先日「コープスホワイト」のハロウィン番外編を投稿しました。
https://kakuyomu.jp/works/16818093087410071110元々のテーマと合うイベントなので前々から書こうと思って予告していましたが遂に出せましたね。
好評頂けたようで皆様ありがとうございます。
なので調子に乗ってハロウィン当日の今日、おまけを書いてみました。
こちらはシリアスよりラブコメ風味です。
もしよければ読んでみてください。
本編完結後の時系列なので未読の方ネタバレを回避したい方はお気をつけください。
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冥界と繋がる日には魔除けの仮面を着けなければならない。
悪霊は身分に頓着しない以上、魔術大臣であろうと対策は必須。
アリルは黒猫の仮面を手に取った。
黒猫。
不吉の象徴、魔女の使い魔。人々から忌み嫌われる獣。この仮面だって子供が泣きそうなくらいに不気味な意匠だ。
でも、可愛らしいと思う。
かつて自分もそんな立場だったからか、生屍と共に過ごしたからか、共感めいた思いを抱いている。
これを用意したのは宮廷魔術師筆頭、デュレイン。
悪魔や怪物の仮面、衣服に魔除けの術をかけ、丁寧に確認している最中。
死や魔と寄り添ってきた彼なら、きっと気持ちは同じはず。
そう思うと、ふと悪戯心が湧いた。
アリルは仮面をつけて、声を出す。
「にゃあ」
「……!?」
猫の鳴き真似をすれば、彼はあからさまに動揺した。魔術が途中で解けて魔力が弾ける。こちらを見るのは口を半開きにしたままで固まった顔。
アリルは仮面をずらし、素顔を半分程見せながらとぼけた風に問いかける。
「どうかしたのですかにゃあ?」
「……っ! ……!? ……っ!?」
固まり、慌て、最後には顔を手で覆って後ろを向いた。
彼には悪いが、ついクスクスと笑ってしまう。
ある程度落ち着いてから、デュレインは硬い面持ちで言う。
「……今の立場で、そんな発言は、評判を落としかねないと、思うのだが……」
「そうですね。邪魔をして申し訳ありませんでした。二度と言わないようにしましょう」
「あ……」
答えた途端、悲しげに眉が下がる。後悔、未練、名残惜しそうな表情。
全てを分かった上でアリルは更に問う。
「なにか?」
顔を赤らめて、目を泳がせて、それでも彼は意を決したようだ。改めて、正面から向き合う。
「いや……うむ。可愛らしい、と思ったのだ。他の誰にも知られたくないくらいに」
目を逸らさず、しっかり合わせて、言い切った。
逃げない強さがあった。
アリルの内には少しの驚きと、大きな嬉しさ。温かさが広がる。
「ありがとうございます。貴方も凛々しく、似合っていますよ」
気持ちを返せるように心からの賛辞を送る。
そして、この成長を彼の家族にも見てもらいたい。
この夜ならきっと。アリルは真摯に祈るのだった。