• ミステリー
  • 現代ドラマ

スウィンドラーは懲悪せり 《マルチプル・フェイス》1【公開プロット】

「第一幕」
~日常の世界~
・謎の人物(コウキ)の独白。殺してしまったかもしれない、とか、償いが無意味だとしたらどうするべきだろうか、とかそんな感じ(殺人ドライバーの独白であるかのようにミスリードさせる)
・スウィンドラーが留守の隙を狙って二次配の「みわわ」として配信する輪花。ひょんなことから悪の片棒を担がされることとなり、今後の生活に不安を抱いていたが、相変わらず熱狂的なファンたちがお布施をしてくれることに安堵しつつその日の配信を終える(配信はFPSの実況であり、野良パーティの中にはプレイヤーネーム『G-2』も含まれていた)(配信途中で輪花がトップキルの『G-2』に「ありがとー」と言ったのに対して、その時点で部屋入り口にいたジェミニもとい『ミツキ』は「どういたしまして」と発言する。もちろん輪花はこの時点では気づいていない)
・ただ、お布施の額面的には未だ独り立ちはかなわず、スウィンドラーの事務所に居候させてもらえなければ金銭的に厳しい、という現状は変わらない。輪花は配信を切っていることを確認してから深いため息をつき「かったるいなあ」と愚痴をこぼす
・そこに、いつからいたのかわからない子どもから(配信中はあれほど猫なで声で媚びていたのに、いざ配信が終わると一転してうざがった輪花の態度を指して)「『キトン(Kitten)』の名前は伊達じゃないね」などといやみっぽく言われ、自分の配信が見られていたという事実に気づいた輪花は発狂する
・落ち着きを取り戻したのち、自分は子どもの言う「キトン」ではなく「オウレット」だと輪花は説明。「フクロウのくせに猫をかぶるのか」とそれはそれでいやみっぽく返した子どもは、自分がスウィンドラーに「ジェミニ(Gemini)」と呼ばれる小学生、抽冬光輝(少し言葉を詰まらせつつ、「ぬくとう『こうき』」)であると自己紹介する。合わせて輪花も本名で自己紹介する。光輝はそこに二次元配信者もとい二次配のみわわでもある、とあげつらうように補足する
・そこにスウィンドラーが買い出しから帰宅(ここでジェミニは『ミツキ』から『コウキ』へと交代)。久しぶりにあったジェミニに抱擁を求めるがジェミニはこれを拒否。負けじと返す刀で輪花に慰めてもらおうとするスウィンドラーだったが、これまた輪花にも拒否される。ここで「自分には心のオアシスがあるからいいもん」とすねつつスウィンドラーは自室に閉じこもる

~冒険への誘い~
・固く扉を閉ざしたスウィンドラーにジェミニは馬鹿なことをしてないでテレビを点けろ、と命令する。返事のないスウィンドラー。一方で輪花はテレビに何があるのかと思い、何気なくテレビの電源を入れる。流れたニュースで緊急速報として大々的に報じられていたのは、真白市の高速道路の至るところでスクラップと化した車という車、道路の端々で同じように血を流しながら倒れている人という人――すなわちあまりにも痛ましい複数台の同時的交通事故の様子だった
・凄惨なニュースに驚きを隠せない輪花。そんな彼女をさておいて、ジェミニはドアを蹴りながらこの交通事故にはあおり運転によって事故を引き起こした犯人がいるのだから仕事をするべきではないのか、とスウィンドラーをせきたてる。対するスウィンドラーはいくら無能といえども、これだけ大々的に報じられているのだから一週間もすれば警察が犯人グループを捕まえるだろうと楽観的姿勢を見せる
・そこへジェミニが声を荒らげて反論する。このあおり運転犯は数か月前から悪質なあおり運転によって複数の車に事故を起こさせるばかりか、無辜の母子ふたりを白昼堂々ひき殺した凶悪なひき逃げ犯でもある――と
・『母子ふたりをひき殺した』――。その一言を聞き届けたスウィンドラーはだしぬけにドアを開け、ジェミニに「それが理由か」と尋ねる。対するジェミニは返事もうなずきもせず、ただスウィンドラーをにらみつける
・そこでスウィンドラーは助手たるジェミニの意を汲むかのように「やっぱり無能はだめだな」と同調して見せ、殺人ドライバーの懲悪を宣言する

~冒険への拒絶~
・そんなこんなで話がまとまったかのように見えた直後、輪花はまた危険なことをするのかと難色を示し、スウィンドラーはさておきまだ子どものジェミニにまで仕事はさせられないと訴える

