。それはまるで別人であるかのように異なる態度と話しぶりだった

~宝を持っての帰還~
・後日。学校から帰った輪花は、いかにも自宅にいるような服装(素足にTシャツ短パン、首にゴーグル)のままゲームに興じるジェミニもとい『ミツキ』を目の当たりにする。あれからコウキは仕事の話をする以外は相変わらず事務所に顔を出さずにいるが、なぜかミツキのときはたびたび事務所に現れるようになっていた
・手探り感のある調子でミツキにあいさつする輪花。しかしミツキは目配せすらせず、ヘッドホンを付けたままスマホでひたすらほかのFPSプレイヤーをキルしていく。聞こえていないのだろうとか邪魔してはいけない、などとして輪花は同じく事務所でテレビを見ながらくつろいでいたスウィンドラーの近くに腰かける
・「ミツキちゃん、最近よく来ますね」的なたわいない会話ののち、輪花はスウィンドラーにジェミニが二重人格なのは本当なのか、と尋ねる。スウィンドラーは解離性同一性障害すなわち多重人格者なのは事実だと前置きし、ミツキいわく彼女はコウキの双子の姉だということや、「傭兵」はコウキの仕事で「FPSプレイヤー」はミツキの仕事であること、主人格のコウキは多重人格そのものは認知しているものの中身が姉であるとまでは知らずにいることなどを輪花に説明する(ついでに以前からまれによくミツキは事務所に足を運んでいたが、これくらいのペースで来るようになったのは輪花の助力によってあの事件が解決した後からだ、とも説明する)
・そこで輪花はふと、多重人格が姉ということは潜在意識的にお姉ちゃんが欲しかったのだろうか――などとうきうきで妄想を公言する。するとスウィンドラーは、戸籍上は独り子だが、確かにコウキには双子の姉と呼べる存在がいた、と唐突に切り出す
・突然の情報にとまどいを見せる輪花を意に介さずに、次いでスウィンドラーは、ひょっとするとコウキは多重人格ではないかもしれない(姉の幽霊に取り憑かれているかもよ?)と、さもホラーチックに語り聞かせる
・怪談じみた話にたまらず輪花はかばんをスウィンドラーに投げつけ、夏まで怪談は禁止だ、と命令する。ほおをふくらませる輪花と、威厳のかけらもない土下座を繰り返すスウィンドラー。そんなふたりの話に「あんなところに駆けつける度胸があるのに、そういう話は怖がるのね」とミツキが割って入る
・対して輪花は「人にはいくつもの側面があるの!」とため口でミツキに訴えかける。しかしミツキは「言い訳なんかしていけないんだー」などと年上の輪花をなおもからかう。そんな年下の先輩を前に、輪花はいつまでもふくれっ面をするのだった
・謎の人物(ミツキ)の独白。生まれる前に殺されてしまったとしても、とか、償いが無意味だとしても彼はそうするのだろう、とか、ならば彼が後ろを振り向かずに生きていけるまでそばにいてあげたい、とかそんな感じ

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