~メンターとの出会い~
・しかしスウィンドラーはそんな子どものジェミニがわざわざ仕事を持ってきたということは、お金に困っているすなわち生活に困っているからではないのかと問いかけ、生活に困った者がどんな目に遭うか自分自身よくわかっているだろう、と(事実無根の出任せをもって)輪花を揺さぶる
・ならば自分が、と言いかけた輪花だったが、しかしかくいう自分も仕事を手伝うという条件付きでスウィンドラーにやっかいになっている(しかも他人の生活費を工面できるほどのお金もない)。つまり自分ひとりの力ではジェミニの助けにはなれない、と気づき、どうしたものかと逡巡する

~第一関門~
・そんな輪花に目もくれず、ジェミニは「特にお金に困っているわけでもないが――」と前置きしてからスウィンドラーに前金として五十万を要求する。不意の銭ゲバ発言に輪花は驚きを見せ、スウィンドラーも「僕たち仲間じゃなかったのか!?」とわざとらしく情に訴える
・しかしジェミニは、自分はスウィンドラーの仲間でもなければ助手でもなく、あくまで契約に応じて働く「傭兵」であると強調する
・せっかくジェミニのために重い腰を上げたのに、と肩を落とすスウィンドラーは、しかしためらうことなく懐からクレジットカードを取り出し、ジェミニへと手渡す
・無駄遣いするんじゃないよ、と母親よろしくふざけるスウィンドラーに、子ども扱いするな、と怒りをあらわにしながら用を終えたと言わんばかりにジェミニは事務所をあとにしようとする
・そんなジェミニの手を引き、せめて危険な役目は自分がやるからと輪花は精一杯の覚悟を伝える
・対するジェミニはとても輪花に自分の代わりが務まるとは思えないと前置きしつつ、ただ仕事人の助手でありながらそこまで本気になって人の心配をするのは珍しい、として、そんな輪花の実力のほどを見せてもらおうかな、と婉曲に輪花の(危険なことはしないでほしい、というような)要求を認める

「第二幕前半」
~試練・仲間・敵対者~
①日常の世界(サブ1)
・直近の事故現場近辺の道の駅にて、輪花はカレーとタピオカミルクティーを飲み食いしながら(道の駅の利用者数組から聞いた限りでは)殺人ドライバーらしき車の目撃情報はなかったとスウィンドラーに報告する。一方のスウィンドラーはATM扱いされてつらい、と嘆く(「花の女子高生にATM扱いされるのも、なかなかどうして」「――悪い、やっぱつれぇわ」)も、光輝にカードを手渡しする程度にはお金があるんだから大丈夫でしょ、とすげなく輪花に返される
・それに対してスウィンドラーは、あのクレジットカードは詐欺被害に遭った債務者のカードが一枚であり、自分の資産ではないとへりくつを述べる
・そも詐欺被害に遭った人のカードをどうして持っているのか、そんな状況下にあれば誰だって利用停止手続きを行うのではないか、と疑問を呈する輪花。するとスウィンドラーは買い出しがてら拝借してきたものなので異変に気づくであろう明日までは使えるでしょ、と返す。ついでにカードの持ち主は悪名が高い上級国民様の奥方であり、それを使うのは仕事もとい懲悪の一環にも繋がるから問題ないとスウィンドラーは付け足す
・さすがの暴論に輪花はそういうことはよくない、と苦言を呈する
・そこでふとスウィンドラーは、人にはいくつもの側面があり、世のため人のために懲悪の限りを尽くす仕事人でさえ見方によっては善にも悪にもとらえられてしまうものだ、と告げる。しかし輪花は煙に巻こうったってそうはいかない、と返しつつ、しかし腹が減っては何とやらだ、として店員にパフェを追加注文する

②冒険への誘い(サブ1)
・腹ごしらえを終え、スウィンドラーのバイクに乗り込むふたり。そこへジェミニからの電話が輪花の携帯へとかかる
・電話をしてきたジェミニはちょうどふたりがいる高速道路へと殺人ドライバーとおぼしき運転手が向かったということを報告。民間人であろうジェミニが気づいたなら当然警察も気づいているだろうしこれで解決かと輪花は楽観視するも、しかし殺人ドライバーは車を変えているため警察がすぐに駆けつける可能性は低い――すなわちふたりの出番だとジェミニは応じる

③冒険への拒絶(サブ1)
・相手は人をひき殺した凶悪犯。懲らしめるためとはいえ接触を図れば自分たちも危ういので様子見しようと、臆病風に吹かれる輪花。そんな輪花を意にも介さず、スウィンドラーはエンジンを吹かし、軽快に高速道路へとバイクを繰り出す

④メンターとの出会い(サブ1)
・サイドカーから輪花に周囲を確認させながらバイクを走らせるスウィンドラー。そこへ先述した特徴通りの車が猛スピードで突っ込み、そのままふたりが乗るバイクを横切る。これを好機と言わんばかりにスウィンドラーもスピードを上げ、暴走車の後ろへとつく
・追走するバイクに気づいたのか、殺人ドライバーは昼間にもかかわらずウインカーを左右交互にちかちかさせたり、窓から手を出しては「地獄に落ちろ」と言った具合に親指を下に向けたりなどの挑発行為に出る。しかしスウィンドラーはまるで動じることもなく、追走を継続する

⑤第一関門(サブ1)
・そんなスウィンドラーに怒髪天を衝きでもしたのか、殺人ドライバーは今度は窓から缶コーヒーの空き缶を投げ、スウィンドラーへと攻撃を始める
・一瞬の出来事だったがスウィンドラーはハンドルを切って事故を回避。しかしサイドカーに乗る輪花をかばおうとしたのか、左にハンドルを切ったがために空き缶が右手に当たってしまい、苦痛の声を上げる
・事態に気づきスウィンドラーを心配する輪花にたいしたことないと強がりを見せるスウィンドラーだったが、さすがに右手が痛むらしく徐々にスピードを落とし、直進する暴走車を追うことなく別方面へと続く道路へと左折した
・やがて高速道路から一般道へと入り、目に付いた変哲もない道路の脇へとバイクが停車する。そしてヘルメットを外して開口一番、スウィンドラーは「困ったな」と漏らす。怪我ですんだだけ運がいいほうだろうと輪花は答え、さらにスウィンドラーの運転テクニックなら次こそは捕まえられるはずだとフォローも入れる
・しかしスウィンドラーは首を横に振り、それではだめだと返す。そして一言「そもそも運転しながらじゃなにもできない」と断言する
・スウィンドラーいわく、高速道路で闇雲に速度を落とすとまわりの車と事故あるいはまわりの車が事故を起こしかねない――片手で運転してもう一方の手を自由に使えるようにしても不意打ちに対応しきれずやはり事故の危険が増す――あげくの果てには衆人環視の道路上で懲悪行為をすること自体ハイリスクなのにその手段すら限定的で実行困難である、とのこと
・それを聞かされた輪花は、じゃあそもそもなんで殺人ドライバーに接触しようとしたのか、と尋ねる。対するスウィンドラーは暴走中くらいしか出会えるチャンスはないだろうと思っただけで、ぶっちゃけノープランだった(てへ)と悪びれもせずに打ち明ける。そしてハンカチで右手の治療をしていた輪花にハンカチをきつく締められる

①日常の世界(サブ2)
・病院(非合法)で手当を受けに行くスウィンドラーと別れ、バスで事務所近くまで帰ってきた輪花
・そこにジェミニが現れ、ただのお荷物にまで世話を焼くとは呆れたやつだ、とスウィンドラーを非難する

②冒険への誘い(サブ2)
・申しわけなさからついスウィンドラーを擁護しようとする輪花。対してジェミニはあんなエゴイストにほだされるな、ときつく反論する
・エゴイスト――確かに身勝手なところはあるが、しかしそこまで言わずともいいのではないか、と輪花も熱く言い返す

③冒険への拒絶(サブ2)
・対してジェミニは、どうせ輪花もやむを得ない事情からスウィンドラーの助手などやっているのだろうそうに違いないと前置きし、であれば自分のように利用し返すくらいの気持ちと距離感で付き合わなきゃだめだ、と断じる。あいつは悪をもって悪を懲らす仕事人であると同時に、目的のためならどんな人間だって陥れるペテン師でもあるのだから、と――

④メンターとの出会い(サブ2)
・その言葉を耳にした輪花の脳裏に『人にはいくつもの側面がある』というスウィンドラーの言葉がふと去来する。およそ小学生にしか見えないジェミニにもまた、仕事人から仕事を引き受けざるを得ない、やむにやまれぬ理由があるのかもしれない、と――

⑤第一関門(サブ2)
・そして輪花は歩み寄り、どうしてそうまでしてスウィンドラーの仕事に携わろうとするのか、スウィンドラーと同じように捕まらずにいる悪い人間が許せないからか、と問いかける
・対するジェミニは、そういう輪花はどうなんだとはぐらかそうとするも、「住む場所と引き替え(生きるため)に仕方なく」とあっけらかんに答えた輪花に思わず肩すかしを食ってしまう
・同じ助手同士もっと話がしたい(なぜスウィンドラーの助手をやっているのか聞きたい)ということで事務所まで行こう(あるいはもう少し話を聞かせてほしい)と輪花は提案。しかしジェミニはなれ合うつもりはないとしてそれを拒否。そして去り際に「スウィンドラーと同じ気持ちではないだろうが、しかしあんなやつを許すつもりもない」と切り出し、明日の午後には事務所へ顔を出すと言い残してその場を去る

①日常の世界(サブ3)
・その日の晩、非合法な地下射撃訓練場にて、ひとり黙々と狙撃銃を鳴らすジェミニにスウィンドラーが気安く声をかける。その気になればこんなのだって使える、と淡々と語るジェミニに対して、スウィンドラーは今回の仕事じゃ使わないよ、とこれまた淡々と返す。さらにジェミニは、使うかどうかは自分の判断で決める、と冷たく言い返す

②冒険への誘い(サブ3)
・するとスウィンドラーは、ああいった許せない人間なんて腐るほどいる、ジェミニの目的には直接影響を与えないのだから過敏になる必要はないのではないか、とさながらなだめるように口にする

③冒険への拒絶(サブ3)
・対するジェミニは、だからこそだ、と前置きし、兄姉(きょうだい)のことを常に考えているからこそああいった「罪のない人命を奪った同類(にんげん)」を許すわけにはいかないんだ、と断言する

④メンターとの出会い(サブ3)
・そんなジェミニにスウィンドラーは(どうにもならなかったことをまだ気にしているのか、と)肩をすくめる。ここで「兄姉――もとい罪のない命を奪ったという罪悪感から、道理もなしに無辜の命を奪った『自分と同じような人間』は許せない」のだと(事実か否かにかかわりなく、あくまで個人的な認識として)ジェミニが考えている(スウィンドラーがそう看破している)、ということを描写する

⑤第一関門(サブ3)
・そしてスウィンドラーはターゲットを再捕捉し次第、決着を付ける、と宣言。そして「酔い止めは必須装備だ。忘れるなよ?」と言い残して射撃場をあとにする
・だが、スウィンドラーの背中には変わらず狙撃銃の銃声が響いていた(ジェミニがスウィンドラーの意を汲むことはなかった)

①日常の世界(サブ4)
・後日。事務所に集まった仕事人とその助手ふたりの作戦会議にて、助手ふたりはホワイトボードに書かれた作戦内容に目を丸くする

②冒険への誘い(サブ4)
・そこに書かれていたのは道路上で殺人ドライバーと決着を付ける突飛なあれこれが羅列された『高速道路カーチェイス大作戦』だった

③冒険への拒絶(サブ4)
・ジェミニはあまりに単純明快な作戦に「これが丸一日かけて練り上げた作戦か」と口をとがらせる。対するスウィンドラーは、目には目を、速さには速さだ、として、道路上で懲悪するには暴走車と同じように車を走らせながら追い詰めるしかない、と力説する(どうやって暴走車を止めるのか、という問題に対して、スウィンドラーは「自主的に止まってもらう」と軽々に回答する)
・目には目を、とはいうが挑発行為すらまねるのか、とジェミニは半ば呆れる。ただ輪花は危険だという認識はそのままに、まるでアメリカ映画の警察みたい(すなわち、なんだかんだ言って合理的)だ、と興奮と理解を示す
・そんな輪花にスウィンドラーは、この作戦に輪花の出番はない≒輪花は参加させない、と肩をたたく

④メンターとの出会い(サブ4)
・スウィンドラーからの戦力外通告に輪花はなぜを問う。対してスウィンドラーはとどのつまり、この作戦において輪花の盗む能力は役に立たないからだ、と断言。次いで留守番を任せることになる、と告げる

⑤第一関門(サブ4)
・端的かつ合理的な理由に返す言葉もなく、輪花はスウィンドラーの指示を飲み込む。ただ内心では、役に立たないという評価こそ気が滅入るが、一方では危険な目に遭わずにすむため嬉しかったりもする
・スウィンドラーは作戦において使う車は事務所ではなく別の場所に用意したとして、ジェミニに付いてくるよう指示。ジェミニは契約において上下関係は決められていないとして不平を漏らしつつも同行する

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する